関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

仙石原湿原植生復元区火入れ(箱根地域)

2021年02月09日
富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

仙石原湿原にある箱根湿生花園で実施された、「植生復元区火入れ」作業に参加をしてきました。箱根町が取り組む湿原性植物の保全活動の一環です。

【平成元年から実施しており、今年で32回目の火入れ作業でした。】

この取り組みは、夏に生い茂ったヨシやススキなどの枯草や、その中に隠れて成長したハンノキなどの樹木の幼木を、火をつけて燃やし、取り除く作業です。これらがその場にあり続けると、湿原は次第に森林へ変化していきます(遷移といいます)。そのため、仙石原湿原の維持にはこの火入れ作業が重要とされています。

ただ火をつけるだけの簡単な作業ではなく、その日の風向きを考えながら、あるいは燃えてはいけないところに火が付かないように十分気を付けながら、箱根湿生花園の職員の皆さんが真剣に作業に取り組んでいました。

実際に火入れ作業を手伝わせていただきましたが、顔が熱い!そして、意外と燃えません!

雨などを含んでいると、燃えにくいようです。火の様子を常に伺いながら進める、緊張感のある作業でした。

【事前に周辺への放水作業を行い、火事の防止に努めています。】

この枯草に火を付けるという作業が、なぜ湿原の維持につながるのか不思議に思いませんか?むしろ植物を全部燃やしてしまって、湿原性植物にも害があるのではと、考えてしまいます。しかし、今回面白い状態を確認することが出来ました。

【燃えた湿原の下の地面は、カチカチに凍ったままでした。】

今年は火入れの1週間ほど前に、雪と大寒波があり、足元の湿原も凍結した状態でしたが、火が通った後にもこの氷がほとんど解けていませんでした。このことからも火入れは、土中にほとんど影響を与えないと考えられます。

【燃え上がる炎の壁は湿原再生の第一歩です。】

【手前は火入れ終了後の湿原、奥は火入れをせずに森林化が進んだかつての湿原。】

今年も2時間ほどで無事に火入れ作業は終わりました。この状態から、次の春にどの様な湿原性植物が成長し、花開いていくのでしょうか。春が待ち遠しくなる、そんな火入れ作業でした。

今年は新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する緊急事態宣言が発令され、2年連続で箱根の観光名所となっている仙石原ススキ草原での火入れ作業は中止されました。植生復元区のみ、関係者で火入れを行っています。仙石原ススキ草原の火入れは、通常はビジターの見学が可能です。見学してみたいと感じた皆さん、是非来年以降の実施を心待ちにしてください。そして、その作業が「湿原保全活動」であることを知っていてもらえると嬉しいです。コロナ禍も過ぎ去っていることを祈りましょう。

昨年6月のヨシ刈り作業や、植生遷移についてはこちらをどうぞ⇒アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]_「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域) (env.go.jp) ※野焼きという表現が「火入れ」です。

箱根湿生花園は、神奈川県唯一の湿原「仙石原湿原」に隣接した箱根町運営の施設です。各地の湿原性植物を展示する植物園ですが、一方で仙石原湿原という特殊な地域の植生維持活動も実施し、ビジターが仙石原湿原の一部を見学できる施設です。※現在は冬季休館中です。

箱根湿生花園HP ⇒ http://hakone-shisseikaen.com/

 

※現在箱根ビジターセンターは臨時休館中です。詳細についてはHPをご確認下さい。

http://hakonevc.sunnyday.jp/index.html