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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

繁殖期終了・うれしいニュース

2022年08月01日
佐渡 右田京子
皆さん、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の右田です。
佐渡は蒸し暑い日も多くなり、夏真っ盛りとなりました。

公用車のアンテナにとまったノシメトンボ
佐渡自然保護官事務所では、一年で最も忙しいトキの繁殖期モニタリングが今年も無事に終了を迎えたところです。
今期、野生下では延べ91ペアの営巣が確認され、このうち33ペアから73羽のヒナが誕生し、さらにそのうちの23ペアから51羽の巣立ちが確認されました。 
例年に比べると遅めでしたが、2022年7月28日にモニタリング対象の最後のヒナ(C90)が無事に巣立ったことを見届け、繁殖期モニタリング終了です。

【仲良くエサを探して歩き回る今年生まれの幼鳥】

今年の繁殖期を振り返り、うれしいニュースを2つご紹介します。

一つ目は、2008年に実施した第1回放鳥の唯一の生き残りNo.11の繁殖成功です。
No.11は2006年生まれの16歳です。かなり高齢のお父さんですが、今年はなんと3羽のヒナが誕生し、巣立ちました。昨年・一昨年と繁殖がうまくいっていなかったので、喜びもひとしおです。かわいい幼鳥の姿もさることながらNo.11の姿に元気をもらいます。
放鳥以来ずっとモニタリングボランティアとしてNo.11を見守ってくださり、No.11と長い付き合いのボランティアSAさんにコメントを頂きました。

ボランティアSAさんの声:
早朝、親子揃って5羽でねぐら出する姿はなんとも言えない込み上げてくるものがあります。14年の間には数え切れないほど多くのドラマがありました。年齢も年齢だけに厳しい自然界で生きてくれているだけで十分と見守っていました。
自分で食べる分を探すのも大変であろうに、日に日に大きく成長し餌乞いするヒナ達に休みなく餌を運ぶお父さん。新しい命を繋ぐという使命感の成せる業に心から拍手です。

田んぼでエサを探すNo.11(2020年撮影)
そして二つ目のうれしいニュースは、これまで営巣等は確認されても、巣立ちが確認されたことがなかった地域で、初めて巣立ちが確認されたことです。
いつもこの地域をモニタリングしてくだるボランティアさんの悲願であり、何を隠そう、このヒナが今期最後に巣立ちしたC90です。
C90の両親であるB15と312ペアは、もともと3月末から営巣と抱卵を開始し、4月末にはふ化の見込みでした。ところが原因はわかっていませんが、5月の中旬に抱卵をやめ、巣を放棄してしまいました。今年こそはと見守っていたボランティアさんは、ショックでしばらく確認に行けなかったと後日おっしゃっていました。
今年もだめなのかと落胆する中、6月初旬に少し場所を変えB15と312ペアは再度営巣を開始したことが確認されたのです。トキは1回目の営巣がうまくいかなかった場合、繁殖をやり直すことがあります。しかし、その成功率は低い傾向にあり、最後まで心配が続きました。そうした中、順調に子育てが進み、C90という足環をつけられたヒナが無事に巣立ちを迎えたことは本当にうれしい出来事でした。
いつも見守って下さっているボランティアSSさんから頂いたコメントです。

ボランティアSSさんの声:
畑野地区で初めてトキの巣立ちを見ることができ、大変嬉しいです。
抱卵中止や捕食者に邪魔をされ、毎年悔しい思いをしてきたことが、少し報われました。
無事の成長を願います。

今期最後に巣立ちするC90
今年もうまくいった事例ばかりではなく、途中で営巣をやめてしまったり、産卵したもののヒナが孵らなかったり、やっとヒナが生まれたと思ったら天敵に襲われてしまったりと、厳しい状況もありました。それでも、今回ご紹介したようなうれしい事例が確認できると、産卵や育雛、幼鳥から高齢の成鳥まで元気に過ごせる環境が維持できていること、またトキの定着地域が広がっていることを実感することができます。

今後もうれしい出来事がさらに増えるよう、地域の方々やボランティアの方々と協力しながらデータを積み重ね、次につながる取り組みを地道に続けていきたいと改めて思うのでした。