アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
伊豆半島で出会える秋の昆虫たち -トンボ科編 ②-
2022年01月31日みなさん、こんにちは。ホットケーキとパンケーキの区別が付かない齋田です。
材料や作り方に違いはなく、自宅で食べる家庭的なものがホットケーキ、お店で出てくるオシャレな見た目のものがパンケーキなのだと勝手に認識していますが、本当のところはどうなのか分かりません。
先月には喫茶店のパンケーキをテイクアウトして友人宅で食べたので、まあまあ混乱してしまいました。
さて、先週の1月27日(木)より、下田管理官事務所の管轄する伊豆半島の南部において、まん延防止等重点措置が適用されました。
不要不急の外出を自粛し始めた方々も少なくないかと思いますので、昨年の秋まで連載していた「伊豆半島で出会える昆虫たち」のシリーズを再開しようかと思います。
とはいえ、この真冬に出会うことの出来る生き物たちの種類も限られますので、前回の「伊豆半島で出会える秋の昆虫たち -トンボ科編 ①-」に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけたトンボ科の昆虫をご紹介します。
今回のテーマは、先月に食べた甘い洋菓子のように「似ているけれどどこかが違う」トンボたちです。
早速ですが、下の写真の昆虫が何という種類のトンボなのか、みなさんはご存じでしょうか?
【よく見るトンボ 静岡県下田市 2021.09.06】
画像ではややくすんで見えてしまいますが、秋に最も多く見かける体色が鮮やかな、あのトンボです。
みなさんの中には「赤とんぼ」や「アカトンボ」と答えた方が多いのではないでしょうか?
「赤とんぼ」といえば、童謡のタイトルや俳句の季語として扱われることの多い身近なトンボですね。
この呼び名は、赤褐色の体色が特徴的なアキアカネやナツアカネ、ノシメトンボ等のアカネ属のトンボ全般を指すと言われています(地域や年代によって異なります)。
標準和名をいくつかご存じの方は、「赤とんぼ」ではなく「アキアカネ」と答えたかもしれません。
はたまた、他の種類をご存じの方は「(ひっかけ問題で)ナツアカネ」だとすぐに直感したかもしれませんね。
さて、このトンボの正体は何なのでしょうか?みなさんお馴染みのあのトンボと見比べてみましょう。
【左:よく見るトンボ、右:みなさんお馴染みのアキアカネ】
写真の左側が1枚目の写真と同種(別個体)のトンボ、右側はみなさんお馴染みのアキアカネです。
腹部の色合いは個体の成熟度により様々として、胸部の模様が大きく異なることにお気付きでしょうか?
「よく見るトンボ」の胸部には、アキアカネのように太くはっきりとした黒条がありませんね。
では、「よく見るトンボ」はアキアカネとよく似たナツアカネという種類のトンボなのでしょうか?
残念ながらこれも違います。ナツアカネの胸部にはアキアカネと同様に黒条が目立ちますが、その先端が尖らないことが大きな特徴です。つまり、彼らの胸部には太くはっきりとした黒条が認められるのです。
似ている種類との比較を続けていくと話の終わりが見えなくなるので、この辺りで「よく見るトンボ」の正体をお伝えすると、正解は「ウスバキトンボ」と呼ばれる、アカネ属とは全く異なる種類のトンボです。
このトンボは、渡りを行うことで有名で、世界で最も広く分布すると言われています。
日本においては、春から秋の終わり頃にかけて全国的に見られますが、ほとんどの地域では越冬出来ずに死滅してしまいます。
みなさんお馴染みのアキアカネと誤認されることが多く、「学校のビオトープにアキアカネの大群がやってきた!」等とニュースになることが多いです。
さて、長くなりましたが、この日記を通して何をお伝えしたかったのかと言いますと、「(自分が詳しくない)生き物は後から写真でじっくり見てみないとわからないこともある」ということです。
生き物・自然好きのみなさんの中には、まん延防止等重点措置の適用に伴い、県外への旅行や観光を自粛している方々も少なくないと思います。
フィールドに出ることが出来ない間は、これまでに撮影した生き物たちの写真を見返してみるのも面白いかもしれません。
写真をじっくりと眺めることで、フィールドでは気付かなかった新しい発見があるかもしれませんよ。