アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
トキの威嚇行動
2020年12月14日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
先日、冬期湛水している水田にコハクチョウとオオハクチョウがおりていました。トキの餌となる生きものが育まれる冬期湛水。ハクチョウなどの渡り鳥にとっても大切な餌場や休息場所になっているようです。
さて、ハクチョウの近くで餌を探すトキたちを観察していた際、トキ同士の小競り合いを目撃しました。
今回は、トキの威嚇行動について紹介します。
(※日頃観察している私なりの解釈であり、科学的に証明されているものではありません)
トキの小競り合いは、とまり木の取り合い(良い休息場所の確保)や餌場の取り合いをする時に見られます。餌場の取り合いと言っても、水のたまった同じわだちに一緒に頭を突っ込んで食べるような至近距離の時に生じることが多く、水田に広く散って餌を探しているときにはあまり起こりません。
この日、あぜに沿って餌を探しながら進んでいたトキ2羽が、ちょうど鉢合わせになるような状況で小競り合いは起こりました。
鉢合わせになった2羽のトキ。お互い頭を低くして相手の出方を見ているようです。
(左側のトキは今年9月に放鳥されたトキで、背中には、放鳥したトキの行動を調べるために装着されたGPS発信器が付いています)
2羽とも大きく鳴きながら威嚇を始めました。右側にいたトキが翼を下げて初列風切羽を広げています。初列風切羽は特に「とき色」が濃い部分ですが、これを見せつけることで何か意味があるのかもしれません。
数秒鳴き合った後、GPSの付いたトキが鳴きながら相手をつつこうとしています。
同じくGPSの付いたトキが、付近に落ちていた枯草(武器のつもり?)をくわえ、のっし!のっし!と大股で追いかけます。
相手のトキは退散しました。枯草をくわえているGPS付きのトキは追うのをやめ、何となく満足そうに見えます。
小競り合いの起こった水田は広く、追いやられたトキは数メートル離れた場所で再び落ち着いて餌を探し始めました。
小枝や枯草などを渡す行為は、トキの求愛行動としても知られています。
<お互いに枯草をくわえ合うトキのペア>
ですが、必ずしも枯草をくわえて相手に近付くことが求愛行動というわけではないようです。
トキの行動には様々なパターンがあり、私たちが理解しているのは、そのごく一部なのでしょう。
先入観にとらわれることなく、よく観察し、トキへの理解を深めていきたいと思いました。