日光
千手の森
2024年09月30日皆さんこんにちは。日光国立公園管理事務所の鈴木研司です。
今回は「奥日光のお気に入りの場所は?」と尋ねられたときの答えの一つ、千手の森について紹介します。
中禅寺湖の西岸には、美しい森林が広がる千手ヶ原があります。その千手ヶ原の原生的な森林を千手の森と呼んでいます。この千手の森に行くには、戦場ヶ原の入り口の赤沼車庫から出ている、低公害バスに乗って行くのが便利です。赤沼車庫から千手ヶ浜まで延びる約9kmの道は、日光市の市道で通称1002号線と呼びますが、一般車両(自動車、オートバイ)の走行は自然環境を守るために規制(マイカー規制)されています。その代わり環境に優しいEVやハイブリッドの低公害バスを利用することができます。もちろん、林間の歩道と1002号線を歩いて千手ヶ浜までいくこともできます。
赤沼車庫から低公害バスに乗り、千手ヶ浜の一つ手前の西ノ湖入口のバス停で降りましょう。
カラマツの広がる千手の森が始まります。左の写真は今年の9月、右の写真は昨年の夏前の写真です。穏やかで爽やかな良い気持ちにさせてくれる森です。お気に入りの場所です。
少し歩くと吊橋が出てきます。
橋の下を流れる川は、水量が豊かで透明度の高い水です。この吊橋を渡り先へ進むと西ノ湖に着きます。
西ノ湖です。
ここ数年は湖水の水位が下がり、湖も随分と小さくなってしまったようです。以前の状態を知る人に聞くと、水量が多いときは今の1.5倍の面積はあったようで、樹林のすぐ近くまで湖水が来ていたようです。冬の時期の降雪量が減少し、春から秋にかけての蒸発量が増加することで、湖水の水量が減少したと私は考えています。これも温暖化の影響なのかもしれません。
湖畔には「千手楢」と呼ばれるミズナラの巨木が立っています。一部では「楢木大王」とも呼ばれているようです。実際、見てみると確かに大王の名がふさわしい感じがします。静かに我々を見下ろし立ち続けています。
写真は昨年の春です。若葉が芽吹き始めたころです。秋にはどのように見えるのでしょう。気になりますね。
千手ヶ原に戻りましょう。辺り一面に可憐な白い花が咲いています。
シロヨメナです。8月から9月にかけて、森では多くの種類の植物が見られ、何種類かの花が咲いているはずなのですが、シロヨメナ一色になっているのが目につきます。このような状態も鹿の食害によるものと考えられます。シカが選択して食べなかった植物が一面を覆うようになるのです。
そのような中でも、頑張っている植物がいました。
左はノコンギク。写真ではシロヨメナとよく似ています。花弁が薄い紫色をしてます。右はアケボノソウです。ややピントが合っていません。ごめんなさい。
奥日光の樹木はこのようなネットで守られています。シカは食べられる植物が少なくなると、樹木の樹皮も食べてしまいます。樹木は、樹皮に近い所に水分や栄養を運ぶ組織があるため、樹皮を食べられてしまった樹木は枯れてしまいます。千手の森も例外ではありません。
森を通り抜けると、千手ヶ浜に出ます。頂上が雲に隠れていますが、正面には男体山が見えます。
紅葉のシーズンも間近、千手の森はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。皆さんも是非、秋の千手の森を歩いてみてください。
私は、紅葉が終わり冬を間近にし、今にも雪が降りだしそうな時期の、寒く薄暗い森が大好きです。