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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

南アルプスのへそ

2019年09月26日
南アルプス

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

南アルプス国立公園は、東西約15キロメートル、南北約50キロメートルに及ぶ、南北に長い国立公園です。さて、ここで問題です。南アルプス国立公園の真ん中ってどのあたりだと思いますか?

正解は・・・

・・・塩見岳です。塩見岳は長野県と静岡県にまたがる標高3,052mの山です。南アルプスでは大きくなだらかな山が多いですが、塩見岳は突出した山頂の岩峰です。山頂は西峰と東峰の2つに分かれています。西峰の標高は3,047m、東峰は3,052mです。塩見岳は南アルプスの真ん中にある山とされ、「南アルプスのへそ」とも呼ばれています。

主な登山口は長野県大鹿村の鳥倉登山口です。鳥倉登山口から「日本で1番高い峠」と言われている三伏峠を経由し、塩見小屋へ向かいます。晴れていると、三伏峠までの登山道で仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳が、塩見小屋までの登山道で塩見岳を見ることができます。

塩見小屋から先は岩稜帯になり、落石の危険があるため、ヘルメットは必須です。両手を使うことが多くなるので、ストックの扱いには気をつけてください。

△天狗岩付近からの塩見岳

自分が踏んだ石が下の登山道を歩いている登山者に当たってしまう可能性もあります。場所によってはザレているところもありますので、歩行の際は要注意です!!富士山のように登りと下りが分かれているわけではないので、譲り合って登るようにしてください。

岩場を登り切ると西峰、東峰が見えてきます。この場所からは南アルプス北部、南部の大パノラマを見ることができます。

  

左は北部方面です。仙丈ヶ岳や間ノ岳、農鳥岳がよく見えますね。目の前に見える稜線は北岳や仙丈ヶ岳方面へ向かう「仙塩尾根」です。登山者が少ないルートなので、静かな山歩きを楽しむことができます。右は南部方面です。目の前に見える大きな山は悪沢岳(東岳)、中岳、前岳の三山から成る荒川岳です。後ろに見える山は聖岳、兎岳です。南アルプスの名峰を一望できるのは南アルプスの中心にあるこの塩見岳だけです!さすが、南アルプスのへそですね!岩場やザレ場を頑張った先にこんなにきれいな景色が出迎えてくれると疲れも吹き飛びます!

塩見岳までの登山道にある三伏山では塩見岳を望むことができ、三伏峠小屋から15分ほどの場所にあるので、手軽に朝日や夕焼け、星空もこの場所で楽しむことができます!これからは朝晩の冷え込みが激しくなりますので、暖かい格好をして綺麗な景色を楽しんでください。

△夕日に染まる塩見岳

塩見岳の左側にある小さな突起は天狗岩といい、この付近ではチャートや緑色岩を見ることができます。緑色岩とは、付加体中に存在し、もともと海洋底や海山の一部を構成していた玄武岩質溶岩であり、変質・変成作用により緑泥石、緑蓮石などの緑色鉱物が晶出して、濃緑色を呈するようになった岩石を指します。南アルプスではこの塩見岳天狗岩のほかに北岳や聖岳付近で見ることができるので探してみてください。ガスで景色が楽しめないときでも、南アルプス特有の地質を楽しむことができます。

この時期は鳥倉林道までのバスの運行が終了しているのでマイカーかタクシーのみになります。また、三伏峠小屋と塩見小屋で営業日も異なりますので、各小屋に事前に確認するようにしてください。3,000mの高峰では、9月中旬頃から紅葉が始まります。暖かい服装に衣替えをして、秋の南アルプスの計画を立ててみてはいかがでしょうか?