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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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富士箱根伊豆国立公園

353件の記事があります。

2021年08月26日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -アゲハチョウ科編 ②-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。線香花火の玉を落とさないことに定評のある齋田です。

そんなに集中してじっと動かずにいるのが楽しいのかと聞かれると、それはちょっと答えづらいです。

さて、伊豆半島の長い夏も終盤に差し掛かり、国立公園内では動植物が観察しやすい季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、どことなくスポーティな印象を受ける「アオスジアゲハ」です。

【アオスジアゲハ】

名前の由来となった水色の帯が可愛らしいアオスジアゲハ。細かい動きで俊敏に飛ぶため、めったに写真を撮らせてくれません。この日は機嫌が良いのか数秒ほどのシャッターチャンスを貰うことができました。

幼虫はクスノキ科の植物を食べて育つため、都市部のみなさんは公園や街路樹にて見かけることがほとんどかと思いますが、本来の生息地は平地から低山地等の照葉樹林とされています。

雄は吸水性が強く、降雨後に雨水が地面を流れる箇所や温泉水が流れ込む河原周辺にて集団吸水を観察することができます。アゲハチョウ科の雄にとってナトリウム塩の摂取が配偶行動に重要な役割を持つことは有名ですが、吸水行動によって得られたアンモニアを窒素源として筋肉や精子の生産に役立てていることを証明する論文もあるようです。興味のある方は、オープンアクセスの文献等で調べてみると面白いかと思います。

照葉樹林が多く見られる伊豆半島では、低山地を中心に広いエリアにて観察することができます。

続いて、あまりの大きさに画角からはみ出してしまう「モンキアゲハ」です。

【モンキアゲハ】

その名の通り、黄白色の斑紋が特徴的なモンキアゲハ。夏型の雌は特に大きく、日本最大級のチョウと言われています。元々は南方系の種類ですが、最近は関東・北陸地方にも生息域を広げているようです。

千葉県に長く住んでいた私にとって、伊豆半島で暮らし始めるまではあまり馴染みのないチョウでした。その大きさにまだ慣れていないせいか、写真に撮るといつもどこかがはみ出してしまいます。

幼虫はカラスザンショウやミカン類といったミカン科の植物を食べて育ち、成虫はウツギ類やヒガンバナ等を中心に様々な花を訪れます。

成虫の活動期は他のアゲハチョウよりもやや長く、羽化は9月の中旬頃まで断続的に見られます。しかし、どういうわけか夏の終わりに出会うモンキアゲハは写真のようにスレていることが多い印象です。羽化のタイミングによって成虫の発生個体数や生存率等が異なるのでしょうか。羽化直後に見られる傷一つ無い姿も美しいのですが、過酷な野生下を生き抜いた証である痛んだ翅にはそれとは違った美しさを感じますね。

栽培ミカン類が豊富な伊豆半島では、人家や農地を中心に広いエリアにて観察することができます。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるアゲハチョウ科の昆虫のうち、撮影に協力してくれた「アオスジアゲハ」と「モンキアゲハ」についてご紹介しました。この他にも、カラスアゲハやキアゲハ等が多く見られるのですが、彼らについてはまた別の機会に解説できればと思います。

緊急事態宣言の対象区域が拡大され、地域によっては一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて少しでも伊豆半島の夏を感じて頂ければうれしいです。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

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2021年08月23日【開催終了】アクティブ・レンジャー写真展開催中です in 四季の杜おしの公園 岡田紅陽写真美術館<富士五湖エリア>

富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒


【会場休館に伴う写真展終了のお知らせ】

展示会場の岡田紅陽写真美術館ですが、新型コロナウィルスの感染拡大防止のための臨時休館が8月11日(水)~22日(日)までから9月12日(日)までに延期となりました。そのため、残念ながら写真展は終了となりました。


こんにちは。富士五湖の小西です。

富士山が2年ぶりに開山し、早くも1か月が経ちました。。梅雨が明け夏山シーズン本番ですが、早くもトンボを見かけました。富士五湖の夏はとても短いので満喫したいと思います。

すっかり夏の様相です@三湖台(7月19日)

新型コロナウィルスの影響で今年もスタートが7月に遅れたアクティブ・レンジャー写真展ですが、現在、富士五湖エリアの忍野村にある四季の杜おしの公園 岡田紅陽写真美術館にて開催中です。一人でも多くの方に見ていただけたら嬉しいです。

<開催期間>2021年7月31日 ~ 8月29日 10:00~17:00(最終入館は16:30まで)
<場  所>四季の杜おしの公園 岡田紅陽写真美術館 2階(山梨県南都留郡忍野村忍草2838-1)
 アクセス方法はこちら  http://shikinomori.webcrow.jp/infomation.html#交通案内
 写真展の詳細についてはこちら http://kanto.env.go.jp/to_2021/2021_3.html

なお、期間中に美術館の企画展として動物写真家の岩合光昭さんの「地球の宝石」が開催されています(有料)。かわいい動物たちの写真が満載でした!

