関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

5年ぶりの西之島クルーズ参加記 ―海鳥たちの楽園

2025年11月07日
小笠原 河村雅史
 環境省小笠原自然保護官事務所の河村です。 
 10月に5年ぶりに催行された「おがさわら丸で行く 西之島クルーズ」に参加してきました。業務外での参加でしたが、最新の西之島の様子をお伝えしたいと思い、記事にしました。
おがさわら丸
おがさわら丸

クルーズの様子

 朝9時、父島の二見港を出港し、約3時間かけて西之島近海に到着しました。航行中はデッキに出て、鳥やクジラを探しながらのんびりと過ごしました。マッコウクジラのブロー(潮吹き)を確認することができましたが、残念ながら写真には収められませんでした。 

 西之島の近くに到着後は、島の周囲を時計回りに約30分かけて2周しました。その後、来たルートを戻って父島へ帰る、日帰りのクルーズです。島の周回中は、海鳥の写真を撮ったり、島の様子を観察したりと、あっという間に時間が過ぎていきました。 

  この日は波がやや高く、島に打ちつける白波が砕ける様子からは、島が少しずつ波によって浸食されている様子もうかがえました。また、海水が変色している海域の近くでは、わずかに硫化水素のようなにおいも感じられました。 

 船内では、西之島に関する展示や、研究者による講演会が行われていました。また、西之島の調査で使用されている「ローバー」と呼ばれる車輪付きの無人探査機の紹介もあり、操縦体験は参加者の関心を集めていました。 
ローバーの紹介の様子
ローバーの紹介の様子

西之島の地表部を観察

 西之島の表面には、いくつもの筋状の模様や深く削れた谷状の地形が見られ、火山の堆積物が浸食されていく様子がうかがえました。西之島は中央部に火口があり、くぼんでいる様子も西側から確認できました。 
大きく浸食されているように見える地形
大きく浸食されているように見える地形
南部の岩
島の東西南北から見た様子
 北部には、今年7月の西之島総合学術調査の際に設置された、衛星通信装置や無人探査機を使用して継続的なモニタリングをするための拠点も見ることができました。 
調査拠点
拡大写真

海鳥の紹介

 海鳥も西之島に到着する前から、船の周りでたくさん見ることができました。
西之島周辺で見られた海鳥
 島には、カツオドリの雛の姿も確認することもできました。 

 また、海に近い岩場が白く変色しているのは、おそらく鳥の糞が堆積しているためと思われます。海鳥たちが、海から陸へと有機物を運んでいる様子がうかがえました。
白くなった岩

おわりに

 西之島は、1973年ごろ火山活動が活発化し、その後は浸食と堆積を繰り返しながら形を変え続けていました。2013年に約40年ぶりの大規模な噴火が発生し、旧西之島の大部分が新たな溶岩に覆われました。当時は旧島の地表が一部には残っており、植物や昆虫が生息していました。しかし2020年の大規模噴火で旧島の地表は完全に覆われて地上の生態系は一旦リセットされました。その後、海鳥が営巣を始め、令和7年度の総合学術調査では2020年以降で初めてコケ植物の生育が確認されるなど、新たな生態系の形成が進んでいることがわかっています。 

 新しい島の誕生と、そこに新たな生態系が定着していく様子を観測した例は世界中を見ると、いくつかはあるのですが、西之島のように他の陸地から約130kmも離れた場所に出現した島は、まさに世界でも稀に見る、唯一無二の存在といえます。 

 西之島は、世界自然遺産小笠原諸島、小笠原国立公園、国指定西之島鳥獣保護区にも指定されています。小笠原事務所に赴任して3年目になりますが、私自身も今回が初めての西之島訪問でした。講演会や映像写真で見聞きしていたものを、実際に目にすることができたのは、とても貴重な経験でした。今後、西之島がどのように変化し、どのような生き物たちが新たに暮らし始めるのか。父島からその行く末に思いを馳せつつ、またいつか、変化を続ける西之島をこの目で確かめられる日を楽しみにしています。 

(参考) 
川上和人(文)・箕輪義隆(絵)『あたらし島のオードリー』アリス館(2024) 
環境省:令和7年度西之島総合学術調査結果概要について (https://www.env.go.jp/press/press_00730.html

小笠原世界遺産センター公式Instagram

「世界自然遺産 小笠原諸島」の最新情報や季節の見どころ、イベント情報をお届け! 

ここにしかない貴重な自然の魅力を、写真や動画で発信しています。西之島ツアーの動画も投稿しています。ぜひご覧ください! 
小笠原世界遺産センター公式Instagram