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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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佐渡

141件の記事があります。

2019年01月31日佐渡の珍鳥5選

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

新潟県佐渡市はこの冬、雪が非常に少なく、例年よりも温かい日が続いています。


<佐和田海岸の夕日>


佐渡は日本海に浮かぶ島。海を渡ってやって来る渡り鳥たちの貴重な休息地・越冬地となっています。

今回は佐渡で確認された珍鳥5選をご紹介したいと思います。

1.【クロハゲワシ】 2017年12月 撮影

  学名:Aegypius monachus

  英名:Cinereous Vulture 

  全長:100~110㎝

2017年12月、佐渡では20年ぶりに飛来が確認されたクロハゲワシ(若鳥)。見たことのない大きさで、  飛んでいる姿は、まるで空飛ぶ畳!圧巻でした。クロハゲワシは、ヨーロッパ南部から中央アジア、チベット、中国東北部に広く分布していますが、日本への飛来は希な迷鳥です。お隣、韓国では、越冬しにやって来たクロハゲワシ保護のために餌付けが行われています。

2.【ハイイロガン】 2017年12月 撮影

  学名:Anser anser

  英名:Greylag Goose

  全長:75~90㎝

片脚を上げて加茂湖湖畔で休息するハイイロガン。2017年12月、佐渡では34年ぶりに確認されました。ハイイロガンは、オーストリアの動物行動学者、コンラート・ローレンツ博士が「刷り込み」を発見した種としても有名です。ヨーロッパ、中国北部などで繁殖し、アフリカ北部、ヨーロッパ西部、インド北部などで越冬します。ピンク色のくちばしがマガンとは異なる識別ポイントです。

3.【オオワシ】 2018年1月 撮影

  学名:Haliaeetus pelagicus

  英名:Steller's Sea Eagle

  全長:オス88㎝ メス102㎝

トビでもない、ミサゴでもない、大きな鳥が漁港にいる。と地元の方の間で話題になっていたそうです。日本では国の天然記念物に指定されており、環境省レッドリストでは、絶滅危惧II類に分類されています。ロシア東部で繁殖し、朝鮮半島・カムチャツカ半島、北海道・本州北部で越冬します。学名の「pelagicus」は「海の」を意味します。このオオワシの若鳥は、佐渡各地の漁港や海岸でたびたび確認されました。

4.【亜種 ハチジョウツグミ】 2018年1月 撮影

  学名:Turdus naumanni naumanni

  英名:Naumann's Thrush

  全長:24㎝


冬鳥として佐渡にやってくるツグミの群れの中に、1羽だけ赤茶色をしたツグミが。亜種、ハチジョウツグミでした。シベリア北部で繁殖し、中国北部で越冬します。ツグミは胸を張っているような姿勢が特徴的。小さいながらもピンッ!と背筋を伸ばして止まっている姿がなんとも愛らしい鳥です。もしツグミの群れを見かけたら、ハチジョウツグミが混ざっていないか探してみるのも面白いかもしれません。

5.【アカアシチョウゲンボウ】 2018年5月 撮影

  学名:Falco amurensis

  英名:Amur Falcon

  全長:27~30㎝

水田上空をホバリングする、ハトより少し小さい鳥を見つけました。サーっと降下し、水田横の杭にとまったところを撮影。アカアシチョウゲンボウでした。アカアシチョウゲンボウはウスリー、中国東北部などの限られた場所で繁殖し、アフリカ南部まで渡って越冬します。佐渡では5月、6月、10月の不定期に渡来記録があり、最近は観察例が増えているそうです。

さて、2019年はどんな鳥が佐渡にやってくるのでしょうか。今年も様々な鳥たちに出会えることを期待して、日々のトキのモニタリング業務に励んでいこうと思います。

~おまけ~

ハイイロガンと近藤の足跡

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2019年01月10日トキの求愛行動

佐渡 近藤陽子

皆様、明けましておめでとうございます。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

2019年最初の日記は、繁殖期(2~7月)に向けてトキ達が取る求愛行動を3つ、ご紹介したいと思います。

①枝渡し(えだわたし)