富士五湖からの今年度の作品は下記の2点です。

朝日で黄金に輝く富士山(撮影日:2021年1月29日@三ツ峠)

冬は抜群に寒い富士五湖ですが、雪が積もることはあまり多くなく、

「滅多にないチャンス!」

と降雪の翌日朝暗いうちに三ツ峠に登りに行きました。

日の出の景色を撮るというのに慌てていて、肝心の三脚を忘れるという失態(でもよくやります・・・)をしながらも親切なおじさまカメラマンに貸していただき、無事撮ることができました。

日が昇るとともに周囲の色が刻々と変わっていく様子は、本当にまばたきをするのがもったいないくらいでした。

雲海越し遠くの山々を望む(2020年10月21日撮影@奥庭)

こちらは秋の富士山の奥庭からの景色です。カラマツの黄葉と赤く染まる富士山を撮りに行きましたが、残念ながら富士山は赤くならず、待っていたカメラマンの方々が
「今日はだめだー」と帰っていった後に、後ろを振り返ったら、幻想的な風景が広がっていました。

雲海の先に見える南アルプスをはじめとした山々。

『きっと向こうからも雲海越しに富士山が見えているのかな~』

と想像して思わず手を振りたくなりました。

毎年思うことですが、関東地方環境事務所管内は富士山をはじめとした山々、トキにや小笠原の数多くの固有種、美しい海、、、と本当に多種多様です。21名のアクティブ・レンジャーの力作を通して自然を楽しんでください!

なお、昨年出品した作品の撮影地である山中湖のパノラマ台では7月24日・25日に東京オリンピックの自転車ロードレースの選手たちが無事通過しました。

昨年の写真展作品(2019年2月12日撮影@山中湖 パノラマ台)

あいにくのお天気で、富士山は隠れがちで、選手にもTVを通して観戦していた世界中の人にも美しい山容を見てもらうことができなかったのは本当に残念ではありますが、それでも湖や樹々を通して富士の麓の自然を感じてもらえたと思います。

きっとこれから自転車の愛好家の方々が多く訪れるようになると思います!

みなさんも新型コロナウィルスが終息したら、オリンピアン達が汗を流して走り抜けた道でぜひ、追体験をしてみてください!

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2021年08月18日【富士山編】御中道の清掃と外来種駆除を行いました

富士箱根伊豆国立公園 箱根 高木俊哉

富士山頂

富士山吉田口五合目から続く「御中道」とその周辺での活動

御中道の清掃


先日、他の事務所からの呼びかけがあり、御中道の清掃と外来種の駆除を行いました。

朝9時、天候にも恵まれており、スバルライン五合目では登山客だけでなく児童の団体などの観光客も見受けられました。

スバルライン五合目

▲スバルライン五合目の様子

まずは御中道をスバルライン五合目からおよそ2時間ほどかけて、奥庭駐車場へと歩きながらゴミ拾いを行いました。

今回初めて御中道を歩きましたが、その印象はやはり山頂への登山とは異なるものでした。
歩くとすぐに木々に藻の様なものがまとわりついて見えます。
最近流行りのエアプランツに見た目はとても似ているようです。

サルオガセ

▲中央の気に付着する「サルオガセ」

こちらは「サルオガセ」の仲間で、その実は地衣類(菌類)です。周囲の青々とした植物とは異なり、不思議な印象を持たせてくれます。
こういった生物が見られるのも、山頂を目指す登山とは異なる御中道の魅力です。


道中、辺りを見渡してゴミを探しつつ、他にも夏真っ盛りを生きる草木も観察することが出来ました。
また、一部ではありますが看板には植物などの情報も記載しており(今後距離標も設置予定です)、豊かな植物の間からは山頂が垣間見えるポイント(タイトル上画像)もあるので、登山ではなくとも富士山を満喫することが出来ます。

