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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

父島・高山を歩く ―とある植物巡視の半日

2025年07月22日
小笠原 河村雅史
みなさん、こんにちは。
小笠原自然保護官事務所の河村です。今回は、植物巡視の様子を紹介します。

植物巡視とは

植物巡視は、小笠原事務所のアクティブ・レンジャーが定期的に行っている業務の一つで、決まった植物個体の生育状況確認・記録の作成や、定点での写真撮影を行います。毎年同じ時期のデータを収集し、生育状況を継続的に追っています。

高山について

今回の行先は、父島の南西部にある高山です。高山の標高は228.4m。中央山(319.4m)や躑躅山(つつじやま・299.2m)などと比べても、父島島内で際立って標高の高い山ではありませんが、海沿いで独立しているようにも見える姿は、「高山」の名前にふさわしい風格を感じさせます。
高山(ははじま丸より)
高山(ははじま丸より)
高山(洲崎より)
高山(洲崎より)

巡視スタート

出発は小港園地の駐車場から。まずは八瀬川沿いの道を進み、小港海岸入口に設置された靴裏洗浄マットと木酢液でプラナリア類が付着している恐れのある靴裏の消毒をします。利用者カウンタもあります。人数分の石を目的地の名前の書かれた筒に入れてから、指定ルートに入山します。
小港海岸設置の利用者カウンタ
小港海岸設置の利用者カウンタ

高山へ向かうには、まず中山峠という展望の開けた峠を目指します。そこから再び標高0mのブタ海岸まで下るため、行きも帰りもアップダウンがあり、標高の割に歩きごたえのあるルートです。ブタ海岸の浜辺を歩き、川を渡ったら高山の斜面に取りつきます。
ブタ海岸
ブタ海岸

途中の分岐でジョンビーチ方面の道と分かれ、もう一息上ると高山の山頂に到着です。

高山山頂からの絶景

高山の山頂からは、南島周辺の沈水カルスト地形を一望できます。父島の南西部には、南島と同じく石灰岩の地層が広がっていることがよくわかります。天気が良かったこの日は、父島や兄島の山々のほか、母島、姪島、妹島まで見渡すことができました。アオノリュウゼツランの花も見られました。
父島南西部、南島瀬戸、南島の風景
父島南西部、南島瀬戸、南島の風景
海の向こうに見える母島列島(左から姪島、妹島、母島)
海の向こうに見える母島列島(左から姪島、妹島、母島)

アオノリュウゼツランの花
アオノリュウゼツランの花

植物巡視

ここから、植物巡視の作業開始です。ウラジロコムラサキの、開花・生息状況確認と、定点撮影を行いました。ヤギ・ネズミ食害対策で設置しているネットの補修も行いました。
巡視作業の様子
巡視作業の様子

植物の巡視を終えて高山に戻ると、ちょうどおがさわら丸が二見湾の入口に進んでいく様子を眺めることができました。
野羊山沖を航行するおがさわら丸
野羊山沖を航行するおがさわら丸

高山の植物

高山へのルートは村民パスや、ガイドの同行なしでも通行可能な遊歩道となっています。美しい景色とともに、固有植物もいろいろ見られるので、父島の自然を身近に体感できるおすすめのコースです。
オオバシマムラサキ
オオバシマムラサキ
ハツバキ
ハツバキ

夏のハイキングの注意点

この日は快晴で、絶好の巡視日和というには暑すぎるくらいでした。夏にこのルートをハイキングされる方は、途中に水の補給地点がないため、水は余らせるつもりで多めに持っていくことをおすすめします。そして今回持って行ってよかったと感じたアイテムは、偏光レンズ入りのサングラスです。まさにボニンブルーの海の色がとても美しく見えました。
縦島
縦島

おまけのおはなし

最後に、ちょっとした余談を。中山峠からブタ海岸へ行く道の途中、ふと高山の右肩あたりから、なにかに見つめられているような気配が……。
高山の斜面に注目
高山の斜面に注目

マイマイみたいに見える木
マイマイみたいに見える木

私はこの木々の組み合わせがマイマイ(カタツムリ)に見えて仕方がありません。高山方面に行くときのひそかな楽しみの一つです。
皆さんもぜひ探してみてくださいね。

小笠原世界遺産センター公式Instagramのご紹介

小笠原世界遺産センターのInstagramに、今回の巡視の様子を動画で投稿しています。
ぜひご覧ください!
小笠原世界遺産センター公式Instagram