関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

南アルプスとニホンジカ問題 その1

2019年11月18日
南アルプス

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんはニホンジカに対してどのような印象を持っていますか?

¨かわいい¨という印象や奈良のシカやバンビを連想される方も多いかと思います。都心に住んでいると野生のニホンジカにはなかなか出会うことができないので、¨珍しい¨と思う方もいらっしゃるでしょう。

そんなニホンジカですが、現在、国内で最も被害が大きい動物とされています。そもそもニホンジカってどんな動物なのか、どのような被害が出ているのか、実際に南アルプス国立公園行われている対策って具体的にどんなもの?など、数回に分けて詳しくお伝えしていきたいと思います。

1弾!ニホンジカってどんな動物?

■食べ物


ニホンジカは草食動物です。果物、穀物、野菜、落ち葉何でも食べます。高山植物や樹皮も食べてしまいます。個体差もありますが、メスは1日で5kg以上も食べるそうです。写真を撮影した時はコケのようなものを食べていました。

■毛

夏は1枚目の写真のような茶色に白い斑点模様。斑点模様は子どもだけでなく大人のニホンジカにも見られ、木漏れ日を模しているそうです。冬は無斑で濃い茶色になります。

■出産

1才半で大人になり、2才から出産します。2才からは毎年出産ができるようになります。

■季節移動する

南アルプス地域に生息するニホンジカは夏に高山帯に登り、冬は寒さや積雪を避けるため、標高が低いところに移動します。冬になると頻繁に目撃されるのは季節移動で下りてきているせいです。近年は暖冬で積雪量が少ないこともあり、4月下旬くらいには2,400m地点まで上がっている個体もいます。

■群れで行動する


ニホンジカはカモシカと異なり、単体で動くことはほぼなく、写真のように群れで行動します。気に入った場所にはしばらくの間滞在し、その場所の植物を食べ尽くしてしまいます。

■角

  

ニホンジカの角はオスのみ生えます。春から夏にかけて生えかわります。左の写真は角が落ちて角がない状態です。右の写真は角が生えていますが、黒くて丸く、いつも見る角と違いますよね。これは袋角といって、しっかりとした角が生えるまで皮膚で覆っている状態です。時間が経つにつれて皮膚が破け、白い角が見られます。

■学習能力が高い

例えば、ニホンジカを捕獲するために森の中にわなを設置したとします。10頭の内、1頭が捕獲できたとすると他の9頭は¨自分の仲間が捕まった、ここは危ない場所¨と、わなに対する警戒心を持つようになります。銃を用いた捕獲でも同様です。そういったシカをスマートディア(スレジカ)と呼びます。スレジカはわなが設置されていた周辺の道を通らなくなります。狩猟者は再び、ニホンジカが通っているシカ道を探し出さなければなりません。

ニホンジカの増加は南アルプス国立公園だけでなく、里山でも高山でも全国的に大きな被害をもたらしています。次回は具体的にどのような被害があるのかをお伝えしたいと思います。