ハクサンシャクナゲと看板

▲ハクサンシャクナゲと看板

結果、ゴミはほとんどなくきれいな状態が維持されていました。
小さいゴミ(お菓子の袋等)を数個拾ったのみです。

外来種の駆除


今回外来種として駆除したのは「タニソバ」です。

外来種、と表現していますが、国外からの外来種ではなく国内にも広く分布しています。
しかし、周辺では今回駆除を行った四合目付近の工事現場にしか生育が認められていないため、人為的に持ち運びこまれたものであると考えられ駆除の対象となりました。
このまま放置すると、五合目以上の砂礫地への拡大も懸念されます。

タニソバ

▲タニソバ(左方の赤い葉をもつ植物)

根は浅く、スコリアが混じる地面だったためストレスなく地面から抜くことが出来ました。
根深いとなかなか引き抜くことが出来ないこともあるので、一安心です。

今回はビニール袋6袋ほどの量を駆除しました。
地道な作業でしたが、これからも富士山が変わらない姿であり続けるための必要な作業だと感じます。

また、靴裏に付着している植物の種子等を落とす(持ち込まない)目的で、登山口にマットが設置されている場合があります。
登山前には、マットで土などを落とすようご協力をお願いします。

駆除量

▲駆除したタニソバ

種子落としマット

▲種子落としマット

富士山では、今回触れたゴミを捨てない、外来植物を持ち込まない以外にも、登山中のマナーや法律で禁止されている行為があります。
登山前には、以下のリンクを確認して富士山での注意事項を覚えておきましょう。

富士登山オフィシャルサイト(富士山のルールとマナー)

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2021年08月18日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -アゲハチョウ科編 ①-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。どういうわけかパクチーにはまっているパクチニストの齋田です。

最近は通勤中に出会うキアゲハたちにただならない親近感を覚えてしまい、まあまあ困惑しています。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、アゲハチョウ科といえばこのチョウ「ナミアゲハ」です。

【ナミアゲハ】

翅脈に沿った黒色模様がオシャレなナミアゲハ。名前の「ナミ(並)」の通り、最も普通に見られる種類です。

幼虫はミカン科の植物を食べて育ち、成虫はアザミ類やヤブガラシ等を中心に様々な花を訪れます。

人家の庭木等やベランダでも見られることが多く、都市部のみなさんにも馴染みの深いチョウだと思います。

楽曲のタイトルや歌詞、小説の題材、俳句の季語等、夏の象徴として扱われることの多いナミアゲハ(揚羽蝶)ですが、夏と呼ぶにはまだ早い3~4月頃にも発生し、それぞれ「春型」・「夏型」と区別されます。季節型によって体サイズや模様が若干異なるため、写真を撮って見比べてみるのも面白いかもしれません。

伊豆半島では、人家や農地を中心に海岸部から低山地までの広いエリアにて観察することができます。

続いて、ゆらゆらと妖しく踊る「ジャコウアゲハ」です。

【ジャコウアゲハ】

黒いレースのような翅が美しいジャコウアゲハ。雄成虫の腹端から発生する匂いが麝香(じゃこう)に似ているため、その名が付きました。

幼虫は毒草として有名なウマノスズクサやオオバウマノスズクサといったウマノスズクサ科の植物を食べて育ちます。これらの植物はアルカロイド系のアリストロキア酸によって昆虫たちによる食害から身を守っていますが、なんとジャコウアゲハの幼虫には通用しません。それどころか、幼虫はウマノスズクサ科の有毒成分を積極的に体内に取り入れ、天敵からの防御に利用しているのです。

ちなみに、ジャコウアゲハによく似た種類にクロアゲハやオナガアゲハ等がいますが、いずれも無毒です。面白いことに、彼らは有毒であるジャコウアゲハに姿形を似せることで身を守っているようです。このような擬態様式はベイツ型擬態と呼ばれ、アゲハチョウ科の仲間ではベニモンアゲハ(有毒)に擬態するシロオビアゲハ(無毒)が有名です。

伊豆半島では、ウマノスズクサ科が生育する農地や樹林地にてスポット的に観察することができます。薄暗い林縁部を優雅に舞う姿はドレスを纏った魔女のようで、出会うと不思議な気分にさせられますよ。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるアゲハチョウ科の昆虫のうち、撮影に協力してくれた「ナミアゲハ」と「ジャコウアゲハ」についてご紹介しました。

食害を防ぐために毒を持つウマノスズクサ、ウマノスズクサの毒を体内に蓄積させることで捕食者から身を守るジャコウアゲハ、ジャコウアゲハに姿を似せることで天敵を欺くクロアゲハ。生き物たちの世界はとても興味深く、知れば知るほど面白いですね。

