アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
檜枝岐村の春
2021年04月16日みなさん、こんにちは。
檜枝岐自然保護官事務所の前川です。
標高が千メートル近い寒冷地の檜枝岐ですが、近頃は路傍の雪もすっかり消え、陽の当たらない建物の陰や、村を取り囲む山のくぼみに僅かに残るのみとなりました。ストーブの火も入れたり入れなかったりで、気温の上昇が膚で感じられる季節です。今回は檜枝岐村の春をご紹介します。
先日、道を歩いていると「福寿草開花中」の黄色のノボリが何本か立っているのに気付きました。道路に面した山側斜面の小道を登っていくと、脇の畦にいくつかの小さな黄色の花やツボミの群落がありました。ほとんどの花はまだツボミで、開花にはもう少しかかりそうでした。その後、1週間ほどして再び福寿草苑(と名付けた場所)を通りかかると、かなりの数の花が開花していました。その開花後の姿がなんともユーモラスな、車輪や風車を思い起こさせるような形でした。私は植物のことを余り良く知らないのですが、ノボリには福寿草のある特徴が書かれていました。さて、この可憐な福寿草の意外な秘密とは何でしょうか?(答えはこのAR日記の最後に書きました。)
福寿草の花(左)とツボミ(右)
福寿草と違って地味な姿ですが、春の植物といえばツクシです。道路を歩いていると、やはり道路際の日当たりの良い場所にはニョキニョキ生えていました。ツクシのことも余り良く知らないので、調べてみると和名はスギナでした。地下茎で繁茂し、栄養茎をスギナ、胞子茎をツクシと呼ぶそうです。シダの仲間なので胞子で増え、日本では食用ばかりではなく、飲用や生薬としても利用されてきたようです。木賊(トクサ)という字を見たことがありますか?檜枝岐村のすぐ近くに温泉で有名な木賊という地区(南会津町)があり、先年の台風被害等により、残念ながら現在、川沿いの露天風呂である岩風呂は入浴できませんが、そのうち復旧したら温泉に行ってみたいと考えています。スギナはトクサ科の植物です。
日当たりの良い地面から顔を出したツクシ
この時期、溶けた雪の下から出てくるのは灰褐色の地面や枯れた植物の葉や茎が多いのですが、その中で一輪、とても目を引く青い花を見つけました。この場所、時期には余り似つかわしくない色、形なので、おそらく以前に誰かが植えたか、どこからか種が飛んできた栽培植物ではないかと思います。ひときわ目立つ存在なので、思わず写真を撮ってしまいました。
ひときわ目を引く青い花
檜枝岐では、4月1日から渓流釣りが解禁になりました。事務所のすぐ裏を流れる檜枝岐川でルアーを投げてみました。するとすぐに当たりがあり、結構大型のイワナがかかりました。檜枝岐川は渓流というには少し川幅が広く、開けている感じなので、餌釣りよりもルアーやフライの方が適しているように思います。川に沿って歩いて行くと、大きな淵がいくつもあり、きっと大物が潜んでいるに違いないと感じます。
檜枝岐川のイワナ
先日、帰宅途中に大物に出会いました。カモシカです。村の人からはカモシカが自宅の庭に来て、なかなか逃げなかったような話は聞きますが、こんな近くで会ったのは初めてです。話に聞いているように、それほど人を怖がる様子もなく、ゆっくり道路を横断して不思議そうな目でしばらくこちらを見ていました。そのおかげでこちらもスマホを取り出して、撮影することができました。さすがはウシの仲間だと大いに納得しました。
こちらを見つめるカモシカ
(福寿草の秘密の答え:全体が有毒な草とのことです。)
次回は尾瀬の春をお伝えしたいと思います。