アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
トキの巣の下に落ちているもの
2019年05月28日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
新潟県佐渡市では、田植えが行われ、美しい田園風景が広がっています。
この時期、トキたちは子育てに大忙し。多くの巣でヒナの誕生が確認されています。
<巣で親鳥の帰りを待つヒナ2羽>
その一方で、巣作りしていたのにやめてしまったペア、卵を温めていたのにやめてしまったペアなども確認されるようになりました。このようにトキが繁殖を中止した場合、トキがいないのを確認してから、巣の下へ行き、落下物の回収を行います。
巣の下には、繁殖に関わるたくさんのヒントが落ちています。今回は巣の下に落ちている落下物3つをご紹介します。
1.卵の殻
巣の下に行くと、多くの場合、卵の殻が落ちています。卵の殻を用いて、トキが何個卵を産んだのか(産卵数)、卵は有精卵だったのか(有精卵率)、などを調べます。
有精卵を調べるためのルミノール反応検査の様子。検査液に卵殻を入れ、有精卵だと青白く光ります。
(※トキの卵の大きさ:6.7×4.5㎝、69gほど。ニワトリの卵よりも少し大きい。)
2.巣材
巣の直下は、巣材となる枝や枯草が落ちています。場合によっては、強風などで落下した巣そのものが落ちていることもあります。
3.ヒナの死体
できることなら発見したくない悲しい落下物がトキのヒナです。運悪く巣から落ちたのか、捕食者から逃げるうちに落ちたのか、または捕食されて落ちたのか、落下の要因はヒナの状態を確認して検討されます。ヒナの脚や翼の一部、骨しか残っていないこともありますが、体の一部でも残っていれば、落下原因や死因、捕食者の解明に役立ちます。
現在、佐渡で確認されているトキのペアは80を超えますが、例年繁殖を成功させ無事にヒナを巣立たせることができるペアは半分にも及びません。1巣1巣の状況を確認するモニタリングを行う中で、ヒナを巣立たせることがいかに難しいかを思い知らされます。多くの困難を乗り越えて巣立つトキのヒナたち。巣立ち後もたくましく生き抜いていってほしいと願います。
※巣から落ちたトキの卵の殻やヒナを見つけた場合は、佐渡自然保護官事務所にご連絡ください。
電話:0259-22-3372