今週より緊急事態宣言の対象区域が拡大され、一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて伊豆半島の夏やそこで暮らす生き物たちの魅力を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちをご紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

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2021年08月17日富士登山の前に-富士山を感じる山に登ろう!-静岡エリア(伊豆半島編)

富士箱根伊豆国立公園 沼津 山田優子

みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。

富士山が開山して1ヶ月が経ちました。そして閉山まで1ヶ月を切りました。以前、富士五湖管理官事務所の小西アクティブレンジャーの日記で「富士登山の成功のカギは準備にあり!」と準備の必要性について紹介していますが、閉山までの間に富士登山を計画され準備を進めている方に、富士山登頂前の準備編として静岡エリア第2弾「伊豆半島編」を紹介したいと思います。ぜひ準備登山を計画されている方は参考にして下さい。

▼第一弾:富士登山の前に-富士山を感じる山に登ろう!-静岡エリア(富士山麓編)

●登山の持久力は登山で!

富士山には4つのルートがありますが、どのルートを選んでも往復休憩なしで10時間以上かかります。無事に楽しい登山をするためには、持久力が必要です。長い時間山道を歩くと普段の歩行では使われない筋肉を使います。特に下りに必要な筋肉は日常生活の中で鍛えるのが難しいので、やはり登山の準備は登山ですることをおすすめします!

<伊豆山稜線歩道>

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伊豆山稜線歩道は、伊豆市修善寺自然公園から天城峠まで約42㎞の自然歩道です。全体的に歩道は整備されていて歩きやすいですが、コースの組み方でかなり長いコースや、登りごたえのある場所もあるので、トレーニングにピッタリです。歩道は道路(修善寺戸田線、西伊豆スカイライン、西天城高原線)に沿っていて、修善寺戸田線沿いはバスが通り、西伊豆スカイライン・西天城高原線沿いは駐車場が充実しています。

【 達磨山周辺の歩道からの眺望 道路は西伊豆スカイライン 】

<仁科峠~金冠山>

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今回は、富士山を感じる山ということで、伊豆山稜線歩道の北側、仁科峠~金冠山の富士山を堪能出来る区間を紹介したいと思います。歩道を北側に進んで行くと富士山を目指して進むので、富士山登頂への気分を高めてくれるハズです!

縦走コースタイム:約6時間35分(休憩を含まず)

距離:約18㎞

【 仁科峠周辺からの富士山 】

歩道は整備されていて全体的に歩きやすいです。アップダウンを繰り返しますので、気を抜かずに進みましょう。山頂以外にも歩道の色んな場所から富士山を望むことが出来ます。

【 歩道の様子① 富士山が目の前に見えています 】

長い階段がいくつもありますが、一歩一歩足を運んで行きましょう。迷いやすい場所はありませんが、途中道路を通る場所が何ヶ所かありますので、看板を見ながら進み車に注意して下さい。

【 歩道の様子② 】

金冠山からは、富士箱根伊豆国立公園が見渡せます。トレーニング目的でも素晴らしい景色は楽しみたいですよね。きっと疲れが吹き飛ぶような景色が見られると思います。この場所は春になるとマメザクラやアセビが咲き美しいです。

【 金冠山山頂からの眺望 】

伊豆山稜線歩道の仁科峠から北側のほとんどは、日よけのない歩道になっています。ウエアの調整や水分補給で体温調整をしながら体力に合わせたコースを設定して下さい。水分や塩分の取り方など、熱中症対策についてロングトレイルを歩きながら考えてみて下さい。富士山は標高が高いので気温は麓に比べると低いですが、太陽に近く暑いです。日焼け対策やウエアの調整は長時間の登山では重要です。

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ご紹介した仁科峠、金冠山は、富士箱根伊豆国立公園指定80周年記念として、2017年に「日本のシンボルである富士山の魅力を発信し、より多くの人々に富士箱根伊豆国立公園に親しみをもっていただく」ため、代表的な富士山の展望地を"富士山がある風景100選"として選定した場所です。他にも富士山を感じる場所がたくさんありますので、トレーニングや観光の参考にして下さい。

▼富士箱根伊豆国立公園"富士山がある風景100選"

http://kanto.env.go.jp/to_2017/post_94.html

▼富士登山オフィシャルサイト

http://www.fujisan-climb.jp/index.html

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2021年08月16日富士登山の前に ー富士山を感じる山に登ろう!ー 静岡エリア(富士山麓編)

富士箱根伊豆国立公園 沼津 刑部美鈴

このところ秋雨前線の影響で雨の日が続き、各地で災害が起こっておりますが皆様のお住まいの地域は大丈夫でしょうか?