 トキは、気に入った相手がいると、小枝や草、枯れ葉や木の皮などを渡そうとします。相性が良ければ、一緒にくわえて遊ぶような行動をしますが、相性が悪いと、渡そうとしても逃げられてしまいます。

 よく似た行動で、枝をくわえて頭と翼を下げ、のっしのっしと大股で歩きながら別のトキを追いかけることがあります。これは、おそらく威嚇行動で、枝は威嚇の道具として使っているようです。

②相互羽づくろい(そうごはづくろい)

 お互い、相手の羽をくちばしで整える行為です。トキのくちばしは鋭く、ヌルヌルするドジョウをさっと捕まえることができます。人が指などを噛まれると、皮膚が切れることもあります。

 このように攻撃や威嚇にも使うことができるくちばしで相手に羽づくろいさせるのは、仲良しの証拠。羽づくろいされている側は、冠羽(かんう)と呼ばれる後頭部にある長い羽を逆立てていることが多いです。「気持ちいい」のサインでしょうか?

③擬交尾(ぎこうび)

 おしりとおしりがくっつき合わない、交尾に似た行為です。オスがメスの上に乗ります。擬交尾が見られた2羽は、ペアとなり繁殖を始めることが多いです。

 擬交尾(または交尾)の際、トキは独特な鳴き声を出します。「コオオ、コオオ、コオオ、ター!」とリズムがあり、「コオオ」と鳴いている間は、オスがメスの上に乗ってお互い頭を震わせながらくちばしをカチカチ当て合います。最後の「ター!」は、オスがメスの上から降り、擬交尾が終わった時の鳴き声です。

 たとえトキの姿が見えなくても、林の中からこの鳴き声がすれば、擬交尾していることが分かります。また、「コオオ」が長く続く場合は、オスがメスの上に乗っている時間が長いということ。擬交尾ではなく交尾の可能性が高くなり、産卵時期を推定するのに役立ちます。

トキにはトキ特有の様々な表現方法があり、それが読み取れるようになると、観察もより楽しくなります。

これからもトキとトキが暮らす佐渡の魅力をお伝えしていきます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。


~おまけ~

珍鳥 オオカラモズが、佐渡では25年ぶりに確認されました。(2018年12月撮影)

普段見かけるモズよりも一回り以上大きくて白っぽい体が大変美しく、印象的でした。

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2018年12月28日恋の季節到来!

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

この冬は例年よりも暖かい日が多く、平野部では雪がちらついてもすぐに溶けてしまっていました。今日は久しぶりに雪が降り、これから年末年始にかけて一気に冷え込む予報でやっと佐渡らしい冬になってきたようです。

▲草地で採餌するトキ のどに泥が付くくらい必死に餌を探していたようです

野生下のトキたちも雪で田んぼが覆われることがないため、広範囲に広がって採餌する様子が確認されています。そんな中で12月26日には今期の繁殖期初めてとなる「羽色変化」が確認されました。

▲羽色変化を行ったNo.320(4歳 オス)

トキは繁殖期になると首回りからはがれ落ちる黒い物質を水浴びの後にこすりつけることによって頭から背中にかけて黒灰色になる羽色変化を行います。繁殖期になると羽色を変化させる鳥の仲間は珍しくありませんが、皮膚のはがれ落ちによる着色を行うのは世界でもトキだけに見られる特殊な生態です。

▲こすりつけを行う様子 晴れや曇りの日中に行うことが多いです

この黒灰色になった羽は生殖羽とも呼ばれ、トキ自身が繁殖の準備ができたとアピールするためや、林の中で営巣する際に保護色になる等の役割があると考えられています。そのため、繁殖に参加しない今年生まれのトキは羽色変化が起きず白いままなので、これからの時期は成鳥(2歳以上)か幼鳥(今年生まれ)かが一目瞭然です。

そして、これからの時期ますます面白くなるのがトキの行動!


