
アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。母島の外来種を知ろう!母島外来種ツアー ~動物編~
2025年10月03日
母島
外来種は…お好きですか?
外来種と相対するマイライフ。
母島自然保護官事務所の那須です。
皆さんは母島に来たことがありますか?
母島には多くの外来種がいます。すべての外来種に問題があるわけではありませんが、外来種の中には繁殖力が高く生態系への影響が問題視されるような種もいて、一方固有種の多くは昔より数を減らしています。もし母島にお越しになって、見たこともない変わった生き物を野外で見かけたとしても、それは実は外来種かもしれません。
これもまた小笠原の一面に違いないので、「外来種ばっかり……」とガッカリするより、ガッツリ興味を持ってみてはいかがでしょうか。その生態、問題視される理由、定着にいたる経緯など、調べてみれば興味深いことがたくさんあります。
母島で見られる代表的な外来種のうち今回は動物をご紹介し、外来種を通して母島が直面している問題をお伝えしたいと思います。
グリーンアノール
小笠原の外来種といえばコレ!アメリカ原産のトカゲで、小笠原父島・兄島・母島のほか沖縄本島・座間味島にも定着しています。特定外来生物に指定されており、飼育や生きたままの持ち運びが禁止されております。
名前にグリーンとつきますが、カメレオンのように変色する能力があるため、緑色だけではなく茶色の姿もよく見かけます。首の下にある赤い器官を伸ばして威嚇します。
名前にグリーンとつきますが、カメレオンのように変色する能力があるため、緑色だけではなく茶色の姿もよく見かけます。首の下にある赤い器官を伸ばして威嚇します。
小笠原の各地で見かけるゴキブリ用の市販の捕獲機のようなこの赤い装置は、グリーンアノールを捕まえるための粘着トラップ。
昆虫を食べるグリーンアノールはオガサワラシジミや固有のトンボ類等を絶滅ないし絶滅寸前に追いやってしまったため、環境省では粘着トラップを取り付けて駆除することで、これ以上被害が大きくならないように努めています。
昆虫を食べるグリーンアノールはオガサワラシジミや固有のトンボ類等を絶滅ないし絶滅寸前に追いやってしまったため、環境省では粘着トラップを取り付けて駆除することで、これ以上被害が大きくならないように努めています。
オオヒキガエル
南米原産のヒキガエルで、もとはサトウキビの害虫駆除のために日本に持ち込まれました。世界の侵略的外来種ワースト100にして特定外来生物です。
両生類の多くは海水に弱いのですが本種は海水に強いため、学名はRhinella marinaで、「海の」という意味のラテン語marinaが付きます。虫や小型の動物などを幅広くたくさん食べます。
耳腺から強い毒を出すため天敵がいないのか人を恐れず、人が近づいても逃げずに踏まれることもありますが、体が丈夫なので成人男性に踏まれても平気そうにしています。
恐れを知らない堂々とした風格にたくましい生命力、健啖、毒持ちというラフ、タフかつワルなスタンスに、個人的にはある種のロマンを感じますが、よく食べる分生態系への影響が大きく、オタマジャクシも毒を持つため水源を汚染する恐れもあるなど、外来種としてはかなり厄介な性質と言えるでしょう。
(参考:オオヒキガエル / 国立環境研究所 侵入生物DB)
夜の集落付近を歩けば比較的簡単に見つかります。母島ではかつて南崎の蓮池で繁殖が確認されたため、蓮池にオオヒキガエルが侵入しないように柵を設け、現在定期的に蓮池内にカエルが発生していないか確認しております。
余談ですが、本土に居る在来のヒキガエルにも天敵が居ないのかというと、実は居ます。ヤマカガシという毒ヘビが天敵で、食べたヒキガエルの毒を溜めて自分の毒として利用します。
(参考:ヒキガエル由来防御用毒性ステロイド bufadienolide 類を蓄積するヘビ・ヤマカガシの化学生態学的研究)
またオオヒキガエルは八重山諸島にも定着していますが、石垣島と西表島に住むカンムリワシはオオヒキガエルを食べる姿がたびたび確認されており、最近の研究ではヤマカガシと同じくヒキガエルの毒に耐性があるのだとか。
(参考:カンムリワシはなぜ有毒外来種を捕食できるのか―毒耐性遺伝子の進化的背景― 京都大学野生動物研究センター)
両生類の多くは海水に弱いのですが本種は海水に強いため、学名はRhinella marinaで、「海の」という意味のラテン語marinaが付きます。虫や小型の動物などを幅広くたくさん食べます。
