アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
野生下で生きる
2020年03月09日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
佐渡自然保護官事務所では、関係機関や地域の方々とともに、一度絶滅したトキをもう一度日本の空に帰す取り組みを行っています。
取り組みの一環として、年に2回、日本各地の飼育施設で誕生し育ったトキを放す「放鳥」を佐渡で行っています。(※)
<ケージから佐渡の空へ飛び立つトキ>
放鳥されたトキとその子孫は、私たちアクティブ・レンジャーを含むモニタリングチームによって日々観察され、こうした観察から得られたトキの生存率や繁殖成績など様々なデータは、より良い野生復帰の取り組みへと活かされています。
このように、佐渡のアクティブ・レンジャーの主な仕事は、野生下トキの観察です。日々観察を続けていると、記憶に残りやすいトキが出てきます。
今回は、身体的特徴があるため記憶に残りやすいトキ2羽をご紹介します。
■No.179
No.179は2012年佐渡トキ保護センター生まれのオスで、私たちの事務所がある新穂(にいぼ)地区で頻繁に確認されています。No.179は、2016年9月から原因不明の左眼の白濁が確認されています。最初は大変心配しましたが、その後の観察で生活に大きな支障がないことが分かり、私たちも一安心です。ちなみにNo.179はメスにモテます。これはあくまでもモニタリングチームの私見ですが、眼の白濁はモテ要素の阻害にはならないようです。
<No.179>
■No.B01
No.B01は2017年佐渡の野生下(新穂地区)で生まれたメスで、現在は主に両津(りょうつ)地区で確認されています。No.B01は2018年6月に、なんと、上くちばしが3分の1も欠損しているのが確認されました。その後も2019年1月には左腹部に血痕があるのが確認され、観察している私たちをヒヤヒヤさせましたが、継続して生存が確認され、腹部の血痕も美しいとき色の羽に生えかわり、しっかりエサもとれているようです。
<左から2枚:上くちばし欠損、一番右:左腹部の血痕>
No.B01は野生下生まれの個体なので、誕生した時からモニタリングチームによって観察されています。
<左から、B01の親鳥ときょうだい、B01ときょうだい2羽、B01の足環装着の様子>
野生下には様々な危険があり、命を落とす個体もいます。私たちが日頃見かけるトキたちも、こうした危険を乗り越えて今があります。トキを観察する際は、そんなことを心に留め、温かい気持ちで見ていただけると嬉しいです。
※トキ保護増殖事業計画に基づき、環境変動や高病原性鳥インフルエンザ等の感染症に備えるため、佐渡トキ保護センターの他に国内5カ所でトキの分散飼育が行われています。(飼育地:佐渡市トキふれあいプラザ、長岡市トキ分散飼育センター、いしかわ動物園、多摩動物公園、出雲市トキ分散飼育センター)