トキは非常に表現豊かな鳥で、繁殖期になるとペアとの相性を確かめるために様々な行動を取ります。ペアになりたい相手を見つけるとお互いに羽繕いをしてみたり、オスがメスの上に乗って擬交尾を行います。

▲相互羽繕いをするNo.B34(左・メス)とB38(右・オス)

両方とも2017年生まれ 成鳥として初めての繁殖期

トキは驚いたときや嬉しいときに頭の後ろの冠羽を逆立てます。

▲擬交尾をする No.A19(上・オス)と220(下・メス) 

2017年からペア歴3年目 

周りにいる今年生まれのトキたちに自分たちがペアであることを見せつけているようでした。

これから繁殖期に入りペアを探し始める時期ですが、毎年恒例のペアはちゃんとお互いを見つけ出して着々と準備を進めているようです。放鳥したトキと野外生まれの一部のトキには足環を装着していて個体識別を行えるため、去年と同じペアだなとか今年はより若いメスとペアになっている!などと個体の行動を追うことができますが、果たしてトキたちはどうやってお互いを認識しているのでしょうか。


長年トキを見ている人でも大きさやクチバシの長さでオスかメスの区別がつくくらいで外見だけではとても見分ける事ができません。私たちには見えないトキの世界もあるなと思いつつ、トキの繁殖行動を追いかけていこうと思います。

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2018年11月30日帰って来たNo.264

佐渡 近藤陽子

みなさま、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。


▲佐渡市外海府からの日本海 

新潟県佐渡市では、不安定な天気が続き、冬がもうそこまで迫ってきています。

 以前、No.264という個体番号が付けられ、本州に渡ったメスのトキについてお話ししました。このNo.264が、先日佐渡へ戻って来ました。

 11月17日(土)、No.264は、ねぐらとして使っていた富山県黒部市の神社にある池のふちで死んでいるのが確認されました。富山県で鳥インフルエンザの簡易検査が行われ、陰性を確認しました。そして死因を特定する解剖のため、佐渡へ送られてきました。

 264を見守って来た私たちには辛い現実でした。

 死因は溺死。しかし、どうして溺死に至ったのかまでは分かりませんでした。外傷はなく、健康状態も良好で、胃の中はエサで満たされていました。

  

▲解剖前の計測    
     

▲解剖開始

 No.264が冷たくなって佐渡へ戻ってきたことは本当に残念でしたが、死体が回収できたことは幸運でした。野生下でトキの死体を回収できることはほとんどありません。彼女の解剖から得られた知見は、今後のトキ野生復帰のために大いに活かされることでしょう。

 そして、これで本州からトキがいなくなったわけではありません。

 11月8日(木)、No.333という個体番号が付けられた2017年いしかわ動物園生まれのメスのトキが、新潟県長岡市にて確認されました。

日本海を渡り、本州へ飛来するトキの数は増えています。

 野生のトキを見たことがある方は多くはないでしょう。でも一度、大空を舞うトキを見ていただきたい。佐渡に来て4年経った今でも私は「こんなに美しい鳥が日本にいるのか」と感動を覚えます。

▲水田上空を飛翔するトキ

 人が暮らす里地里山の豊かな環境に生きるトキ。日本が誇るこの美しい自然と生き物たちが、この先ずっと見られる未来であってほしい。本州へ渡るトキたちが、多くの人の心に残り、自然へ関心を向けるきっかけになればと思います。

 No.333、これからどんな動きを見せてくれるのでしょうか。本州でも元気に過ごしていることを願っています。

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2018年11月19日マガンとヒシクイ

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

▲佐渡の「ふゆみずたんぼ」と大佐渡。遠くにコハクチョウが数羽下りています。(2018/11/13撮影)

 例年より暖かい日が続く新潟県佐渡市ですが、今年も冬の到来を告げる渡り鳥たちが佐渡へやって来ました。

 佐渡市では2008年のトキ放鳥開始に伴い、トキの餌場確保と生物多様性の米作りを目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を立ち上げ、生きものを育む農法を進めてきました。