8月も半ばにさしかかり、あっという間に富士山の開山から一ヶ月が過ぎました。

富士山に一生に一度は登ってみたい!と思っている方、多いのではないでしょうか。

日本最高峰というだけあって、山頂からの景色は、やはり一度は見てみたいと思いますよね!?

富士山に登りたいと思っている方、富士山は日本最高の独立峰だけに、気象条件も体力的にも厳しい山です。前回の日記に富士登山成功を目指す人のために準備の必要性と体力強化について書いてありますので、まずはそちらをご覧ください。

富士登山成功のカギは準備にあり!<体力編>

いきなり本番ではなくまずは富士山が見える山に一度登ってから富士登山本番を迎えてみるのはいかがでしょうか?

準備をすると必要なものや自分に足りなかったものが見えてきて、富士山登頂がものすごく大変なものから楽しいものにかわるかもしれません。

今回は、富士山登頂の前に準備編として富士山を見ながら楽しく登れる山のご紹介です!

      ▲長者ヶ岳山頂からの富士山(2021年3月1日撮影) 

富士山が見える山はいくつもありますが私がおススメしたいのは、長者ヶ岳です。以前の私の日記にも紹介したことがあります。どこにあるかというと静岡県の富士宮市。標高1335mの山です。

登山口は田貫湖にあります。田貫湖より小田貫湿原に向かう途中、車が数台とめられるところが登山口になっていますが、駐車場が狭いのでトイレもある田貫湖バンガローサイトの駐車場(写真1)を利用するのがおすすめです。

詳しくはこちら

富士宮市のHP 長者ヶ岳について

       ▲写真1 田貫湖バンガローサイトの駐車場

▲ 長者ヶ岳の地図(富士宮市HPより) 赤丸は登山口、黄色丸が田貫湖バンガローサイト駐車場  

田貫湖より東海自然歩道を歩きながら、長者ヶ岳の山頂までは約2時間程の登り。

所々富士山が眺められる場所があり、休憩できるベンチもあります。

      ▲お天気がよければ山頂から南アルプスも!(2021年3月1日撮影)

山頂にはベンチやテーブルもあり、富士山を見ながらお昼ご飯を食べるのにはよいスポットです。

夏も本番になってきましたので、無理せず熱中症に気を付けて十分な水分補給と帽子をお忘れなく。

       

富士山を眺めながら、富士登山に備えてみるのはいかがでしょうか。 本格的な夏の登山シーズン到来ですが、感染症予防対策、熱中症対策を十分とって安全に富士登山を楽しんでください!

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2021年08月13日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カワトンボ科編-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。私が作った竹とんぼだけ上手く飛ばない齋田です。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、河津七滝から浄蓮の滝を結ぶ踊子歩道で出会った「ミヤマカワトンボ」です。

【ミヤマカワトンボ】

写真ではとても小さく見えてしまいますが、腹長60mm前後と大きく(みなさんが都市部で見かけるハグロトンボは45mm前後)、カワトンボ科の中では世界でも屈指の大きさを誇るトンボです。

後翅の濃い褐色帯や体サイズ等の特徴から、遠目でも識別しやすく、比較的覚えやすい種類かと思います。

富士箱根伊豆国立公園では、山地の樹林に囲まれた渓流を中心に多くのエリアにて観察することができます。

初めて出会う方は、腹部を碧く光らせながら渓流沿いを優雅に飛ぶ姿に思わず見とれてしまうことでしょう。

続いて、こちらも同じく踊子歩道で出会った「アサヒナカワトンボ」です。

【アサヒナカワトンボ(伊豆個体群)】

写真を見て「ニホンカワトンボに見えるけど?アサヒナカワトンボの色とはちょっと違うよなあ」と思ったみなさんは流石です。そこそこのトンボ好きですね。

たしかにニホンカワトンボの橙色翅型に酷似していますが、残念ながら伊豆半島には生息していません。

ちなみに、アサヒナカワトンボとニホンカワトンボの間では両者の中間的特徴を持つ種間雑種が知られていますが、文献によると伊豆(単独生息域)個体群はニホンカワトンボとの雑種由来集団と考えられているようです。

