ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2019年3月

14件の記事があります。

2019年03月08日人が歩かなくなった登山道(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎

こんにちは!富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。

 

 平成27年5月に大涌谷が噴火し、神山周辺の登山道が一部閉鎖され、早3年が経ちました。依然閉鎖されておりますが、閉鎖区間である駒ヶ岳~防ヶ沢で箱根町の登山道確認調査があり、それに同行してきました。

↑調査した登山道(茶線/全ルート封鎖中)

 登山道の状況は、一部の区間が非常に悪く、階段の欠落や登山道の崩落があり、通行可能になる前の補修作業に時間を要するかと思います。人が通ると道が荒れると言いますが、使わなくても道が荒れてしまうため補修が必要なのだと痛感しました。

↑封鎖されている登山道の様子。雨風により土砂が流出し、階段が崩れていました。

↑左の谷へ崩落しかけている登山道。通過するときに地面を踏み抜いてしまい、こけ落ちそうになりました。

また、このコースは駿河湾から上がってくる湿った空気が神山や駒ヶ岳に当たり、雨や霧が発生する地域にあたります。この日も雨と霧に遭遇したのですが、そんな天気だけ楽しめる素敵な風景もあります。

↑坊ヶ沢国有林

↑枝先の水滴に写る森

↑どう?新しい髪型?(ハコネイトスゲ)

↑霧の水分が集まるコケの花

開通までにまだ時間を要しますが、開通後の楽しみとして参考にしていただけたらと思います。

※大涌谷周辺の火山活動による立ち入り規制のため、早雲山‐大涌谷、駒ヶ岳-神山-大涌谷、大涌谷-(早雲山経由)-駒ヶ岳、駒ヶ岳-防ヶ沢ハイキングコースは通行止めです。開通情報は下記「箱根町 交通情報」をご確認ください。

https://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/10,4102,48,181,html

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2019年03月07日雪の赤岩滝

日光国立公園 太田祐司

みなさんこんにちは!

日光国立公園の太田です。

冬の日光国立公園では、氷瀑の見物がはやりです。

有名な雲竜渓谷では、平日も多くのガイドツアーが行われています。藤本ARが2月22日のAR日記で紹介した庵滝も、多くの見物客が訪れており、スノーシューで歩きまわる雪中のトレッキングというところも人気を呼んでいるようです。

奥日光には、これ以外にも多くの滝がありますが、アプローチの長さ、地形の厳しさや雪崩の恐れなどから、一般的な見物対象にはなっていない様です。ただ中禅寺湖の西の千手が原の奥にある赤岩滝は、インターネットで積雪期の記録をいくつか見ることが出来ます。奥日光の積雪期活動の状況を把握するため、藤本ARと調査に出かけました。

今年の奥日光は寡雪暖冬で、雲竜瀑も2月上旬には融けてしまいました。奥日光は降雪量も少なく、粉雪のラッセルは期待できませんが、この日は夜間の寒気で雪が凍結し締まっており、雪の林道も歩き易い状態となっています。

雪の林道を歩く藤本AR

林道が途切れるところで川を渡りますが、石の上に積雪は見られず、水量も少なく楽に徒渉をすることが出来ました。

川を渡る藤本AR(これは復路の写真)

この先は林道も無く、雪に埋もれた沢を地図と磁石を頼りに歩いて行きます。天候も良く白い雪原が青空に映えて綺麗でした。

徒渉地点の上部で進行方向の沢を見る

しかし急な山肌が迫ってきている箇所では、ところどころで雪崩の跡が確認出来ます。まだ2月ですが、暖かい日が続き積雪量も少ないためか底雪崩が発生しているようです。

急な斜面から出た小規模な雪崩跡

開けた沢を登り詰めて行くと、赤岩滝のかかる沢の出会いがありました。この沢は両岸がせまり側面からの雪崩の跡も見られるので、安全な場所に荷物をデポして身軽になり、滝の偵察や撮影を行うことにしました。無積雪期はナメ滝になっている箇所はほぼ雪の下で、そこを回り込むと、赤岩滝が見えました。

一部融けている赤岩滝氷瀑

残念ながら、一部は融けて水流が見えており、氷も溶け始めているためか、蒼く輝く氷瀑という雰囲気では無く、迫力に欠けますし地形から言っても、夏と違ってそばには寄らない方が良さそうです。時間をかけてやってきた場所ですが、おすすめのコースとはならない場所でした。古いトレースはありましたが、当日の利用者はいませんでした。でも青空から落ちてくるような白い滝は、奥日光の自然の素晴らしさを感じさせてくれる場所でした!

