日光

戦場ヶ原を守る(その2)

2024年06月27日
日光 鈴木研司
皆さんこんにちは。日光国立公園管理事務所の鈴木研司です。
戦場ヶ原を守るシリーズの第2弾として、日光パークボランティアの活動の様子を紹介します。
日光パークボランティアは様々な活動を行っていますが、その中に「維持管理補修」と呼ばれる活動があります。老朽化した木道の補修、土砂が流されて段差が付いてしまった木階段の改修、泥濘化した歩道の排水対策など、他にも色々な公園施設を補修・修繕しています。今回の活動は「戦場ヶ原への進入防止柵の交換」です。昨年度に続き2回目の作業ですが、今年度も作業の様子を皆さんにお伝えしたいと思います。
多くの国立公園利用者にはマナーを正しく守っていただいていますが、残念な事にごく一部の方にマナーを理解していただけない方がいるようで、戦場ヶ原の湿原に入ってしまう方がいます。また冬の積雪時期には歩道の範囲が分からず、誤って戦場ヶ原に入ってしまうこともあるようです。進入防止柵には積雪時期に歩道の範囲を明確にする働きもあります。
作業の様子を順に追いかけてみましょう。

雨や風雪に耐えてきた柵は激しく傷んでいます。中には朽ちて倒れているものもあります。これらの杭を新しいものと交換するのが今回の作業です。


資材、機材は車両などで運び入れることはできません。全て人力で運び入れます。リヤカー、一輪車、背負子です。
写真中央ではリヤカーに杭を30本ほど積んでいます。リヤカーの耐荷重を越えないように気を付けます。木道までの約300mは土の歩道です。木の根、岩、凹凸、上り下りがリヤカーの進路を妨げます。場所によっては持ち上るようにして運びます。


杭を横にして背負子に積みたいのですが、杭の長さは1m50cmです。横にしてしまうと歩道を通る方の迷惑になってしまいます。縦に積むしかありません。この状態では不用意に前傾してしまうと、前のめりに倒れ回復できずにそのままです。杭は丁寧に背負子に固定し、ゆっくり持ち上げ、ハーネスできっちり体に固定します。


歩道周辺には樹木も多く、場所によっては後ろ向きになり小さく屈みこまないと通れない所もあります。抜群の良い天気の中慎重に運搬作業がすすみます。


戦場ヶ原はズミが満開です。
ズミの甘い香りが戦場ヶ原には広がっています。ボランティアさんからは「今年のズミは当たり年だね。」との話が出ていました。(写真は6月1日の様子です。掲載が遅くて申し訳ありません。)
   

現場に到着です。先ず、古い杭の解体からです。ロープを抜き取り、古い杭を地面から引き抜きます。古い杭は既にボロボロで根元から簡単に折れてしまうものもあれば、傷んでいるのに抜けないものもあります。抜けないときはノコギリで切ります。


杭を打ち込む場所に目印を付けます。歩道から25cm離れた場所に2m間隔です。杭もその近くに仮置きします。今日の作業はここまでの予定でしたが、翌日の天気が雨、雷雨予報なので今日中に杭を打ち込む作業まで行うことになりました。


かけやで打ち込む役、杭が垂直に適正量打ち込まれているか確認する役、杭を垂直に保つ役の3人一組で杭を設置していきます。まっすぐに打ち込んでもいるつもりでも杭は少しずつ傾き、また回転してロープを通す穴の位置がずれていきます。初日はここまでです。残る作業は杭の微調整とロープを通す仕事です。


翌日。
天気予報では、午前中は小雨程度で何とか作業できそうです。今日は杭の微調整をし、新しいロープを通していきます。


ここで利用されるのは回収した古いロープです。杭とバールに絡め、ねじり上げることでロープを締めていきます。強く締まったロープは杭を回転させる力を上手に伝えます。ロープの穴の位置が正しい方向になればOKです。
   

あとは新しいロープを通して完成です。


昨年度から2年かけて約140本の杭を交換しました。今年中に他の場所の老朽化した杭も交換する予定です。
このような活動の意味が国立公園利用者へ正しく伝わることを願いながら、日光パークボランティアは今日もどこかで活動しています。