アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
南アルプスのライチョウを守るために
2018年08月14日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
みなさんはライチョウに出会ったことはありますか?ずんぐり丸い体に愛くるしいぱっちりおめめ。現在、日本では頸城(くびき)山塊、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプスに分布しています。最近では、絶滅されたといわれていた中央アルプスでも個体が確認されています。餌は主に昆虫や木の実、ハイマツの実などを食べます。ライチョウの生息地の世界的南限はこの南アルプスのイザルガ岳付近といわれています。
△ライチョウ・メス
近年、南アルプス北部の白峰三山周辺で減少傾向がみられています。そのため、環境省では平成24年から「ライチョウ保護増殖事業」を策定し、平成27年度より北岳周辺で生まれたばかりのヒナと母鳥を一時期間ケージ内で保護し、悪天候や天敵から守り、多くのヒナを育つようにケージ保護事業を実施しています。
△ケージが開いた途端、一目散に餌場に駆け出すヒナと母親
ケージ保護されているライチョウ親子は1日2回、ケージの外に出され自力で餌を食べます。ケージが開いた瞬間、ヒナはカメラのピントが合わせられないくらいの速さで餌がある場所へ駆け出します!
△ライチョウ親子を見守り隊
親子が外にいる間は人間がボディガードします。天敵であるチョウゲンボウやイヌワシに狙われないように、ヒナが迷子にならないように目を光らせます。
ライチョウの1980年代の生息数は3,000羽と推定されていましたが、2000年代には約2,000羽弱に減少したと推定されています。減少の要因として考えられることは、
1.気候変動による環境・植生の変化
2.登山者の増加
3.山岳環境の汚染に起因する感染症の原因菌などの侵入
4.従来生息していなかったニホンザルやニホンジカなどの進入のより、高山植物が採取されることによる生息環境の劣化
5.捕食者となり得る種(キツネ、カラス等)が生息地へ分布拡大による影響が挙げられています。
△餌をついばむライチョウ親子
ライチョウが将来にわたって生きられるようにするために、私たちに何ができるでしょうか。ライチョウの捕食者となるキツネやテンは登山者が放置する生ゴミ等につられて、本来の生息地ではない高山帯にゴミなどと一緒に進出する可能性があります。高山帯の貴重な生態系を保全するためにも、登山においては生ゴミを放置しない・ラーメンの汁を捨てないなどを守っていただきますようお願いします。また、ライチョウは寒いところに生きる鳥です。地球温暖化が進めば生息できなくなってしまいます。マイバッグ持参や徒歩・自転車移動するなど、できることから行動してみませんか??