アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
トキの天敵対策
2021年03月12日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
先週、トキが今年も巣をかけると思われる木に、ポリカーボネート製の波板を設置してきました。
<ポリカーボネート製の波板を設置した営巣木>
トキは毎年同じ木の同じ枝に巣をかけることが多く、例年この木にはNo.161(オス)とNo.149(メス)というペアが営巣し、2015年から2019年までヒナを巣立たせていました。
しかし、昨年の繁殖期、このペアから誕生した巣立ち間近のヒナが巣から姿を消しました。
付近の別の巣でもヒナが消え、そのまた別の巣では、ヒナの死体が発見されました。
このヒナの死体を調査したところ、肉食獣テンのDNAが検出され、ヒナたちはテンの捕食にあっていたことが分かりました。
<トキのヒナの死体から獣医師がDNAサンプルを採取する様子 2020年6月撮影>
日本では、いまだ佐渡にしか生息が確認されていない、絶滅の危機に瀕しているトキ。
今年の繁殖期から、トキの営巣木へ天敵が登るのを防ぐ対策を積極的に行うことになりました。(第19回トキ野生復帰検討会 資料2 p12)
対策の一つとして、この営巣木への波板設置があります。
つるつるした素材のものを木の幹に巻き付けることで、テンが木に爪をかけてトキの巣まで登れないようにします。
(過去にも野生下のトキの営巣木に波板を設置したことがありますが、そうした巣で捕食された事例はありません。また、飼育施設でもテン対策として、波板が用いられています。)
まず、波板を設置する前に、テンが営巣木へ飛び移ることのないよう、周囲を刈り払いします。
刈り払いが終わったら、波板を設置していきます。
林内の急な斜面で作業するため、安定した足場を確保するのに苦労します。
インパクトドライバーとコーススレッドを使って波板の四隅と縦二辺の中央の6か所をとめます。
この木は根元で三股に分かれているので、全ての幹に波板を巻いて設置完了です。
<波板設置完了>
今回作業に入った林の近くにある水田ではNo.161、No.149ペアが確認されていますが、今年もこの木に巣をかけるのでしょうか。
今後の動きを注視していきたいと思います。
<No.161、No.149ペア 2017年12月撮影>