 トキたちにとって暮らしやすい佐渡の環境は、遠くシベリアから渡来したこの野鳥たちにとっても貴重な越冬地・休息地となっているようです。

▲マガン、ヒシクイ、コハクチョウの3種類が、生きものを育む農法のひとつ「ふゆみずたんぼ」という稲刈り後も水をはった水田で採餌。

今回は、この3種のうちのよく似た2種、「マガン」と「ヒシクイ」の違いについてお話しします。

それではまず、写真をご覧ください。

こちらが「マガン」、

こちらが「ヒシクイ」です。

何が違うのでしょうか。

もっとも分かりやすい違いは「大きさ」です。

マガンのほうが小さく、ヒシクイは大きいです。

▲左がマガン、右がヒシクイ

マガンとヒシクイが一緒にいれば違いは一目瞭然ですが、一緒にいなかった場合、識別のポイントは2つあります。

一つは「くちばし」、もう一つは「おなかの模様」です。


【マガン】

くちばしはピンク色で、額からくちばしの根元にかけて白くなっている部分があります。

おなかには、黒の縞模様が入ります。

【ヒシクイ】

くちばしは黒く、先端近くにオレンジ色の帯が入ります。

おなかに模様はありません。

では、次の写真をご覧ください。

これは、マガンでしょうか。ヒシクイでしょうか。

額からくちばしの根元にかけて白くなっている部分がなく、おなかに黒の縞模様はありません。

でも、くちばしはヒシクイのように黒くなく、ピンク色をしています。

答えは「マガンの幼鳥」。

マガンは、成鳥と幼鳥とで色や模様が異なります。大きさはマガンの成鳥と同じくらいです。

 マガンの群れは東北地方から日本海側にかけて冬にシベリアから渡来します。もしマガンの群れを見る機会がありましたら、幼鳥を探してみるのも面白いかもしれません。

ちなみに、ヒシクイの幼鳥のくちばしは、成鳥と同じく黒色にオレンジの帯が入ります。

それでは、最後に復習です。こちらの写真をご覧ください。

マガン、ヒシクイ、どちらでしょう?答えは記事最後に記載しています。

 生きものを育む農法により、佐渡の水田には佐渡島固有種サドガエルを含む、多様な生きものが生息しています。人が管理する佐渡の水田は、トキだけでなく、こうした水田に生きる小動物から、遠く外国から渡って来る鳥たちまで、多くの生きものの命を支えています。

▲「ふゆみずたんぼ」で羽繕いするコハクチョウの群れ 

~参考~

【マガン】

英名:White-fronted goose

国の天然記念物に指定されており、環境省のレッドデータブックでは準絶滅危惧に指定されています。

【ヒシクイ】

英名:Bean goose

国の天然記念物に指定されています。

環境省のレッドデータブックでは、亜種ヒシクイが絶滅危惧II類に、亜種オオヒシクイが準絶滅危惧に指定されています。

答え:①マガン(成鳥) ②ヒシクイ(亜種オオヒシクイ) ③マガン(幼鳥)

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2018年11月14日中国からやってきました

佐渡 原奈緒子

こんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

今秋の佐渡は天気が荒れることが少ないので、いつもより長い間紅葉を楽しむことができます。

▲大佐渡スカイライン沿いの紅葉


さて、10月は佐渡トキ野生復帰10周年の記念式典があったことをご紹介しましたが、それに引き続き、もう一つ大きなイベントがありました。10月17日に中国から新たに2羽のトキがやって来ました。提供されたのはオスの「楼楼(ロウロウ)」とメスの「関関(グワングワン)」の2羽でどちらも2歳です。中国からのトキの提供は2007年以来の11年ぶりとなりました。

▲中国から送られてきたときの移送箱

底は3層構造になっていて、扉には通気窓があります。移送中、通気窓は布で覆われて光が入らないようになっていました。この箱に入った状態で中国から成田空港までは飛行機、成田空港から佐渡まではヘリコプターで運ばれてきました。

▲ヘリコプターにトキを乗せて、成田から佐渡まで運ぶ様子。

トキの獣医師と自然保護官らが同乗しています。

はじめの2週間は自主検疫のため野生復帰ステーションの収容ケージに2羽を隔離収容していましたが、問題ないとの検査結果が出たことから、10月30日にはそれぞれペアとなる個体と一緒に佐渡トキ保護センターの繁殖ケージに移されました。

▲日本の飼育番号が印字された足環を装着する様子(オスのロウロウ)

