父島アクティブ・レンジャー、姪島へ

2025年09月08日

小笠原河村雅史

皆さん、こんにちは。
小笠原自然保護官事務所の河村です。
小笠原国立公園には、父島と母島に１つずつ事務所があります。日頃から連携して業務を進めていますが、必要に応じて職員が行き来することもあります。今回の出張の目的は、姪島におけるネズミ根絶に向けたドローンによる殺鼠剤の空中散布の試験になります。姪島には、崖際など殺鼠剤の手撒きを行えない場所があり、そうしたエリアに殺鼠剤を散布する方法として、ドローンを利用しました。上記の活動に、父島のアクティブ・レンジャーが母島へ出張し、参加した様子をご紹介します。

出張・移動の流れ

父島から母島までは船でおよそ２時間。ははじま丸に乗って向かいます。
母島は、ははじま丸が到着する沖港を中心に集落があります。町の中心部には生鮮食品を扱うお店が集まっており、基本的には、徒歩圏内で生活をすることができます。
環境省の母島自然保護官事務所は、港から徒歩2～3分の静沢地区にあります。事務所内には宿泊設備があり、今回はそこで滞在しました。母島事務所には3名の職員が常駐していますが、出張者が加わり5~6人程度の体制で臨みました。

現場までの道のり

作業当日は午前4時30分に事務所を出発。船に乗る前には、履物や荷物に母島の生物が付着していないかを入念にチェックします。船に揺られること１時間ほどで、姪島の上陸地点に到着します。船は沖に停泊して、その先は小型の伝馬船に乗り換えて石が転がる浜に上陸します。浜で装備を整えて、すぐに作業地点へ移動開始です。台地に上がるころにはすでに汗びっしょりです。

現場までの道のりは、多様な景観が現れます。崖際の急坂やトラバースに始まり、土や岩が露出した裸地、乾性低木林を縫うように進みます。沢沿いにはタマナを中心とした薄暗い森があり、島の東部に至るとオガサワラススキが広がる草原植生が現れます。リュウゼツランがたくさん花や実をつけている様子、赤色の砂が露出した裸地がパッチ状にいくつか広がる景観は、姪島に独特な雰囲気を与えています。一方、植物の基本構成は小笠原諸島全体で大きく変わらないためか、普段私が父島列島で見ている植物種も多く見られたのは興味深かったです。

ドローン作業のサポート

サポート役は、バッテリーや殺鼠剤の運搬のほか、殺鼠剤散布装置への装填、船との無線連絡などを担当します。ドローンは姪島島内から離発着しますが、送信機とドローンの間に障害物がある場合、操縦が不可能になるため、海岸沿いを飛ばす場合、陸地から離陸させた後に操縦権限を船上の操縦者へ移し、そこからドローンに搭載したカメラの映像を確認しながら散布地点に投下をします。

印象に残ったこと

母島島内への出張は何度か経験がありましたが、姪島を含む母島属島（母島の周辺に点在する無人島）を訪れるのは初めてでした。出発前は少し緊張していましたが、現地では野生のオガサワラカワラヒワにも出会うことができ、貴重な経験となりました。

台風が南方海上を通過した影響で、2日間は海が荒れて渡島できませんでしたが、私が姪島に上陸できた日はドローンの飛行に適した真夏らしい安定した天候に恵まれました。暑さの中での作業は厳しい部分もありましたが、無事に終えた安堵感はその分だけ大きく感じました

小笠原世界遺産センター公式Instagram

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