耳腺から強い毒を出すため天敵がいないのか人を恐れず、人が近づいても逃げずに踏まれることもありますが、体が丈夫なので成人男性に踏まれても平気そうにしています。
恐れを知らない堂々とした風格にたくましい生命力、健啖、毒持ちというラフ、タフかつワルなスタンスに、個人的にはある種のロマンを感じますが、よく食べる分生態系への影響が大きく、オタマジャクシも毒を持つため水源を汚染する恐れもあるなど、外来種としてはかなり厄介な性質と言えるでしょう。
(参考:オオヒキガエル / 国立環境研究所 侵入生物DB)
夜の集落付近を歩けば比較的簡単に見つかります。母島ではかつて南崎の蓮池で繁殖が確認されたため、蓮池にオオヒキガエルが侵入しないように柵を設け、現在定期的に蓮池内にカエルが発生していないか確認しております。
余談ですが、本土に居る在来のヒキガエルにも天敵が居ないのかというと、実は居ます。ヤマカガシという毒ヘビが天敵で、食べたヒキガエルの毒を溜めて自分の毒として利用します。
(参考:ヒキガエル由来防御用毒性ステロイド bufadienolide 類を蓄積するヘビ・ヤマカガシの化学生態学的研究)
またオオヒキガエルは八重山諸島にも定着していますが、石垣島と西表島に住むカンムリワシはオオヒキガエルを食べる姿がたびたび確認されており、最近の研究ではヤマカガシと同じくヒキガエルの毒に耐性があるのだとか。
(参考:カンムリワシはなぜ有毒外来種を捕食できるのか―毒耐性遺伝子の進化的背景― 京都大学野生動物研究センター)
ノネコ
どこでも見かけるかわいいネコも、実は世界の侵略的外来種ワースト100。母島では警戒心の弱いカツオドリやアカガシラカラスバトのような鳥類を捕食してしまうため、ノネコを捕獲したり、海鳥の営巣地にノネコの侵入を防ぐための柵を設けたりといった対策を続けています。
もし母島でノネコを見つけたら、捕まえずに時間と特徴と場所を控えて、ははじま丸待合所の母島観光協会にあるノネコ目撃情報シートにご記入いただくか、環境省母島自然保護官事務所(04998-3-2577)までご連絡ください。いただいた情報はノネコの捕獲に活かし、捕獲したノネコは本土に送った後、里親を探します。
もし母島でノネコを見つけたら、捕まえずに時間と特徴と場所を控えて、ははじま丸待合所の母島観光協会にあるノネコ目撃情報シートにご記入いただくか、環境省母島自然保護官事務所(04998-3-2577)までご連絡ください。いただいた情報はノネコの捕獲に活かし、捕獲したノネコは本土に送った後、里親を探します。
アフリカマイマイ
デカァァァァァいッ説明しよう‼
世界最大のカタツムリで、小笠原には1930年代に薬用として持ち込まれました。 その後米軍統治や津波による増減を経て、現在では減少傾向にあるようです。世界の侵略的外来種ワースト100。集落周辺では殻長8 cm程度のものを多く見かけますが、母島でも石門の方ではさらに大きな貝殻を見かけます。
ここで注意ですが、アフリカマイマイを宿主とする広東住血線虫は人間にも寄生し、死亡例もあるため、絶対に素手では触らないようにしてください。
繁殖力が強く在来の植物を食べることや、在来の動物とも競合することから生態系への影響が大きく、また農作物の食害や、先述の広東住血線虫のリスクもあります。
小笠原では陸生の大きなヤドカリ、オカヤドカリが殻を背負う姿が頻繁に目撃されます。
世界最大のカタツムリで、小笠原には1930年代に薬用として持ち込まれました。 その後米軍統治や津波による増減を経て、現在では減少傾向にあるようです。世界の侵略的外来種ワースト100。集落周辺では殻長8 cm程度のものを多く見かけますが、母島でも石門の方ではさらに大きな貝殻を見かけます。
ここで注意ですが、アフリカマイマイを宿主とする広東住血線虫は人間にも寄生し、死亡例もあるため、絶対に素手では触らないようにしてください。
繁殖力が強く在来の植物を食べることや、在来の動物とも競合することから生態系への影響が大きく、また農作物の食害や、先述の広東住血線虫のリスクもあります。
小笠原では陸生の大きなヤドカリ、オカヤドカリが殻を背負う姿が頻繁に目撃されます。
オカヤドカリは海辺から離れた山中でも見かけます。わざわざ海辺に戻り手頃なサイズの貝殻を探す労力に比べると、山に数多く転がっているアフリカマイマイの大きな殻はオカヤドカリにとって都合が良いのでしょうか。アフリカマイマイの移入に伴ってオカヤドカリ自体が巨大化したという報告もあります。