さて、気になる見分け方ですが、アサヒナカワトンボの胸部はニホンカワトンボのそれよりもわずかに小さいらしく、一般的には「頭でっかち(頭部が相対的に大きく見える)がアサヒナ」と言われています。トンボ屋の友人に貰った様々な写真を見比べましたが、私はあまりピンときませんでした。

富士箱根伊豆国立公園では、踊子歩道や伊豆山稜線歩道等の渓流や細流にて観察することができます。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカワトンボ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。

先週よりまん延防止等重点措置の実施区域が拡大され、地域によっては一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて少しでも伊豆半島の夏を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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2021年08月06日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カミキリムシ科編-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。仰向けに転がった蝉が突如として動き出すとびっくりする齋田です。

巷ではこの現象を「セミファイナル」と呼ぶそうですね。半ば/蝉「semi」と最後「final」を掛けた言葉遊びでしょうか。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか、外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

今回の日記では、みなさんに伊豆半島の夏を感じて頂ければと、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、バームクーヘンでおなじみの恵比須島にて出会った「ホシベニカミキリ」です。

【ホシベニカミキリ】

関東以西の温暖な地域で見られる南方系のカミキリムシ。どことなく南国チックな風貌をしていますね。

富士箱根伊豆国立公園では、海岸線付近の極相林やその周辺にて観察することができます。

真っ赤なボディにアシンメトリーの黒斑を持つオシャレさんですが、防潮林として植えられたタブノキを食べてしまうやっかいものとしても知られています。

続いて、河津七滝を通る踊子歩道にて出会った「シロスジカミキリ」です。

【シロスジカミキリ】

山間部で見られる大型のカミキリムシ。人差し指と比較すると大きさがイメージできるかと思います。

その圧倒的な体サイズからなる迫力もさることながら、筆で描いたような白い模様に目が引かれますね。

富士箱根伊豆国立公園では、クリやコナラの二次林を中心に多くのエリアで観察することができます。

「カブトムシを探しに行ったらでっかいカミキリムシを見かけた」という場合は本種であることが多いです。

今回の日記では、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカミキリムシ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。

伊豆半島の豊かな自然の中では、このほかにもさまざまな生き物たちと出会うことができます。

「夏の生き物といえば昆虫でしょ!」という声が聞こえた気がするので、しばらくは伊豆半島で出会った昆虫たちにスポットを当てた内容をお届けします。

不要不急の外出自粛が呼びかけられているなか、みなさんにはこの日記を通じて少しでも富士箱根伊豆国立公園の夏を感じて頂ければうれしく思います。

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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2021年08月03日富士登山成功のカギは準備にあり!<体力編>

富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒

2年ぶりの開山!


富士山が2年ぶりに開山してから1ヶ月(静岡県側では3週間日ほど)ですね。例年梅雨明けまでは登山者も少なく比較的静かで、海の日くらいからいよいよ夏山シーズン本番となってきます。今年も4連休辺りから登山者が多くなってきた印象です。

これから富士登山を計画している方に、現地で働く環境省のアクティブ・レンジャーが安全・快適・楽しい登山にするためのポイントをお伝えしたいと思います。

富士登山成功のカギは・・・・


8シーズン富士山で働き、毎年多くの登山者を見て感じていますが、声を大にして言いたいです!

富士登山成功のカギは「準備」です!!


良い思い出になるかどうかは、かなりの部分を「準備」が占めていると思います。
特に今年は新型コロナウィルスへの対策や救助体制に影響を与えないためにも例年以上に確実な準備をすることが重要です。

自分の行動次第で「より楽しく安全な」登山になるなら、準備するに越したことはありませんよね?

  •  ●装備とルール
  •  ●体力強化
  •  ●プランニング・情報収集


日本一高い富士山は決して簡単ではありません。富士登山を成功に導くにはどの準備も非常に重要です。すでに「装備とルール」については7月14日に高木アクティブ・レンジャーが投稿済(「【富士山編】開山前から出来る装備の状態とルールの確認」ですので、今回は体力強化についてお伝えします。

富士山は楽じゃない!


