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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

山奥に潜む滝

2015年08月28日
日光国立公園 櫨木 めぐみ

 日光は、お盆を過ぎてから秋のような気候です。しとしとと秋雨のような天候が続き、ぱったりと扇風機は不要になりました。今年は二十四節気の通り、"立秋"とともに秋に入った感じで、空気も雨も冷たいです。


 そんな秋雨が続く中、束の間の晴れ間が見えた日、滝の巡視をしてきました。その滝は、度々民間のガイドツアーなどで案内されてはいるものの、地図では名前が載る程度でルートが記載されておらず、歩道は整備されていません。そのため事前に情報を集め、当日は国土地理院の地図やGPSなどを持って、時間や地形図などを確認しながら足を進めました。

 一部歩きやすい区間もありましたが、途中からは不明瞭になり、有志の者による目印はあるものの見落としもしやすく、わかりづらくなっています。そのため、地図と現地の地形を頼りに確認をしながら足を進めることが何より大切になります。歩道として整備されていない分、人の気配もあまりないので、道中、無邪気な動きをする黄テンに遭遇したり、ツキノワグマの糞を発見したりしました。

 滝への道中は自ずと沢を上るのですが、沢なため地形の変化もあり、右岸や左岸を行ったり来たり、途中渡渉もあります。そして、ゴーッという音がする滝に近づく間際にはちょっとした岩場を上る場面も...。

 岩を上るとゴォォーッと、滝の音は大きくなります。それでも姿は一切見えないから不思議です。「カクレ滝」、その名のとおり岩に隠れていました。滝を見るために渡渉は必須。膝丈まで水に浸って正面に立つと、目の前に白い滝と美しいブルーの滝つぼが、小雨のようなミストと共に現れます。神秘的であり、どこか人を寄せ付けない雰囲気がありました。その姿を見届けると、足場や戻る方向など十分に注意を払って帰路につきました。

 涼しくなって活動しやすい時期になりますが、歩道整備の有無に関わらず、地図や必要な装備をもって自然の中へお出かけください。便利な機械もありますが、バッテリーや衛星状況などどうなるかわかりません。アナログな地図やコンパスも持つこと、使い方を知ることをお勧めします。クマの生息域でもあり、単独行動は避け、経験不足な方は経験のある方との同行やガイドツアーに参加するなどして、安全に楽しく自然を満喫して頂きたいです。


【おまけ】

 休憩中、成獣の雌ジカ1頭と出会いました。とても人に馴れており、自ら距離を縮めてくるほど。追い払うように近づいてもほとんど逃げません。真相はわかりませんが、何か餌付けされてしまった個体である可能性も否定はできません。もしそうなら、それは野生動物の彼女にとってはとても不幸なことです。休憩された後は、餌付けはもちろん、食べたものが落ちていないか、汁など捨てていない(汁ものは空いたペットボトルなどに入れてお持ち帰り下さい)か、周りにそのような落としものをしていないかお気をつけください。