アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
帰って来たNo.264
2018年11月30日みなさま、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
▲佐渡市外海府からの日本海
新潟県佐渡市では、不安定な天気が続き、冬がもうそこまで迫ってきています。
以前、No.264という個体番号が付けられ、本州に渡ったメスのトキについてお話ししました。このNo.264が、先日佐渡へ戻って来ました。
11月17日(土)、No.264は、ねぐらとして使っていた富山県黒部市の神社にある池のふちで死んでいるのが確認されました。富山県で鳥インフルエンザの簡易検査が行われ、陰性を確認しました。そして死因を特定する解剖のため、佐渡へ送られてきました。
264を見守って来た私たちには辛い現実でした。
死因は溺死。しかし、どうして溺死に至ったのかまでは分かりませんでした。外傷はなく、健康状態も良好で、胃の中はエサで満たされていました。
▲解剖前の計測
▲解剖開始
No.264が冷たくなって佐渡へ戻ってきたことは本当に残念でしたが、死体が回収できたことは幸運でした。野生下でトキの死体を回収できることはほとんどありません。彼女の解剖から得られた知見は、今後のトキ野生復帰のために大いに活かされることでしょう。
そして、これで本州からトキがいなくなったわけではありません。
11月8日(木)、No.333という個体番号が付けられた2017年いしかわ動物園生まれのメスのトキが、新潟県長岡市にて確認されました。
日本海を渡り、本州へ飛来するトキの数は増えています。
野生のトキを見たことがある方は多くはないでしょう。でも一度、大空を舞うトキを見ていただきたい。佐渡に来て4年経った今でも私は「こんなに美しい鳥が日本にいるのか」と感動を覚えます。
▲水田上空を飛翔するトキ
人が暮らす里地里山の豊かな環境に生きるトキ。日本が誇るこの美しい自然と生き物たちが、この先ずっと見られる未来であってほしい。本州へ渡るトキたちが、多くの人の心に残り、自然へ関心を向けるきっかけになればと思います。
No.333、これからどんな動きを見せてくれるのでしょうか。本州でも元気に過ごしていることを願っています。