▲野生復帰ステーションとトキ保護センターは車で10分くらいの距離にあります

▲繁殖ケージにペアとなる個体と一緒に入ったメスのグワングワン(地面にいる方)

獣医さんがそっと見守り無事にケージへの移送が完了しました。

現在、日本の野生下には369羽のトキが生息していますが、元をたどると中国から送られてきた5羽のトキのいずれかの子孫になります。

・1999年 友友(ヨウヨウ)♂・洋洋(ヤンヤン)♀ 

来日した年に日本で初めてトキの人工繁殖に成功し「優優(ユウユウ)」が誕生

・2000年 美美(メイメイ)

 優優のパートナーとして来日

・2007年 華陽(ホワヤン)♂・溢水(イーシュイ)

この5羽に今回提供されたロウロウとグワングワンが加わることで日本のトキ個体群の遺伝的多様性の維持・向上が期待されており、来春の繁殖期に無事にヒナが生まれてくることを心待ちにしています。

また、今回のトキの提供を通して、トキは日本と中国の友好のシンボルであることを改めて実感しました。両国で進められているトキ野生復帰事業がますます発展していきますように。

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2018年11月06日海を渡ったトキたち

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

新潟県佐渡市では、紅葉が見ごろを迎えています。

▲赤玉線 2018/10/25撮影

「トキといえば佐渡」という印象が強いのですが、実は本州へもトキは飛来しています。

以前No.264というメスのトキが長野県安曇野市で確認されたことをご紹介しました(この個体は11月5日現在、富山県黒部市にて確認されています)。このNo.264の前にも、多くのトキが本州へ渡っています。

本州へ渡ったトキたちは、その後どうなったのでしょうか。

佐渡島から日本海を渡り、本州へ飛来したトキたちの一部をご紹介いたします。

※トキの生存扱いについて

6ヶ月以上未確認:行方不明扱い、1年以上未確認:死亡扱い

■No.03 (第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県、長野県、山形県、福島県、富山県

生存状況:2016年9月17日に佐渡市で確認されて以降、未確認のため、現在死亡扱い。

個体情報:下記No.04と姉妹。佐渡-本州間を1日で往復したり、繁殖期と非繁殖期で島内を広範囲に移動したりと、神出鬼没のトキで、出没する各地域でとても愛されていました。


▲2016年1月26日 雪の中でミミズを捕食したNo.03



■No.04(第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県、福島県、宮城県、山形県、富山県、福井県、石川県

生存状況:2016年9月11日に石川県輪島市で確認されて以降、未確認のため、現在死亡扱い。

個体情報:上記No.03と姉妹。初放鳥翌年の2009年から本州で確認されるようになり、1羽で本州各地を移動しながら生活していました。長期間滞在していた富山県黒部市では、愛称「トキメキ」として親しまれ、特別住民票を発行されるなど、佐渡にとどまらず、本州の多くの地域の方に愛されていました。人や車を恐れない度胸があり、電柱や屋根にとまるなど、他のトキでは見られない多くの奇抜な行動が印象的なトキでした。04が行方不明扱いになった時は、ニュースにも取り上げられ、多くの関係者がショックを隠せませんでした。

▲2009年3月26日 まだ佐渡島内にいた頃のNo.04



■No.A45(2016年4月に42年ぶりに野生下生まれ同士のペアから誕生し、巣立った「純野生トキ」のうちの1羽のメス)

本州飛来地:新潟県新潟市

生存状況:現在も佐渡で継続的に確認されている。

個体情報:2017年4月13、14日に新潟市で確認されたが、同日14日に佐渡でも確認されました。今後の繁殖のための本州視察だったのでしょうか。

▲2016年6月10日 間もなく巣立ちを迎えるNo.A45 



■No.269(第15回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県弥彦村、燕市、新潟市、三条市

生存状況:死亡確認

個体情報:放鳥された翌月に新潟県弥彦村で確認されましたが、放鳥2ヶ月後には、新潟県三条市内で死体となって確認されました。

▲2016年9月23日 放鳥当日のNo.269

 多くの鳥類で、メスはより良いオスを求めて、若い個体は新天地を求めて、広く飛び回ることが知られています。本州へのトキの飛来例は、現在までに23あります。そのうち17例がメスで、2例が1歳未満の若いオスでした。

 現在、本州で確認されている唯一のトキ、No.264。No.264が本州でも愛され、多くの人の記憶に残ってくれることを願います。そしていつか、本州でも大空を舞うトキの群れが見られる日が来ますように。


 

▲枯れスギのてっぺんにとまるトキと虹 2018/11/1撮影

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2018年11月01日雨上がりは山に行こう!

