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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2020年2月26日

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2020年02月26日トキが暮らす島

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

 新潟県佐渡市では、この冬ほとんど雪が降らず、最近では冬を感じる前に春が来てしまったような暖かい日が続いています。

<佐渡自然保護官事務所の敷地内でもフキノトウが>

 さて、「佐渡といえば朱鷺」と連想される方も多いかと思います。

 佐渡は、1981年まで日本産最後のトキが生息していた場所であり、現在も野生復帰の取り組みにより、約400羽のトキが佐渡の野生下で暮らしています。

 そうなんです。佐渡の野生下には約400羽ものトキがいるんです。

<木にとまるトキの群れ>

 どうしてトキはここまで増えることができたのでしょうか?

 佐渡の魅力でもあるその理由を3つお話します。

理由その1. 「佐渡の人々の思いによって長年トキの保護活動が行われてきた」

 トキは、江戸時代には日本各地で見られる種でしたが、明治に入り狩猟が盛んにおこなわれるようになると、次々と姿を消していきました。そして、農業の近代化によってさらに数が減り、1981年には佐渡で5羽が生き残るのみとなりました。日本最後のトキの生息地となった佐渡では、戦前からトキの保護が叫ばれ、佐渡の人たちは100年以上も前からトキの保護活動をおこなってきました。こうした佐渡の人たちのトキを思う気持ちによって続けられた長年の保護活動が、現在のトキの状況につながっています。

理由その2. 「佐渡の環境」

 佐渡市には、トキのエサとなる多様な生物が育まれる水田の確保を目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」というものがあります。トキは、浅い水辺でドジョウやカエル、水生昆虫などを食べていいて、水田はトキにとって欠かせない環境です。「朱鷺と暮らす郷づくり認証米制度」の水田では、畦畔の除草剤を使用せず、魚が行き来できる魚道(ぎょどう)を設置したり、夏場、水田を乾かす時期に、生きものの逃げ場となる「江」と呼ばれる深みを設置したりするなど、生きものを育む農法が採用されています。こうした水田はトキだけでなく、佐渡に渡ってくる希少な渡り鳥たちにとっても重要なエサ場となっています。

<佐渡の水田で確認された絶滅危惧種の鳥類>

 また、佐渡には水田などの水辺のそばに、トキがねぐらとして使ったり、巣をかけたりできる大木が育つ林があります。水田と林が入り交じって存在する佐渡の環境は、トキが暮らすのに適した環境と言えます。

<佐渡自然保護官事務所のある佐渡市新穂正明寺からの景色>

理由その3. 「トキとの共生の島」

 佐渡では、地域の人々のトキを見守り共生していこうとする意志や努力によって、トキが生息できる地域社会が築かれています。

<トキのエサとなる水田の生きものを調査・学習する授業>

<トキとの共生のためのルールが記載された看板>

今では、佐渡のあちこちで見られるようになったトキ。

その背景には、佐渡の豊かな自然環境と、人々の忍耐強く熱い思いがありました。

もし、佐渡でトキを見かけたら。

そんな背景があることを思い出していただけると幸いです。

<人の生活するすぐそばで暮らすトキたち>

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