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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

シカ!シカ!!シカ!!!

2020年02月17日
南アルプス

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

先日の夜叉神峠巡視のときの出来事です。登山道入ってすぐの場所から積雪があり、「滑るかな~」と思いながら、足元に注意しながら登っていたそのときです。

「ピィィーー!!ピィ!」

上のほうで鳴き声がしました。よーく目を凝らしてみると・・・

  

・・・ニホンジカです。鳴き声が聞こえた方向には2頭のオスジカがいました。1頭は1本角なので1才、もう1頭は4つに分かれているので4才以上です。先輩後輩コンビで歩いていました。

周囲を見渡してみると・・・

子鹿がこちらを見ていました。子鹿の先にはお母さんと見られるメスとお姉さんらしき個体も見つけました。夜叉神峠登山口は標高約1,400m。登山道を入って5分くらいの場所で5頭のニホンジカに出会いました。

また5分ほど歩いた先の登山道で、もさもさ動く塊が。しずか~に歩いて近寄ってみると。

これまたニホンジカ。親子です。お母さんと子鹿と目が合い、「わっ!」と大きな声を出しましたが逃げることなく、『なんかあの人騒いでいるよ』くらいの顔をしてこちらを見ていました。人間を恐れていない証拠です。

この親子のシカを見ているとまた上の方から鳴き声が。

2頭のニホンジカが木の間からひょっこり。2頭ともメスです。ニホンジカは生まれた次の年から妊娠できる体になります。大きさからして今年度生まれたようには見えなかったので、もしかしたらお母さんになる予定の個体かもしれません。この2個体は大声を出したら少し逃げていたので、多少、人間への警戒心はあるようですが、どこかへ去ることなく木の間からずっとこちらのようすを伺っていました。

平日だったということもあり、登山者は少ない日というのが分かっているのでしょうか。こんなに多くの個体を夜叉神峠で見たのは初めてです。

登山道を歩き続けると人間の足跡以上にニホンジカの足跡が目立ちました。


矢印の方向に足跡がついています。今回の巡視では登山道の脇にこのような足跡がたくさん見られました。下山時には人間の足跡の上にニホンジカの足跡がついていて、人間との生活の境界線がまるでない、なんだか、気味が悪い気持ちになりました。

多数の足跡だけでなく、樹皮剥ぎや冬芽の食痕も見受けられました。

  

樹皮を剥がされた樹木はやがて朽ちます。樹木が朽ちることで根に元気がなくなって保水力が保てなくなり、大規模な土壌流出の恐れがあります。冬芽はニホンジカがついばむことのできる高さのものが全部食べられていました。冬を越えるために付けた芽が春先、開くことなく生命を終えてしまうのは非常に悲しいことです。

南アルプス山域での防鹿柵や捕獲の対策は環境省だけでなく、各県、各市町村で行っていますが、なかなか被害は減っていません。絶対的にニホンジカが悪いというわけではなく、彼らも生きるために必死です。ただ、自然界へのダメージはかなり大きいです。生態系のバランスを維持し、共に暮らしていくために、今後もニホンジカ対策に取り組んでいこうと思います。