佐渡 原奈緒子

こんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

▲佐渡市新穂地区の刈田で羽繕いをするトキ8羽(2018年10月29日)

各地で紅葉シーズン真っ盛りとなりましたね。佐渡はあまり山のイメージがない方もいるかもしれませんが、最高標高の金北山(1,171m)がある大佐渡山脈と日本海側には小佐渡山脈があり山頂の方から色づく山々を平野から眺めることができます。

今年は秋の初めに通過した大きな台風の影響を心配していましたが、山に行くタイミングを調節するといつも以上に色とりどりの秋の山を楽しむことができます。 それは、「雨の後に行くこと!」です。カラッと秋晴れの日に青空に映える紅葉もとてもきれいですが、雨で葉がぬれている時の紅葉は一段とツヤがでて、深い色を楽しむことができます。雨にぬれた美しさは紅葉だけでなく、コケや石も同様です。昔は来客がある前に庭先に打ち水をして美しい庭を演出することでおもてなしをしていたそうです。昔の人は自然の良さを引き出す方法を知っていたのですね。

▲雨の後の乙和池 いつもよりも色鮮やかな景色になっていました(2018年10月27日)

当所があるのはトキの飼育施設でもある新潟県佐渡トキ保護センター 野生復帰ステーションです。こちらの施設は一般には公開していませんが、同じ施設内にある観察棟は一般公開しています。観察棟からは佐渡の豊かな自然環境を見下ろせる他、順化ケージや飼育ケージの様子をモニターでライブ中継しています。

▲観察棟と観察棟から望める国中平野

※観察棟公開時間

4月~11月 9時~16時30分

12月~3月 9時~15時 (冬季は積雪状況により閉鎖することがあります)

運が良ければ野生下のトキが飛翔する様子に出会えるかもしれません。観察棟へは駐車場から5分程度山道を歩いて向かいますが、右に左に目を向けると落ち葉に隠れた秋の花を見つけることができます。日本海側はこれから雨が多い日になりますが、雨と上手につきあって短い秋を楽しみましょう。

▲観察棟周辺で観察できる花や実がついている植物(2018年10月26日)

▲観察棟周辺で一番紅葉していたヌルデ(2018年10月26日)

ウルシの仲間は紅葉時期が早く、紅色が鮮やかです。

◇新潟県佐渡トキ保護センター 野生復帰ステーション

http://tokihogocenter.ec-net.jp/station/index.html

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2018年10月24日トキ野生復帰10周年!新人トキがんばれ!!

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

今年で佐渡でのトキの放鳥が始まってから10年が経ちました。10月14・15日に10周年を記念してトキの野生復帰10周年を記念した式典・フォーラム・放鳥式典が行われました。

放鳥式典は15日に行われ、11羽のトキが佐渡の大空に羽ばたきました。

放鳥式典には眞子内親王殿下にもご臨席頂き、トキの放鳥を行って頂きました。

▲放鳥式典会場にずらりと並ぶ放鳥箱

▲地元小学生によって放鳥されるトキ

私たちアクティブレンジャーはというと、式典会場から離れた見晴らしの良い場所で放鳥したトキに事故がないか、無事に飛べているかをモニタリングしていました。

▲放鳥トキの様子をモニタリングする職員

今回はハードリリース方式*で行われ、放鳥する場所としても初めての場所となりましたが会場の周りには先輩トキたちがたくさんいます。放鳥直後から田んぼや草地に降りて採餌を始めているのを確認できるほどでした。そして、放鳥から1週間も経たないうちに先輩トキの群れに合流して一緒にとまり木にいる様子も確認されています。

