アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
マガンとヒシクイ
2018年11月19日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
▲佐渡の「ふゆみずたんぼ」と大佐渡。遠くにコハクチョウが数羽下りています。(2018/11/13撮影)
例年より暖かい日が続く新潟県佐渡市ですが、今年も冬の到来を告げる渡り鳥たちが佐渡へやって来ました。
佐渡市では2008年のトキ放鳥開始に伴い、トキの餌場確保と生物多様性の米作りを目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を立ち上げ、生きものを育む農法を進めてきました。
トキたちにとって暮らしやすい佐渡の環境は、遠くシベリアから渡来したこの野鳥たちにとっても貴重な越冬地・休息地となっているようです。
▲マガン、ヒシクイ、コハクチョウの3種類が、生きものを育む農法のひとつ「ふゆみずたんぼ」という稲刈り後も水をはった水田で採餌。
今回は、この3種のうちのよく似た2種、「マガン」と「ヒシクイ」の違いについてお話しします。
それではまず、写真をご覧ください。
こちらが「マガン」、
こちらが「ヒシクイ」です。
何が違うのでしょうか。
もっとも分かりやすい違いは「大きさ」です。
マガンのほうが小さく、ヒシクイは大きいです。
▲左がマガン、右がヒシクイ
マガンとヒシクイが一緒にいれば違いは一目瞭然ですが、一緒にいなかった場合、識別のポイントは2つあります。
一つは「くちばし」、もう一つは「おなかの模様」です。
【マガン】
くちばしはピンク色で、額からくちばしの根元にかけて白くなっている部分があります。
おなかには、黒の縞模様が入ります。
【ヒシクイ】
くちばしは黒く、先端近くにオレンジ色の帯が入ります。
おなかに模様はありません。
では、次の写真をご覧ください。
これは、マガンでしょうか。ヒシクイでしょうか。
額からくちばしの根元にかけて白くなっている部分がなく、おなかに黒の縞模様はありません。
でも、くちばしはヒシクイのように黒くなく、ピンク色をしています。
答えは「マガンの幼鳥」。
マガンは、成鳥と幼鳥とで色や模様が異なります。大きさはマガンの成鳥と同じくらいです。
マガンの群れは東北地方から日本海側にかけて冬にシベリアから渡来します。もしマガンの群れを見る機会がありましたら、幼鳥を探してみるのも面白いかもしれません。
ちなみに、ヒシクイの幼鳥のくちばしは、成鳥と同じく黒色にオレンジの帯が入ります。
それでは、最後に復習です。こちらの写真をご覧ください。
マガン、ヒシクイ、どちらでしょう?答えは記事最後に記載しています。
生きものを育む農法により、佐渡の水田には佐渡島固有種サドガエルを含む、多様な生きものが生息しています。人が管理する佐渡の水田は、トキだけでなく、こうした水田に生きる小動物から、遠く外国から渡って来る鳥たちまで、多くの生きものの命を支えています。
▲「ふゆみずたんぼ」で羽繕いするコハクチョウの群れ
~参考~
【マガン】
英名:White-fronted goose
国の天然記念物に指定されており、環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧に指定されています。
【ヒシクイ】
英名:Bean goose
国の天然記念物に指定されています。
環境省のレッドデータブックでは、亜種ヒシクイが絶滅危惧II類に、亜種オオヒシクイが準絶滅危惧に指定されています。
答え:①マガン(成鳥) ②ヒシクイ(亜種オオヒシクイ) ③マガン(幼鳥)