アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
鳳凰三山 地蔵ヶ岳の巡視に行ってきました。その2
2020年08月13日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
前回は確認されたニホンジカの被害についてお伝えしました。今回はニホンジカの被害に負けずに咲いていた植物を紹介したいと思います。
◆ オサバグサ
葉がシダのような形になっており、機織りの「オサ」に似ていることから「オサバグサ」と名付けられたようです。下向きではありますが、純白な可愛らしい花を付けます。あちこちで見られる花ですが、日本の固有種でとても貴重です。
◆ クルマユリ
クルマユリは鮮やかなオレンジ色が特徴的です。鳳凰小屋の周辺で咲いていました。わたしたちが巡視に行ったその日に開花したようで、わたしたちのことを出迎えてくれたような気持ちで嬉しくなりました。
◆ キバナノアツモリソウ
よく耳にする「アツモリソウ」はピンク色でぼってりとしていますが、キバナノアツモリソウはアツモリソウよりスマートでキリンような色合いになっています。キバナノアツモリソウは自然環境の変化や盗掘によって、年々数が減っており、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
◆ ツマトリソウ
花弁の縁に見られる紅色の縁取りを和服の「褄とり」に見たて名付けられました。ほんのり色づいている紅色の縁がなんとも可愛らしいですよね。小雨により、水がしたたっていてより綺麗さが増していました。こうして、雨降りの中でも足元の植物が登山を楽しませてくれますね。
綺麗な植物のほかにもこんな出会いが。
オトシブミが作った揺籃(ようらん)と呼ばれるものです。オトシブミとは木の葉を巻いてゆりかごをつくる性質をもったゾウムシの総称です。卵から孵った幼虫は、この揺籃を食べ、成虫になるまでこの中で暮らします。葉の巻物が「文(ふみ)」に似ていることから、揺籃を作る昆虫をオトシブミと呼ぶようになったそうです。登山道のあちこちに落ちていていました。孵化する前に踏まれてしまわれないよう、無事に孵化してもらいたいです。
長い梅雨が明け、ようやく夏らしくなってきましたね。南アルプス山域で営業している山小屋はかなり限られていますが、利用される際はコロナウイルス対策を十分に行うようにしてください。