放鳥個体は事前に専用の広いケージで飛翔や採餌など自然に近い環境で十分な訓練を受けますが、飛び方を見るとまだまだ新人さんなのがわかります。

▲野外生活7日目の新人トキNo.354 おぼつかない着地(2018.10.22)

▲野生下生まれ2歳のNo.B06 華麗な着地 (2018.10.22)

放鳥されて佐渡の大空を飛ぶのはどんな気持ちでしょうか。仲間と訓練していた順化ケージが恋しくなったりもしているかもしれません。 それとも早速お気に入りのえさ場を見つけて他のトキたちと楽しく過ごしているでしょうか。新人トキたち、厳しい野生下でも無事に過ごしていけますように。これからも少し離れたところから見守っていきます。

*ハードリリース方式については6月28日掲載の「トキ放鳥(ほうちょう)までの道のり」をご覧ください。

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2018年10月18日トキの個体特性

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

▲今季初確認のコミミズク(2018年10月9日撮影)

 新潟県佐渡市では、トキの野生復帰の取組が進められており、佐渡の自然界に生息するトキの数は約370羽になりました。私たち、佐渡のアクティブ・レンジャーは、トキ野生復帰の取組を評価する上で重要な、トキのモニタリング(追跡調査)を行っています。日々トキを観察していると、いつの間にか1羽1羽の特性が頭に入ってきて、トキ観察の面白さにつながっています。



今回は、私たちの記憶に残るトキの一部をご紹介いたします。

■「ジャマイカくん」

個体番号:174(第10回放鳥、いしかわ動物園生まれのオス)

名前の由来:脚についている補助カラーリングの色が、ジャマイカを連想させるため(上から みどり・きいろ・あか)。

記憶に残る理由:足環の色はカラフルでおしゃれだが、メスにモテない控えめ草食系男子で、職員の同情を買っているから。


■「ぴみみ」と「きぴぴ」ペア

個体番号:212(第12回放鳥、佐渡の野生復帰ステーション生まれのオス)と237(第13回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

名前の由来:脚についている補助カラーリングの頭文字から(212:上からピンク・どり・どり、237:上からいろ・ンク・ンク)

記憶に残る理由:繁殖期になると突然姿を消し、山奥でこっそり繁殖している要注意ペアだから。

▲ぴみみ


▲きぴぴ
 

■「ろくちゃん」

個体番号:06(第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのオス)

名前の由来:個体番号から

記憶に残る理由:2008年の記念すべき第1回放鳥個体で、人のすぐ近くまで来てエサを食べるため、多くのスタッフに愛されたが、繁殖は一度も成功せず、トキのメスにはモテなかったから。2015年10月、残念ながら猛禽類に襲われ死亡が確認されました。


■「にひゃくじゅう」

個体番号:210(第12回放鳥、出雲市トキ分散飼育センター生まれのオス)

名前の由来:個体番号から

記憶に残る理由:放鳥後、ほかのトキが平野の水田やビオトープで確認されている中、トキがいるとは全く予想していなかった山奥のダム湖周りの林道へ下りて採餌する珍しい行動を取るトキだったから。2015年9月、残念ながら骨格と羽のみになって、いつも確認されていたダムから離れた海岸に死体が打ち上げられているところを発見されました。


 トキの個体特性を把握できる理由の一つに、トキにはそれぞれお気に入りのエサ場、お気に入りのねぐらがあることがあげられます。この地域に行くと、この番号のトキたちがいるだろう、と大方予想して私たちはモニタリングをしています。実際に私たちがモニタリングで使用しているトキの識別表も、地区別に分けられています。

 

▲トキ識別表

 佐渡のトキは約370羽にまで増え、今までトキが確認されていなかった場所でもトキが見られるようになりました。営巣場所も島内各所に広がり、すべての営巣場所を把握するのは困難です。しかし、日々トキをモニタリグすることで、私たちもトキが好みそうな場所がどのような環境なのかが分かってきました。私たちのモニタリング技術もトキたちによって磨かれていっています。

 

 トキの放鳥が始まって10周年。まだまだトキには未知の部分がたくさんあります。トキから学んだことを活かし、これからもモニタリングを続けていきたいと思います。

▲佐和田海岸からの夕日

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