富士山の五合目から山頂まではルートによって異なりますが、距離は片道4.5km~10.5km、標高差は片道で1,400m~1,800m。登山時間は標準で往復10~13時間。日常生活にはない運動強度です。

五合目
の標高
距離
(往復)
標高差
(五合目〜山頂)
コースタイム*
吉田ルート 2,305m 17.4km 1,471m 登り:6.5時間
下り:4.0時間
合計:10.5時間
須走ルート 1,970m 16.1km 1,806m 登り:7.0時間
下り:4.0時間
合計:11.0時間
御殿場ルート 1,440m 20.8km 2,336m 登り:8.5時間
下り:4.5時間
合計:13.0時間
富士宮ルート 2,380m 12.2km 1,386m 登り:6.0時間
下り:4.0時間
合計:10.0時間

 *コースタイムは個人差が大きいのであくまで目安です



それも行きは登りっぱなし、帰りは下りっぱなしと同じ筋肉を酷使します。さらに登るほど酸素は薄くなり、行動すること自体が大変になります。

みなさん、平地で10km歩いたことあるでしょうか??1日に6時間以上歩いたことありますか?それよりも山は何倍も大変です!

何故、体力強化が必要?


体力・筋力がないことで、起こり得るリスクはなんでしょうか?かなり沢山あります。

 ●ふんばりが効かなくなり身体のバランスが保てない
  ⇒転倒や落石を起こすなどの危険性が高くなる
  ⇒自らが怪我をしたり、他の登山者に怪我を負わせてしまうリスク
 ●予定より大幅に時間がかかってしまう
  ⇒日没による道迷いや公共交通機関に間に合わなくなる危険性
 ●バテてしまう
  ⇒集中力がなくなり道間違いをしたり、危険物に気付かない危険性
  ⇒景色を楽しむ余裕がない
  ⇒単純にしんどくてつらい。楽しくない

パトロールをしていると特に下山時にゾンビのように足を引きずって歩いている登山者をよく見かけます。見る度に「もっと準備しておけば、きっと違っただろうに、、、」と残念に思います。


皆さんだいぶお疲れです・・・・

体力は一日にしてならず!


体力強化には時間がかかります。日々の生活にちょっとした運動を取り入れてじっくり「登れる身体」を作っていくことが重要かつ効果的です。まだ身体ができていないと思う方は登山日を遅らせてでも、まずは身体を作る方を優先した方が結果的に安全で楽しい登山をすることができると思います。

今日から行動に移しましょう!

何をすればいい?


まず鍛える必要があるのは、

 ●長時間バテない持久力

 ●下半身や体幹

できれば1か月前くらいからこの2つを意識し準備したいところです。

<持久力>

①いつもより沢山歩く習慣を(毎日)

⇒1駅手前で下りて1~2キロ長く歩いてみたり、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使ったり、急に負荷の高いことをするのではなく、まずは日々の生活に上手に取り入れていくことがポイントです。


②登山を想定して少し負荷をかけてみる(週1~2回)

⇒日々歩くことに慣れてきたら、登山を想定して、坂道を登ったり、ジョギングをしたりと長めの運動を週に1~2回やってみましょう。息が上がってしまうほどの運動ではなく、長時間続けられるペースを意識してみましょう。少し重い荷物を持って歩いてみるのも良いと思います。水泳や自転車こぎなども持久力アップには有効ですね。


③プレ登山で実際に登山をしてみる(月1~2回)

⇒富士登山の前に山に登ってみましょう。舗装路とはまた違いますし、自分がどんな所が苦手なのか(登り、下り、岩場、ザレ場など)というのを事前に知っておくのも重要です。5~6時間の山に登れば、富士山を1日(1泊2日の場合)登った時の自分の体力の消耗度も想像しやすくなると思います。

持久力の強化は心肺機能の強化にもなるので、空気の薄い富士山では、その効果も期待できると思います。

<下半身や体幹>

①スクワット

⇒登りでも下りでも酷使する「大腿四頭筋」を鍛えましょう!毎日続けることで着実に筋肉はついていきます。


②腹筋・背筋・プランクなど

⇒体幹を鍛えることで体全体の安定性が高まります。体の動きのスムーズさ、重い荷物を長時間背負ったり、不安定な足場でバランスを取ったり、あらゆる状況で助けてくれます。

下半身や体幹のトレーニングの方法はインターネットで検索すると沢山出てくると思いますので、ご自身の体力にあったものを試してみましょう!

何よりも続けることが大切です!そしてその努力が登山をより楽しく安全なものにしてくれます。


日本の宝である富士山を皆さんに思う存分楽しんでもらいたい!!と言うのが 私の願いです。
この日記が、準備不足によるリスクを知っていただき行動に移すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

次回は富士箱根伊豆国立公園内で富士登山本番の前の予行練習におすすめの山をご紹介したいと思います!

