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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

7月仙丈ヶ岳での防鹿柵の業務全般!

2023年07月27日
南アルプス 海藤愛結
みなさん、こんにちは。
 
南アルプス自然保護官事務所の海藤です。
7月もあっというまに終盤で8月に入りましたね。
 
環境省では、ニホンジカによる食害から植生を保護するために北岳、仙丈ヶ岳、荒川岳に冬の前には撤去する季節型の防鹿柵(ぼうろくさく)を設置しています。
 
7月は、この防鹿柵の取り組みで何度も仙丈ヶ岳に入りました。その様子をご紹介いたします。
 
まず7/6~7/7では、南アルプス食害対策協議会の方々と防鹿柵の立ち上げに行きました。募集により集まった一般の方も参加しており、総員30名ほどでした。
設置する防鹿柵は何カ所もあり、南アルプス食害対策協議会と環境省、それぞれの事業で設置しています。
 
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▲7:15北沢峠から登り始め
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▲木漏れ日に照らされる「自然を大切に」
6月下旬に行われた予備調査ですでに防鹿柵は立ち上げており、今回は防鹿柵のポールと網をタイラップで固定する作業等、仕上げの作業を行いました。
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▲作業の様子
網とポールをタイラップで結ぶのは、登山者の方々やニホンジカ等が網に絡まらないようにする作業です。
 
柵内ではミヤマクロユリを多数見ることができました。柵外では、ニホンジカに食べられてしまうためか、ほとんどミヤマクロユリの花を見かけることがありません。
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▲柵内のミヤマクロユリ
このような高山植物たちが防鹿柵の外でもたくさん生育して、花を見ることができるようになるといいですね。

山の天気は難しい!

次に7/12~7/13では、環境省事業で新しい防鹿柵を設置するために仙丈ヶ岳へ入山しました。
しかし、悪天候のためヘリコプターが飛ばず、防鹿柵の資材を受け取ることができませんでした。
前日までは、問題無い天気予報だったのですが。山の天候は変化しやすく、難しいですね。
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▲霧での視界不良
この視界では、ヘリコプターもとても飛べません。
しかし、こんな霧の日はライチョウには絶好の採食日和のようです。
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▲霧の中のライチョウ親子
霧のある日は、天敵の猛禽類等が活動しにくいためライチョウは活発になると言われています。
上の写真のとおり、登山道から数メートルの距離ですがライチョウがどこにいるのか、ぱっと見分かりませんね。ちなみに、ヒナも写っています。探してみてください。

ニホンジカとの競争!

さて、防鹿柵の設置はシカとの競争です。
というのも、雪解けから高山植物が芽吹き始めると、シカたちはそれを求めて標高の低い場所から高山帯へやってきて食べ始めてしまいます。
そのため、ヘリコプターが飛んで資材が届いたらすぐに設置へ向かいます。
 
 
資材が届き、7/21~7/23で防鹿柵の新規設置へ再チャレンジです。
 
防鹿柵新規設置の大体の流れは、①地面に杭を打ち込み ②杭にポールを差し込む ③網の上下にロープを通す ④網とロープをポールへ固定 ⑤ロープと地面をペグで固定 ⑥網とポールをタイラップで固定
 
といった形です。作業の状況で順番を前後させたり、調整したりしながら設置していきます。
 
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▲網張の様子
設置完了です。遠くから見ると目立たないようになっています。
登山道を挟んで左右2箇所あります。
無事に新規防鹿柵を設置することができました。
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▲設置完了
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▲柵内の植生

鹿を食べる

防鹿柵を設置した後は、馬ノ背ヒュッテで美味しい鹿肉カレーをいただきました。
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▲馬の背ヒュッテの女将が描いたランチョンマット
ランチョンマットには、かわいらしい絵とともにジビエカレーへの思いや私たちにできること、また、防鹿柵や環境省で行っている高山帯でのシカ捕獲についても触れられています。
南アルプス国立公園でのニホンジカ対策について、詳しくは南アルプス国立公園HPの各種資料からご覧いただけます。
馬の背ヒュッテ周辺は、かつてはお花畑だったそうです。
私は、防鹿柵が設置されている景色しか見たことがありません。
私のこどもの代になったら今見られているミヤマキンポウゲ・チングルマ・ヨツバシオガマなどたくさんの植生までもがなくなった山が普通の景色になってしまうかもしれません。
それは、とても悲しいことだと思います。
 
 
そうならないためにも、環境省も様々な関係機関も防鹿柵やニホンジカの捕獲に取り組んでいます。
シカもただ生きているだけです。では、私たちにできることは何か。
この問題を知って、山へ行き、山を見て、美味しい鹿肉カレーを食べてみてください!
 
実は、鹿のお肉は他の肉に比べて低脂肪低カロリーなのに高タンパクで登山者にうってつけです。
 
 
以上、7月の仙丈ヶ岳での業務でした。
次回は、「花の仙丈ヶ岳」と呼ばれるとおりたくさんの花々を見ることができたので、ご紹介しようと思います。