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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

トキの衣替え

2022年01月28日
佐渡 右田京子

みなさん、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の右田です。

年末から雪の降る日も多く、ここ最近はすっかり銀世界が広がっている佐渡です。

【佐渡の雪原風景】

【佐渡の雪原風景】

一方、真っ白な景色とは対照的に、トキは今、だんだんと暗い色の羽に変化しています。

羽の色が変化?トキの羽は「とき色」じゃないの?!と疑問に思われている方もいるかと思いますが、トキは季節によって羽の色を変化させる鳥なのです。

「羽色変化」と呼んでいるこの現象は、12月から1月上旬頃にかけて着色が始まり、繁殖期を迎えるにあたってだんだんと濃くなっていきます。

【トキの着色段階イメージ】

【トキの着色段階イメージ】

【2022年1月25日現在の着色段階はレベル1aから1bくらい】

【2022年1月25日現在の着色段階はレベル1aから1bくらい】

【2020年春に撮影した着色段階レベル3の状態】

【2020年春に撮影した着色段階レベル3の状態】

羽色変化は、頭部から頸部の黒色の皮膚が剥がれ粉状になったものを水浴びなどの際に頭から背に塗りつけて着色しています。

黒色の皮膚はメラニン由来のもので、イメージとしては、そばかすのように色がある皮膚がフケのように剥がれ落ち、それを塗りつけているということになります。例えが美しくないのでトキに申し訳ないですが、この羽色変化は「化粧色」ともよばれていて、繁殖可能であることをアピールしたり、抱卵時期の保護色にしていると考えられています。

羽色変化のための着色行動については過去のアクティブ・レンジャー日記でも紹介していますので、ぜひご覧下さい。

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]_トキ、色づいています! (env.go.jp)

羽に何らかの物質を塗りつける「化粧色」はサイチョウやペリカンなど、少なくとも150種類で知られていますが、皮膚による着色はトキのみで確認されている珍しい方法です。

羽色変化することを知らない昔の人たちは色の違いを「雄と雌の違い」「幼鳥と成鳥の違い」はたまた「白色型と灰色型は種類が違う、あるいは亜種」と思っていたようです。これだけ姿を変えるのですから、勘違いしてしまうのは無理もないですね。

1957年になって佐藤春雄先生が標本やトキの観察結果から考察し「季節による羽色の変化」であると報告、1961年と1963年には論文として発表されています。また2000年になってようやくJOHN C. WINGFIELD 氏とトキ保護センターの近辻氏を含む日本の研究者が、英国の学術誌IBISに「Biology of a critically endangered species, the Toki」という論文で着色の詳細を世界に発表したのでした。

まだまだトキの知られざる生態や行動がありそうです。日々のモニタリングによって、これまで常識と思っていたことが覆る日がくるかもしれません。引き続き、よーく観察していきたいと思います。

【雪原に残されたトキの足跡】

【雪原に残されたトキの足跡】