アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
夜叉神峠のニホンジカ被害
2021年09月02日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
先日、夜叉神峠に設置していたセンサーカメラの撤去を行いました。昨年12月に夜叉神峠登山口から西口登山口までの間に5基のカメラを設置し、どのくらいのニホンジカが生息しているのかを調査していました。
登山道から外れた場所に設置しているため、倒木で歩きづらい場所もありましたが、無事に5基のセンサーカメラの撤去ができました。データは生態系保全等専門員である金丸さんが分析中です。3月にメンテナンスをしてから撤去まで電池が切れていない機器もあったようで、夏季のニホンジカの動きを知ることができそうで、個人的にわくわくしています!
夜叉神峠登山口は登山口へのアクセスが楽にでき、1年を通して多くの方が登ります。一方、西口登山口は冬季閉鎖・マイカー規制区間に登山口があるせいか、このルートで登る人はほとんどいません。
△夜叉神峠登山口と西口登山口の位置関係
私自身、この業務を実施しなければ西口登山口から夜叉神峠に登ることはなかったと思います。夜叉神峠登山口からでも食害やシカを頻繁に見かけ、たびたび悲しい思いに浸っていましたが、4回ほど西口登山口の登山道を歩いてみて、食害や痕跡は思っていたよりひどいものでした。
見比べると一目瞭然。夜叉神峠登山口からの登山道は背丈が低いものの、ササが広がっているのに対して、西口登山口の登山道は画像を大きくしてみると、ちょこちょこと植物が確認できますが、大半は地面がむき出しになっています。むき出しになった地面では、雨が降ったときに地中に水が染み込みにくくなります。下層植生や落葉による地表面の覆いが少ないほど、地表流は増加します。この問題は夜叉神峠だけでなく、里山でも多く見られます。ほかにも樹皮剥ぎも多く見られ、「これはひどい」と強く感じました。
断言はできませんが、西口登山口からの登山道が使われていないこともニホンジカの影響が大きい要因の1つだと考えられます。ただ、登山道がかなり荒れているため、通行を呼びかけがたいです。
左の写真は沢を通過する前後の登山道です。木製の階段があったようですが、劣化と土砂で道が落ちています。右は西口登山道を登り始めてすぐの倒木の様子です。倒木があるのは写真で確認できますが、足元も悪いです。南アルプスの中にはニホンジカによる被害が見られるものの、アクセスが悪いこと、地面の状況が思わしくないなどの理由で対策が実施できない場所が多々あります。このような場所をどのようにしていくか、難しい課題です。