写真で紹介したいずれの場所も、冬山登山に相当する様々なリスクがあります。

相応の装備や技術などを要しますので、責任ある事業者によるガイドツアーに参加して楽しむことをおすすめします。

安易な判断で立ち入ることはおやめください。

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2019年03月05日南アルプスに残る氷河期の遺存種

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは南アルプスと氷河期に深い関わりがあることをご存じでしょうか?およそ200万年前から1万年前の間に、地球上で寒い時代があったと考えられています。これを「氷河期」と呼んでいます。最終氷河期は今の日本の年平均気温が7℃から9℃低く、南アルプス周辺は大陸と陸続きでした。この時代に寒冷な気候に生育していた植物が南下しました。気温が上がり、間氷期になるとこれらの植物は寒冷な気候を求めて、高緯度の北極近くに戻り、一部は標高の高いところに生育地を移しました。このような経緯をたどり、現在も生育している高山植物のことを『氷河期の遺存種』と呼ばれています。

参考:「南アルプス概論 山梨県版 -南アルプスの自然と人々の関わり-」南アルプス世界自然遺産登録山梨県連絡協議会 

今回は『氷河期の遺存種』にスポットライトを当てていこうと思います。

【キタダケソウ】

キタダケソウ キンポウゲ科

南アルプスを代表する『氷河時代の遺存種』であるキタダケソウ。6月中旬から7月上旬に白い花を咲かせます。北岳のみ生育している固有種です。世界中のどこを探してもここ北岳にしか咲いていません。1931年清水・諏訪氏が北岳で最初の発見をし、1934年に中井・原が清水・諏訪氏が採取した標本をもとに学名を付けたそうです。

【タカネマンテマ】

タカネマンテマ ナデシコ科

一度見たら忘れないこのフォルム。国内では南アルプスのみ生育しています。スイカのようなしましま部分は萼筒(がくとう)で、この萼筒の先端からピンク色の花弁がわずかに出ます。花をつけている時は萼筒が下を向いていますが、種子になり始めるとだんだん上を向いてきます。

【チョウノスケソウ】

チョウノスケソウ バラ科

7月から8月に白い花を付ける落葉小低木です。「チョウノスケソウ」という名前はロシアの植物学者マキシモビッチの助手である「須川長之助」が発見したことがきっかけで名付けられました。似ている花がいくつかありますが、チョウノスケソウはしわが多く楕円形の葉を付けています。

南アルプスの高山は冬の低温と季節風にさらされる大変厳しい環境です。近年問題となっている温暖化が『氷河期の遺存種』へどのような影響を与えてしまうのか、とても心配です。また、盗掘や踏み込みなどの人的要因も問題視されています。今回紹介した植物の採取は禁止されています。採ったり、傷つけることのないよう、観察するようにしてくださいね。

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2019年03月04日小笠原ネコプロジェクト企画展「おがにゃんプロジェクトの今」開催のお知らせ

小笠原国立公園 小笠原 倉上花子

みなさんこんにちは。

クジラの繁殖期真っ盛りの小笠原です。

私も先日ザトウクジラの大ジャンプを間近で見ることができ、

とてつもないパワーを感じました。

小笠原に来た方にはぜひ見ていただきたいものです。

さて、小笠原世界遺産センターでは、現在、小笠原ネコプロジェクト企画展

「おがにゃんプロジェクトの今」を開催しています。

小笠原ネコプロジェクトでは

環境省や林野庁、東京都、小笠原村、地元NPO法人などが連携、協働し

アカガシラアラスバトやカツオドリ、オガサワラオオコウモリなど

小笠原固有の野生生物をノネコの捕食から守るため

飼い猫の適正飼養の推進やノネコの捕獲などの取り組みを行っています。

また、捕獲されたノネコは船で内地に搬送され

動物病院を介してノネコから飼い猫として生まれ変わります。

今回の企画展では、そんな小笠原ならではのユニークな取り組みを

ポスターや映像等で紹介しています。

世界遺産センターの敷地内にあるネコの足跡をたどってみると・・・

「おがにゃんプロジェクトの今」発見!

お絵かきコーナーもあります。

この企画展は、4/1まで開催予定です(世界遺産センター開館日時:「おがさわら丸」入港中の9:00~17:00)。

小笠原ネコプロジェクトは、数多くの機関の協働で成り立っています。

小笠原にしかいない希少な野生動物、小笠原の自然を守りたい

というみんなの思いがつまった企画展です。

この時期のクジラと「おがにゃんプロジェクトの今」を見に

小笠原にぜひいらしてください。

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