アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
トキの個体特性
2018年10月18日佐渡自然保護官事務所の近藤です。
▲今季初確認のコミミズク(2018年10月9日撮影)
新潟県佐渡市では、トキの野生復帰の取組が進められており、佐渡の自然界に生息するトキの数は約370羽になりました。私たち、佐渡のアクティブ・レンジャーは、トキ野生復帰の取組を評価する上で重要な、トキのモニタリング(追跡調査)を行っています。日々トキを観察していると、いつの間にか1羽1羽の特性が頭に入ってきて、トキ観察の面白さにつながっています。
今回は、私たちの記憶に残るトキの一部をご紹介いたします。
■「ジャマイカくん」
個体番号:174(第10回放鳥、いしかわ動物園生まれのオス)
名前の由来:脚についている補助カラーリングの色が、ジャマイカを連想させるため(上から みどり・きいろ・あか)。
記憶に残る理由:足環の色はカラフルでおしゃれだが、メスにモテない控えめ草食系男子で、職員の同情を買っているから。
■「ぴみみ」と「きぴぴ」ペア
個体番号:212(第12回放鳥、佐渡の野生復帰ステーション生まれのオス)と237(第13回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)
名前の由来:脚についている補助カラーリングの頭文字から(212:上からピンク・みどり・みどり、237:上からきいろ・ピンク・ピンク)
記憶に残る理由:繁殖期になると突然姿を消し、山奥でこっそり繁殖している要注意ペアだから。
▲ぴみみ
▲きぴぴ
■「ろくちゃん」
個体番号:06(第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのオス)
名前の由来:個体番号から
記憶に残る理由:2008年の記念すべき第1回放鳥個体で、人のすぐ近くまで来てエサを食べるため、多くのスタッフに愛されたが、繁殖は一度も成功せず、トキのメスにはモテなかったから。2015年10月、残念ながら猛禽類に襲われ死亡が確認されました。
■「にひゃくじゅう」
個体番号:210(第12回放鳥、出雲市トキ分散飼育センター生まれのオス)
名前の由来:個体番号から
記憶に残る理由:放鳥後、ほかのトキが平野の水田やビオトープで確認されている中、トキがいるとは全く予想していなかった山奥のダム湖周りの林道へ下りて採餌する珍しい行動を取るトキだったから。2015年9月、残念ながら骨格と羽のみになって、いつも確認されていたダムから離れた海岸に死体が打ち上げられているところを発見されました。
トキの個体特性を把握できる理由の一つに、トキにはそれぞれお気に入りのエサ場、お気に入りのねぐらがあることがあげられます。この地域に行くと、この番号のトキたちがいるだろう、と大方予想して私たちはモニタリングをしています。実際に私たちがモニタリングで使用しているトキの識別表も、地区別に分けられています。
▲トキ識別表
佐渡のトキは約370羽にまで増え、今までトキが確認されていなかった場所でもトキが見られるようになりました。営巣場所も島内各所に広がり、すべての営巣場所を把握するのは困難です。しかし、日々トキをモニタリグすることで、私たちもトキが好みそうな場所がどのような環境なのかが分かってきました。私たちのモニタリング技術もトキたちによって磨かれていっています。
トキの放鳥が始まって10周年。まだまだトキには未知の部分がたくさんあります。トキから学んだことを活かし、これからもモニタリングを続けていきたいと思います。
▲佐和田海岸からの夕日