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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

令和4年 富士山開山期に巡視中に出合った自然の豊かな表情や人々の営みを写真でご紹介

この夏、富士山で出逢った景色

2022年10月26日
富士五湖 半田尚人
こんにちは!富士五湖管理官事務所の半田です。
3回シリーズで今年富士山で出逢った自然を振り返ってご紹介していますが、最終回は景色編です。開山から閉山までの間、様々な場所、様々な時間帯、晴れの日、雨の日、様々なシチュエーションで自然の豊かな表情や人々の営みを目にすることが出来ました。そんなシーンの数々を切り取って見ていきたいと思います。

開山まであと少し

山梨県側の吉田ルートは7月1日から開山となりますが、開山前の6月下旬のある日、山梨・静岡両県による登下山道の安全調査に環境省も同行しました。例年、登下山道調査のタイミングでは登山道の雪は融けていることが多いのですが、今年はこのタイミングではまだ雪に覆われており、この数日後に雪解けとなりました。開山期間中の登山者の安全を願いながら一歩一歩進みます。
開山まであと少し (6月下旬 開山前 両県合同登下山道調査にて)

雪が残る山頂

先の写真と同日、6月下旬の登下山道調査より山頂火口の様子です。あと数日で7月の開山ですが、山頂はギリギリまで雪に閉ざされているのです。年によっては静岡側も開山する7月10日以降にも山頂に雪が残り、お鉢巡りが全面開通するのが数日遅れることもあります。
雪が残る山頂 (6月下旬 開山前 両県合同登下山道調査にて)

ダイナミックな雲と影富士

次の写真は一気に飛んで9月。閉山間近のある日の夕暮れ時です。前日の台風通過の影響でダイナミックな雲海が広がり、その白いスクリーンに黒い影富士が投影される光景に遭遇。そのあまりにも素敵な光景に多くの登山者が魅了されていました。自然の大きな力を感じます。
ダイナミックな雲と影富士 (9月上旬 吉田ルート八合目より)

ダケカンバの小径

富士山の標高2,000~2,500m付近では、ダケカンバの森が広がり、須走ルートの六合目付近ではダケカンバの森を縫うように登山道が延びています。雪の重みで幹が曲がりながらも懸命に生きている木々に囲まれた中だと、静寂の中、自然が語りかけて来る言霊(ことだま)と対話をしながら登っている気分です。
ダケカンバの小径 (7月中旬 須走ルート六合目より)

Night View

こちらは吉田ルート八合目から見た夜景です。手前は富士吉田市の明かり、奥の方の黄色くぼんやりと光っているのは都心の明かりです。そして空に目を向けると星座が広がります。山頂での御来光を目指す登山者たちはこの景色を背に、登山者の足音と自分の息づかいを耳にしながら、黙々とヘッドライトの明かりを頼りに登って行くのです。
Night View (9月上旬 吉田ルート八合目にて)

川の如し

自然を感じられるのは晴れた日ばかりではありません。雨の日もまたしかり。富士山はスコリアなどの火山噴出物が表面に堆積した山。雨が降っても水は地面に染み込んでしまうため富士山には川はありませんが、台風などの大雨が降れば話は別。道もまるで川のように土砂を削って押し流します。自然の力を感じます。
川の如し (8月中旬 泉ヶ滝付近にて)

早朝の虹

次にご紹介する御来光の時に一緒に撮った一枚です。山頂付近は笠雲に覆われ、雲の水滴がプリズムとなって素敵な虹を演出してくれました。こういった刻々と変わる自然の表情を現場で見るのが山登りの醍醐味の一つです。長引くコロナ禍で世界中が大変でしたが、世界の努力が未来に繋がる「架け橋」となって欲しいですね。
早朝の虹 (9月上旬 吉田ルート本八合目にて)

雲間の御来光

当初は富士山頂で御来光を拝む計画でしたが、前日夕方の天候から、御来光の時間は山頂が雲に覆われると判断。本八合目で御来光となるように調整して出発しました。読みは見事に当たり、雲間から素晴らしい御来光を拝むことができました。必ずしも山頂での御来光が最高とは限りません。天候を見極めた行動が大切です。
雲間の御来光 (9月上旬 吉田ルート本八合目にて)

火祭りの夜

「風景」という意味では、富士山の上の方ばかりが主役ではありません。富士吉田市の富士講の御師の家が建ち並ぶ、金鳥居から北口本宮浅間神社までの通りで8月26日に開かれる火祭りは「日本三大奇祭」に数えられ、富士山信仰や富士講の習俗なども色濃く反映した祭礼のため、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
火祭りの夜 (8月下旬 富士吉田市内にて)
いかがでしたか。3回に渡ってお届けしてきましたが、富士山で出逢った様々な動植物や光景で、多彩な富士山の表情を垣間見ることができました。富士山の自然・文化の魅力が少しでも伝わったなら、ご紹介して良かったなと思います。

さて、これから日に日に寒くなり、12月に入る頃には六合目以上はすっかりと雪に閉ざされ、厳冬期となります。ここで改めてのご注意です。開山期間以外にも登山者の利用が見られ、厳しい気象条件の下、毎年多くの遭難事故が発生しています。このため、山梨県では、「山梨県登山の安全の確保に関する条例」により、次のとおり登山計画書の提出を義務化しています。また、富士山における適正利用推進協議会(事務局: 環境省・山梨県・静岡県) では夏山期間以外における注意事項を定めた「富士登山における安全登山のためのガイドライン」を策定しています。
厳冬期に限らず、閉山期の富士山は、夏と違ってほぼ全ての山小屋は閉鎖され、森林限界以上は吹き曝しの極限環境で極寒暴風の世界であり、充分な知識・技術・経験・体力、そして、しっかりとした装備・計画を持ったエキスパートにしか許されない山へと変貌することをご理解下さい。

冬の間には、ぜひ、美しい富士山が眺められる素敵なトレッキング・コースをご紹介したいと思っていますので、そちらをご期待下さい。そして、来年の夏、再び、たくさんの元気な笑顔が富士山で見られることを楽しみにしております。 ~最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
<過去の記事>
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