関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

なぜこんなことに

2026年02月12日
日光 鈴木研司
みなさんこんにちは。日光国立公園管理事務所の鈴木研司です。
今回は残念なお話です。正月気分も抜けきらぬ1月上旬、小田代原の歩道巡視の時です。

木道の脇をこちらに向かってくる生き物がいます。


「おや。キツネに会えるなんて正月早々運が良い。」 
急いでポケットからカメラを出し、シャッターを切ります。 
「近づいてくる。こちらに気がついていない? ん?」 
「こちらに向かってくるなんて本当にキツネ? いや。ワンコか? 柴ワンコ…か?飼い主とはぐれた迷子犬か?」 

木道に上りさらに近寄ってきます。

 
「エ~~。やはりキツネだ。なぜこんなに近寄ってくるの。もしかすると、キツネにばかされている?」この辺で私の頭の中は少々混乱気味です。 

キツネは私の気持ちを見透かしたように、手の届く直前で木道を降ります。 


木道を降りたキツネはそのまま私の後ろに回り込みます。
「このまま立ち去るか?」
カメラを変え、立ち去る姿も撮影しようとザックを下ろします。ところが離れて行ったと思ったキツネは180度向きを変え木道の反対側から再び近寄ってきます。  

ついにこんな距離です。

 
「ギョエ‼」
下ろしたザックにかけてあった上着の袖を引き始めました。さすがに「コラ!」と大きな声を出します。 
キツネは少しだけ飛び跳ねるように後ずさりをして遠ざかりますが、カメラを取り出すためにザックのファスナーを開けると、三度近寄りザックの中を覗き込もうとします。「コラ~!」とさらに大きな声で強く怒鳴ります。ザックのファスナーを開ける音なのか、動きなのか。ザックの中には食べ物があることを知っているとしか思えないような動きです。 

さすがに距離をあけ遠巻きに私の周りをうろうろします。
「この大声でも逃げようとしないなんて。」私は怖さすら感じ始めました。 


『食べるものを持っているだろ。わかっているよ。』 
『この前の人間はたくさんくれたのに。』 
『なんだよ。ケチだな。』
 
やがてキツネは歩道から降り。


立ち去っていきます。                 まだ未練があるのか途中で振り返り、やがて見えなくなりました。
 
肉付きが良く、毛並みの良いキツネ。 
「二度と人間に近寄るなよ。」と思いつつ、人間を恐れるように「もっときつく脅かすべきだったか…」後悔の念も湧いてきました。 

キツネが間近に現れ驚き喜びました。近づくキツネに興奮しました。しかしその気持ちは怖さを伴う疑念になり、そして落胆から後悔へと… 
自然の中で生きる生物は、自然の中で生まれ、生き、死ぬのがあるべき姿です。自然の中で生きるこのキツネの場合も、人間の影響は最小限であることが望まれます。しかしこのキツネの行動からは、人間の影響が強く感じられます。かわいいから食べ物を与える、かわいそうだから食べ物を与える、写真を撮りたいから食べ物でおびき寄せるなどの人間の身勝手な行為の影響です。
国立公園の特別地域内では、自然公園法に基づき、野生動物に食べ物を与えることや生態に影響を与える行為は禁止されています。国立公園や国定公園などに限らず、私たちが普段生活している場所でも、自然の中で生きる動物に食べ物を与えることは避けるべきです。動物や植物そして地球そのものにも、人間による影響はできるだけ少なくするべきでしょう。
本当に残念な日でした。

栃木県のホームページにも、野生動物に餌付けを行うことに関しての解説があります。こちらもどうぞご覧ください。
【 
野生動物への餌付けなどについて】
https://www.pref.tochigi.lg.jp/d04/eco/shizenkankyou/shizen/yaseityouzyuutonotukiaikata.html