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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

山梨県南巨摩郡早川町で行われた外来種「オオキンケイギク」の駆除作業の様子です。

「かつてのお花畑を」オオキンケイギク駆除作業

2025年06月27日
南アルプス国立公園 塩島惇美
ウコギが刺さって指先が痛い。
どうも南アルプス自然保護官事務所の塩島です。
大金鶏菊
南アルプスとオオキンケイギク(甲斐市釜無川より)

本題

先日、山梨県南巨摩郡早川町でオオキンケイギクの駆除作業が行われました。
場所は早川集落(早川町の「早川」という場所)と奈良田の河川敷。

早川町は「世界最古の温泉宿」があることでお馴染みです。
また第46代天皇、孝謙天皇が湯治に来たという言い伝えがあって、その孝謙天皇が起こしたと言われる奇跡の痕跡「奈良田の七不思議」という名所(現象?)もあります。

駆除前にオオキンケイギク講座

オオキンケイギクはその強靭な生態から在来種を追いやってしまい、その土地の生物多様性を激減させてしまいます。
駆除するときに気を付けなければいけないのは根っこ。
なんと根っこからしっかり取らないと、根っこを太くしてより深く強く根を張るようになるのだそうで。

意地でも駆除されてたまるものかという心意気を感じます。
いや、感心してる場合ではないですが、その生態そのものには感心しますね。
講座
他の植物を取らないように特徴を覚えます。
特徴
葉に切込み等が無く、丸っこい。白い毛がある。

140袋以上→23袋

この取り組みは2018年から続いており、今年で8回目。
当初は市町村の燃えるゴミ(大)で140袋(約700kg)ものオオキンケイギクを駆除しましたが、今回は23袋(115kg)とおよそ1/6近くにまで減少。

これは…すごい。

これだけ減ったのは、もちろんこのような活動が功を成しているということですが、普段からの町民の皆様の「想い」がありました。

「かつてのお花畑を見たい」

町民の皆様の想い

早川町は焼畑農業※の町で、日本の様々な在来種がとても繁茂しやすい環境でした。(日本の在来種は焼畑に強いのだそうですね)。
焼畑によって特定の植物相が占領することなく、季節になれば色とりどりの花が咲き、町民の皆様の目を楽しませていたそうです。
しかし、様々な要因で焼畑農業が行われなくなり土地が「荒れて」しまい、さらに鹿も増え、外来種が増え、お花畑はだんだんと姿を消していっています。

「自分たちがかつて見た景色をもう1度見たい。」

そんな想いから、町民の皆様は日常生活の中でもオオキンケイギクを見つけたら駆除。
そして「駆除で終わりではなく、この先の未来も」と、今ある在来種を増やしたり、呼び込もうと様々な試みをしているのだそうです。

※この「焼畑」とは、日本古来より行われていた畑と森林の輪作のようなもので、農地開発的な意味とは異なります。
強い根っこを持て!
集落内に生えていた草原性植物トダシバ。埼玉県の戸田原に沢山あったからトダシバ。土の保持力が強く、オオキンケイギクのように在来種を追いやることがないという植生再生の救世主。
南アルプスのお花畑も、また色とりどりのお花たちが咲き誇り、それが長く続くことを祈って今日も仕事をがんばります。

※掲載に際して早川町観光協会様より許可をいただいております。ありがとうございます!