アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
見どころたくさんの仙丈ヶ岳へ
2018年08月21日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月下旬に、仙丈ヶ岳へ巡視に行ってきました。仙丈ヶ岳は標高3,033m、穏やかな山容から「南アルプスの女王」とも呼ばれています。危険な箇所が少なく、南アルプスの山々の中では、比較的登りやすい山です。日本百名山、山梨百名山に選定されています。
この日は事務所がある芦安は33度と真夏日でしたが、北沢峠は22度。登山しやすい気温でのスタートです。ルートは北沢峠から大滝の頭を馬の背ヒュッテ方面へ。そこから山頂に向かい、下山も同じルートを使いました。このルートは多くの方に使われているため、ルートが不明瞭なところや未整備の登山道はありません。
馬の背ヒュッテから山頂へ向かう道中で、ふと後ろを振り返ってみると。
△甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)
標高2,967mの甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)が見えました。甲斐駒ヶ岳は山全体が花崗岩で覆われていることから白っぽく見えます。左側の頂点が山頂で、右側の丸み帯びている頂点が摩利支天です。仙丈ヶ岳が「南アルプスの女王」に対し、甲斐駒ヶ岳は荒々しい山容から「南アルプスの貴公子」と密かに呼ばれています。
そして、仙丈ヶ岳山頂方面には「なんだこれ!」と思うような光景が!!
△藪沢カールの底
写真をクリックし、拡大してご覧ください。たくさんごろごろと岩が転がっているのです!!底に溜まっている岩(写真灰色部分)は氷河が削った岩塊や土砂が堆積したモレーン(堆石堤)などが形成されています。
△藪沢カール
南アルプス山域には2万年前頃に作られた氷河・周氷地形が残っています。仙丈ヶ岳で見ることができるこの藪沢カールがその1つです。カールは別名「圏谷(けんこく)」といい、氷河によって山頂付近が削られてできたもので、スプーンで削ったように丸みを帯びたゆるやかな谷地形が特徴的です。藪沢カールは日本有数のカールとして知られています。仙丈ヶ岳には藪沢カールの他に、小仙丈カール、大仙丈カールがあります。南アルプスには仙丈ヶ岳の他に間ノ岳や荒川三山でこのカール地形を見ることができます。
馬の背ヒュッテから50分ほど歩いて山頂に着きました!北岳間ノ岳方面は少しガスがかかっていましたが、スッキリ晴れているとこんな景色を見ることができます。
△仙丈ヶ岳山頂から見る日本高標高TOP3
小さく左側に見えるのは富士山、正面のとんがりが北岳、鞍部の先に見えるのが間ノ岳。そうです、仙丈ヶ岳の山頂からは日本の1位、2位、3位を一望することができちゃいます!!このような構図でTOP3を見ることができる山はなかなか無いと思います。TOP3の他にも甲斐駒ヶ岳はもちろんのこと、鳳凰三山や塩見岳、北アルプスや中央アルプスも見ることができます。
この日は1日を通して雲行きが怪しくなる様子がなかったのですが、なんと、ライチョウに出会えました!!
△ライチョウの母親
写真には写っていませんが、母親がヒナを連れてお散歩していました。ライチョウを見つけた際は、追いかけたり、触ったりすることなく、温かい目で見守るようにしてくださいね♪
山の上ではそろそろ秋を感じられるようになります。朝晩は半袖では肌寒さを感じることも多くなってくると思いますので、防寒着等を準備して行かれるといいと思います。山頂からの景色も良く、氷河地形も存分に楽しむことができる仙丈ヶ岳へ、登ってみてはいかがでしょうか?