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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、日光、尾瀬、秩父多摩甲斐、小笠原、富士箱根伊豆、南アルプス国立公園があります。

【お知らせ】天城の登山道改修整備を行っています!

2025年09月22日
下田 遠藤亜美
みなさま、こんにちは。下田管理官事務所の遠藤です。
 
時の流れは早いもので、あっという間に9月がやってきました。
9月といえば、なんとなく “秋”のイメージを持っていたのですが、近年はそういうわけでもなさそうですね。
 
「やれやれ、涼しくなったわー(^^♪」
と、油断したところにやってくる真夏日には、今年も散々振り回されました。

そんな下田事務所で今夏のMVPに輝いたのは“ホ・レイザイ選手”“セン・プーキ選手”

…彼らの力なしには越えられない夏でした。もはや戦友と呼んでも差し支えなさそうです。
涼しくなるまでもう少し、一緒に頑張っていきたいと思います。
 
——さて、今回の日記では“天城山の登山道改修整備”についてお知らせいたします。

1.実施区間


今回の工事区間は地図の赤線部分です。
シャクナゲコースの一部(万二郎岳の周辺)が該当します。

2.現状


▲複線化した道に張られたロープ


▲滑りやすく、段差の大きい岩場

「天城の登山道は荒れていて歩きづらい」
着任して間もない(半年以下)私ですが、様々な立場の方からこのようなお話を伺いました。(百名山なのに…なんて呟きも何度か聞きました。)
また、私自身も実際に何度か歩いてみたのですが、確かにそう思わざるを得ない道でした。
 
一体、なぜこうなってしまったのか。
これには、天城の地形が関係していました。

3.豊かさゆえに…

海からの湿った空気がぶつかり、雨雲が形成されやすい場所であることから、降水量の多さは日本屈指の天城エリア。
なんと、年間降水量日本一を記録したこともあるそうです。
 
そんな場所だからこそ、雨による土壌の流出は極めて激しく、木製階段のハードル化や杭の露出が目立ちます。
また、荒れた道を避けようと迂回される回数も増え、登山道が複線化してしまったり、植生破壊が進んでしまったりなどの課題も多々。
天城の登山道は歩きづらい、と言われてしまう原因はここにあったのです。


▲見るも無残なこの姿…

4.通行状況と工事区間


▲ハイカー駐車場から四辻へ向かうまでの道
 
さて、ここまでお読みになり、天城に興味を持ってくださった人の中で、こう思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
「えっ!?工事しているなら、登山はできないってこと?」
 
…答えはNO!その心配は必要なく、登山は可能です♪
 
ただし、場合によっては工事箇所を迂回したルートでの通行をお願いすることもございます。
現場では作業員の方々の指示に従って登山をお楽しみいただけますよう、みなさまのご協力をお願いいたします。
 
なお、現場にある看板では工期が“2025年12月5日まで”となっていますが、こちらはあくまで目安です。
工事の進捗によってはもう少し早く終了する可能性もあります。

5.整備の様子


現在、整備区間にはブルーシートの覆われた謎の設置物があります。
これは何かというと、登山道補修に使う資材です!


▲中には大量のヤシロールやかご枠が!
 
資材の山は複数設置されていますが、それらはすべて作業員さんたちが人力で運んだものです!
酷暑の中、汗を流しながらコツコツと運んでくださった作業員の方々には頭が下がる思いです。

▲かご枠の網目が、登山靴の底にある凸凹にひっかからないよう、土を多めに載せてくださっているとのこと!
 
また、こちらは実際にかご枠とヤシロールを使って補修された登山道の一部です。
ひとつひとつの補修は植生と登山者の双方に配慮されたものであり、作業員さんたちの大変な労力と創意工夫が隠されています。

6.おわりに

天城山が抱える課題と登山道改修整備の様子、いかがでしたでしょうか。
 
地球が創ったままの原生的な自然ももちろん魅力的ですが、人々とともにある自然にもそれとは違う良さがあり、その両方を見られるのが国立公園です。
また、天城も例外ではありません。
 
しかしながら、一度人の手が加えられた環境は人がいないと成り立たないものになってしまうのも事実で、その最たる例が登山道管理であります。
山積みの課題に対してどのように向き合っていけばいいのか、正直なところわからないことだらけで、まだまだ勉強中です。

とはいえ、自然と携わる仕事の中ではたくさんのヒントを得られますし、いつかはそんな気づきを自然に還元できるような人間になれたら…なんて夢見ている今日この頃。 
アクティブ・レンジャーとして活動する中での葛藤や成長の過程も、この日記で発信していけたらと思いました。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに♪
【おまけ】

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静まりつつあるセミたちと、時折聞こえる鈴虫の声。

萎れかけの向日葵と、秋の訪れを思わせるまばらな紅葉。

青空に映える入道雲と、高く晴れた空に浮かぶうろこ雲…。

 
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自然界では異色の共演が続いていますが、これも季節のバトンタッチだと思えば、残暑のことも少しだけ好きになれるかもしれません。

四季の変化に対する感覚を研ぎ澄まして、近々来る秋も楽しんでいきたいと思います!😆
遠藤のプロフィールはこちらからどうぞ🐤