アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
珍鳥、ご来島!
2019年12月09日皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
先週は、佐渡最高峰の金北山(きんぽくさん:1,172m)を有する大佐渡山地から平野部にいたるまで広く雪に覆われ、佐渡にも本格的な冬がやって来ました。
<雪に覆われた大佐渡山地>
佐渡のアクティブ・レンジャーは、早朝、トキがねぐらから飛び立つ様子を観察し、午前10時頃までトキの動向を追跡・記録するモニタリング業務を行っています。この時期の身を切るような寒さは、早朝のモニタリングを辛いものにしますが、ガンカモ類の渡りの時期だけあって、幸運にあずかることがあります。
先日、水田でトキを観察(※)していると、私の車の横に見慣れない色のカモがおりてきました。大きさはカルガモくらい。頭は白く、首から腹・背中にかけて鮮やかな橙赤色(とうせきしょく)。翼は黒と白のコントラストが美しく、観賞用に品種改良されたカモの仲間でもやってきたのかと思いました。
(※佐渡ではトキの生態に影響がないよう車内から観察を行っています)
このカモの正体は、「アカツクシガモ」。全国的にも珍しく、佐渡では2004年以来、15年ぶりの確認となりました。
<アカツクシガモ 2019/11/20撮影>
アカツクシガモの多くは、ユーラシア大陸中部で繁殖し、冬期、インドや中華人民共和国などのユーラシア大陸南部へ渡り、越冬します。日本には希な冬鳥、または旅鳥として飛来が確認されています。
漢字では「赤筑紫鴨」。日本では、「ツクシガモ」と「アカツクシガモ」が確認されていますが、どちらも西日本、特に九州北部(筑紫の地域)での確認が多いことが名前の由来になっているようです。
ちなみに、英名は「Ruddy Shelduck」。赤い(Ruddy)ツクシガモ(Shelduck)を意味します。ツクシガモの配色を知っている人には、Sheld(多彩な)+duck(カモ)でShelduck(ツクシガモ)と英名になっているのもうなずけるのではないでしょうか。
その後、このアカツクシガモが佐渡で再確認されることはなく、15年ぶりの飛来を確認したのは、私だけでした。
寒い日のモニタリング中に突然舞い込んできた幸運。鳥好きの私には、まるで夢のような出来事でした。
この時期の朝は辛いですが、朝日を浴びて輝きながら飛んでいくトキや、赤く染まる金北山は、いつ見ても息をのむ美しさで、よくよく考えれば、毎日こんな景色を見ながら仕事ができること自体が幸運だなあと思いました。
<光を浴びて飛ぶトキ>
自然の厳しさと美しさが溢れる冬の佐渡。夏とはまたひと味違った佐渡を一度体験してみてはいかかでしょうか。おどろくような幸運が巡ってくるかもしれません。
<冬の外海府>