(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pronatura/29/0/29_262/_pdf/-char/ja
「バズった生きもの大調査SP」~外来種が天然記念物を巨大化させた!~ - ダーウィンが来た! - NHK)
殻はオカヤドカリが本来利用する海貝の殻より脆く、踏めば簡単に砕けるので、小笠原を歩く際は足元に注意してください(特に夜)。
(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pronatura/29/0/29_262/_pdf/-char/ja
「バズった生きもの大調査SP」~外来種が天然記念物を巨大化させた!~ - ダーウィンが来た! - NHK)
殻はオカヤドカリが本来利用する海貝の殻より脆く、踏めば簡単に砕けるので、小笠原を歩く際は足元に注意してください(特に夜)。
アジアベッコウマイマイ
殻径1.5~2cm程度 。ベッコウの名の通り、貝殻にツヤがあるのが特徴です。小笠原固有のカタツムリとの競合が懸念されています。
また、アフリカマイマイを集団で襲い捕食している事例や農作物を摂食する事例もあるため、固有のマイマイへの影響や農作物を加害する懸念もあります。雨上がりの夜、踏まずに歩くのが難しいほど道路上に大量に出ていることがあります。
環境省では、小笠原村と協力し、誘引トラップによる捕獲調査や駆除剤の散布等を実施しています。
また、アフリカマイマイを集団で襲い捕食している事例や農作物を摂食する事例もあるため、固有のマイマイへの影響や農作物を加害する懸念もあります。雨上がりの夜、踏まずに歩くのが難しいほど道路上に大量に出ていることがあります。
環境省では、小笠原村と協力し、誘引トラップによる捕獲調査や駆除剤の散布等を実施しています。
ツヤオオズアリ
こちらも世界の侵略的外来種ワースト100に登録されているアリで、オオズ(大頭)の名の通り、兵アリの頭が大きいのが特徴です。小笠原以外にも奄美や沖縄本島でも見られるほか、本州や北海道でも目撃例があるようです。
母島では在来のカタツムリを捕食してしまうため、環境省では南崎に市販のアリ駆除剤を利用したトラップを仕掛けています。
母島では在来のカタツムリを捕食してしまうため、環境省では南崎に市販のアリ駆除剤を利用したトラップを仕掛けています。
番外編:外来ヤスデ
全長2 cm程度のマイナー外来種。詳しいことはまだ判明しておりませんが、どうやらマガイカグヤヤスデ(Pseudospirobolellus avernus)という種と推測されているようです。ヤスデは同じ多足類のムカデと混同されて恐れられることもありますが、ムカデと違って生きた虫を捕食することはなく、腐葉土などを食べる一般に無毒な分解者(脚がたくさんあって危険を感じると丸くなり、棲む場所やエサも似ているので、個人的には細長いダンゴムシといったイメージ)です。不明なことも多く、今まで挙げてきた外来種のような生態系への影響はなさそうですが……。
母島の港付近の茂みなどに居ます。
ヤスデの一部の種はブラックライトを照射すると光ることが知られています。
母島の港付近の茂みなどに居ます。
ヤスデの一部の種はブラックライトを照射すると光ることが知られています。
母島に来てすぐの夜、散歩も途中に地面をブラックライトで照らして何か面白いものがないかなと探していたところ見つけたのがこのヤスデです。全身が光って、なかなか綺麗だとは思いませんか?何でもなさそうな生き物も、少し見方を変えると思わぬ表情を見せてくれるかもしれません。
ちなみに他に光るものはあまり見つからず、ガジュマルの木の下に何か大きな光るものが埋まっていると思って掘り出してみたら、ボロボロの軍手でした。
以上で紹介を終わります。母島にはまだまだたくさんの外来種がいるので、気になったら調べてみてください。今回の紹介を通して、母島が今直面している外来種問題に関心を持っていただけると幸いです。もし機会があれば、次は植物を紹介したいと思います。
ちなみに他に光るものはあまり見つからず、ガジュマルの木の下に何か大きな光るものが埋まっていると思って掘り出してみたら、ボロボロの軍手でした。
以上で紹介を終わります。母島にはまだまだたくさんの外来種がいるので、気になったら調べてみてください。今回の紹介を通して、母島が今直面している外来種問題に関心を持っていただけると幸いです。もし機会があれば、次は植物を紹介したいと思います。
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