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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

トキの卵

2021年06月03日
佐渡

皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。



<親鳥とトキのヒナ2羽 2021/6/1撮影>

佐渡では5月28日に、野生下のトキの今期最初の巣立ちが確認され、トキの繁殖期も終わりが近付いてきました。

繁殖に成功し、ヒナを巣立たせるつがいがいる一方、巣造りしていたのにやめてしまったつがい、卵を温めていたのにやめてしまったつがいなども多数確認されています。

このようにトキが繁殖を中止した場合、トキが巣や林にいないのを確認してから巣の下へ行き、卵殻の回収を行います。



<巣の下に落ちていたトキの卵殻>

昨日も卵殻回収しに、繁殖を中止したトキの巣の下に行きましたが、卵殻ではなく、なんと卵まるごと1つを回収しました。落下したのに割れていない卵を拾うことはほとんどありません。




※野鳥の卵の採取は鳥獣保護管理法で禁止されています。トキの卵回収は種の保存法に基づくトキ保護増殖事業の一環として特別に実施しています。

どのような理由で落下したのか、天敵のカラスが持ち去ろうとして落としたのか、定かではありませんが、トキの卵を観察できる良い機会なのでご紹介します。

トキの卵は、青みがかった薄い灰色の地に、茶褐色の濃淡のある斑点が散らばっています。鈍端(丸い方の端)ほどこの斑点が多く散らばっています。



<短辺4㎝ほど>


<長辺7㎝ほど>



大きさは約7㎝×4㎝、重さは66.4gでした。

平均的なトキの卵の重さは約70gなので、こちらの卵は落下後に水分が抜けて少し軽くなったようです。

拾った卵や卵殻は、トキが何個卵を産んだのか(産卵数)、卵は有精卵だったのか(有精卵率)、今回のような未孵化卵(みふからん)の場合は卵を割って卵内のヒナの発生段階などを調べるために用います。

※ 第16回トキ野生復帰検討会p26
2.繁殖の成否に関する考察 (1)繁殖の成否に関する要因と分析 ① 未孵化による失敗


<有精卵か否かを調べるための検査の様子>



<検査液に卵殻を入れ、有精卵だと青白く光ります>

2008年に放鳥を開始してから徐々に個体数が増え、2012年に野生下での繁殖に成功し、現在、佐渡には約430羽のトキが生息していますが、2020年には個体数の増加の勢いが鈍化しました。

まだまだ野生復帰の道半ばですが、トキが佐渡だけでなく、本州でも安定して生息する未来が訪れることを願っています。