アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
雪が降る日のトキたちは
2021年01月08日皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
この冬は昨年と比べて雪が降る日がとても多く、東京生まれの私にとっては雪景色が見られるこの日常がとても新鮮に感じられます。
そんな中、初めて雪の中での野生下トキのモニタリングを経験しました。
行く先々の道が真っ白で、車を滑らせたり、側溝に落とさないよう慎重に運転しなければならず大変でしたが、いつもと違ったトキの様子を見ることができました。
今回は、雪の日のトキの様子を紹介します!
雪の日でもトキはエサを探しにねぐらから飛び立ちました。私は毎朝布団の中から出るのに時間がかかってしまうので、寒い中飛び立っていくトキを見て感心してしまいました。
▲左の写真のトキは羽にマーカーがついているので去年の秋に放鳥されたトキです
写真ではなかなか伝わりにくいのですが、この写真を撮った日は雪に加えて風もかなり強い日でした。
ねぐらから飛び立ったものの、向かい風が強すぎて全く前へ進めていないトキたちをみて、つい小声で「頑張ってー!」とエールを送ってしまいました。
ねぐら出が終わった後にエサ場でトキを探してみると、凍った水田の横にたたずむトキが1羽・・・
畦に立ち尽くす姿から「凍っている・・・どうしょう・・・」という声が聞こえてくるような気がしました。
▲あれれ・・・いつもと違う・・・
さて、トキたちは一体どこでエサを食べているのでしょうか。
もう少し探してみると・・・トキが2羽いました!さかんに嘴で地面をつついています。
どうやら足下近くに水路があるようです。
多くのエサ場が凍りついてしまうなか、水の流れがある場所は凍っておらず、トキたちの貴重なエサ場になっているのです。
この他にも、トキがよく利用する場所として「江(え)」があります。
「江」は水田や水路に設けられた深みのことで、ここも凍りにくいのでトキにとって大切なエサ場になっています。
▲トキが江を利用している様子です
この「江」は、夏場に水田の中干しをする際に生きものの避難場所にもなります。
佐渡では「生きものを育む農法」として江を設置したり、冬の間も生きものが生息できるように田んぼに水を張っておく「冬期湛水(とうきたんすい)」を行ったりと、生物多様性に配慮した取組みが続けられています。
雪の多い冬はどの生きものにとっても厳しい時期ですが、その中でも懸命に生きているトキの姿を見て、野生生物のたくましさを改めて感じました。
どうか無事にこの冬を乗り切ってほしいと願うばかりです。
▲おまけ 強風にあおられて、頭のうしろの冠羽(かんう)が逆立っています