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2021年07月27日仙石原湿原「ヨシ刈り後の開花調査」とモウセンゴケの花 (箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

梅雨も明け、本格的な夏がやってきそうな箱根です。

夏の花たちが咲き始めるこの時期、箱根町では仙石原湿原で咲いている花数を数える「ヨシ刈り後の開花調査」が行われました。この調査は、先行して約1ヶ月前に今年で13回目となる「ヨシ刈り」が実施され、これによって適度な日照を得られた湿地性植物が、ヨシ刈りをしなかった場所と比較して勢力がどう変化するかを、花数によって確認する調査です。この結果は、ヨシ刈りを今後の仙石原湿原の保全にどう活用するべきか検討する材料にもなっていきます。

【今年のヨシ刈り風景  背景には天然記念物の石碑とススキ草原が見えます】

(ヨシ刈りについてはこちらを確認下さい⇒昨年の「ヨシ刈り」作業について

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]_「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域) (env.go.jp)

開花調査当日は、コロナ禍、および神奈川県では蔓延防止重点等措置が発令されている中でしたので、マスク着用、そして対象地域外の少数人員で作業を実施し、この作業にアクティブ・レンジャーも同行しました。少人数での調査になったため、調査対象はこの時期開花を迎える3種「ノハナショウブ」「カキラン」「ミズチドリ」に絞り実施しています。

【開花調査前 草丈の短い部分がヨシ刈りをした場所です】

ヨシ刈り実施箇所の方形区ではヨシが育ち始めていましたが、方形区の4角形がはっきりと目視確認できます。この方形区の横に、ヨシ刈りをする前の状態と同じ環境、同じ広さの方形区(対照区)をそれぞれ新たに作り、この2か所内の花数を比較します。汗だくになって作業を実施した皆さんは、パークボランティア関係者や箱根湿生花園の方々です。この皆さんは植物調査の経験が豊富なので、少人数でしたが手早く調査が実施出来ました。蒸し暑い最中、本当に頭が下がります。

調査に参加した感想は、日当たりが良い場所ではしっかりと「ノハナショウブ」の開花数が増え、「カキラン」は日向でも日陰部でも咲いているといった印象でした。広くはない湿原の中で、植物たちは自らに適した環境を求めて生育している様子に驚きます。

【カキランとノハナショウブ(どちらも神奈川県絶滅危惧ⅠB類)】

「ミズチドリ」は至る所で咲いており、少しヨシが伸びている場所でも元気に咲くようでした。

【ミズチドリ(神奈川県絶滅危惧ⅠB類)】

更に今回は、調査対象種以外の植物ではありますが、ヨシ刈りの効果で元気に咲く湿地性植物を目にすることが出来ました。「モウセンゴケ」の花です!

【モウセンゴケ(神奈川県絶滅危惧ⅠB類)とその花 】

「モウセンゴケ」に、このように可愛らしい花が咲くのは意外でした。ヨシ刈り後の方形区内は一部ではありますがモウセンゴケのお花畑となっていました。太陽の光が好きな植物であり、ヨシ刈りによって好環境がそろった結果と思われます。

今回紹介した植物たちは、全国的には一般的に観察できる植物ですが、神奈川県では希少種のカテゴリー「絶滅危惧ⅠB類」に指定されています。

【希少種って何?と思われた方は以下サイトを確認下さい。希少種カテゴリーを調べるのにも便利です。】

★生物情報収集・提供システム・生きものログ⇒https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/

仙石原湿原は、「ヨシ刈り」という人の手による管理で、湿地性植物を維持していた歴史があります。その昔は、馬を放牧して下草を食べさせ、また民家の屋根の材料としてヨシが刈られることを繰り返して、仙石原湿原にはノハナショウブが咲き誇ったとも言われています。このサイクルが残念ながら失われている今、現存する生物多様性を守る為にも、「ヨシ刈り」が保全活動に有用であろうことは、今回の「開花調査」への同行で実感できました。「開花調査」の結果自体は、その年の天候によっても変化があるので、今後も継続して観察していくことが重要です。何もしなければ、乾燥が進んで湿地は消えてしまいますので、アクティブ・レンジャーとしては、仙石原湿原の保全活動3本柱「火入れ」「ヨシ刈り」「開花調査」の繰り返しを、今後も協力、応援できればと考えています。

【おまけ】

仙石原湿原では、湿地性植物以外にも、箱根の山で観察できるユニークな植物に出会えました。

「オオナンバンギセル」です。こちらは全国で、一般的に観察しやすい植物です。

【オオナンバンギセル】

ススキの根元に出る寄生植物ですので、ハイキング中にススキを見かけたときには、

是非探してみてください。

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