
アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
祝・2026本州初のトキ放鳥 ~舞台裏②~
2026年10月21日
佐渡
皆さん、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の右田です。
前回に引き続き、トキの本州放鳥という歴史的な一歩を踏み出すために取り組んだ舞台裏の様子についてお伝えします。
今回は、佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションでの取り組みに焦点をあてご紹介します。
佐渡自然保護官事務所の右田です。
前回に引き続き、トキの本州放鳥という歴史的な一歩を踏み出すために取り組んだ舞台裏の様子についてお伝えします。
今回は、佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションでの取り組みに焦点をあてご紹介します。
舞台裏その3:順化訓練
飼育下で生まれたトキが野生で自立できるよう、放鳥前には必ず、野生復帰ステーションの順化ケージで約3か月間かけて順化訓練を行っています。訓練といっても、広いケージでの生活を通じて、飛翔や採餌の能力、群れ生活での協調性を自然に習得させるというものです。また、人里近くが住処となるトキが人と共生できるように、人の行動を訓練の間に徐々に見せ、過度に怖がらないように慣れさせていきます。
順化訓練用のケージは、広さ50m×80m・高さ15mととても広大で、里地を再現した造りになっています。内部にはトキが自力で餌を探して採餌できるよう、自然な状態でカエルや昆虫などが生息しています。
今年はさらに、ケージ内の生物種を増やそうと、獣医師や飼育員さんが力を入れ、様々な環境整備の取組みを行い、採餌訓練の充実が図られました。
今年はさらに、ケージ内の生物種を増やそうと、獣医師や飼育員さんが力を入れ、様々な環境整備の取組みを行い、採餌訓練の充実が図られました。
環境整備① 土壌の改良
- 栄養豊富な土づくりをして、土壌生物が棲みやすくなるよう工夫しました。
・硬くなった土を耕す。
・牛堆肥や米ぬかを散布し栄養を加える。
・落ち葉などの簡易コンポストを設置し、ミミズの住処づくりと土づくりを行う。
・ミミズを投入。
環境整備② 水環境の改良
- 生きものの隠れ家を増やしたり、水温上昇を防ぐ工夫をしたりしました。
・水草の投入
・植栽の増設
・牛堆肥や米ぬかを散布し栄養を加える。
・ミニ東屋の設置
環境整備③ ドジョウ生息環境の改良
- ②に加え、ドジョウが好む環境を整えました。
・日よけ板の設置
・隠れ家となる竹いかだを設置
環境整備④ 里地での生き物調査と生き物の投入
- 佐渡の里地にいる生き物の生態について改めて専門の方からお話を聞いたり、農家さんの許可を頂いて野外での生き物調査を実施したりしました。
われわれ環境省職員も、その中の夜間の調査に参加してきました。みんなで闇夜の田んぼに集合し、ライトトラップ(光に集まる虫を採集する方法)をしかけたり、捕獲網でのスウィーピング(網を草むらで振って虫を採集する方法)をしたりとワクワクする作業でした。
夜間調査では、水生生物と陸生生物合せて27種345匹を確認。捕獲した生き物は翌日に順化ケージへ投入。その他にも、カエルの卵やオタマジャクシも順化ケージに入れました。
順化訓練は、これまでもこのようなカスタマイズを繰り返し、バージョンアップを重ねて今に至ります。外の世界を知らなかったトキのDNAに刻まれた本能を目覚めさせ、野外に放鳥された後の生存率を向上させるための訓練です。
この訓練を乗り越えたトキたちは、きっと本州でも逞しく生きていってくれるはずです!
この訓練を乗り越えたトキたちは、きっと本州でも逞しく生きていってくれるはずです!
舞台裏その4:放鳥地へのトキの移送
順化訓練が終了すると、トキをいよいよ本州へ送る総仕上げの作業が行われます。
トキに負担をかけないよう、そして今までの努力が無駄にならないよう、細心の注意をはらいます。
トキに負担をかけないよう、そして今までの努力が無駄にならないよう、細心の注意をはらいます。
①トキの捕獲
まずは順化ケージ内にいるトキを安全に捕獲します。と一言でいっても、サッカーコートと同じくらい広い順化ケージを飛び回るトキを安全に捕獲するのは至難の業です。
そこで、ケージ下流にある小部屋にトキが自ら集まるように誘導します。今年は小部屋内にある池を拡張し、トキがより採餌に集まり滞在時間も増えるように工夫がされました。
次にトキたちが小部屋に集合したタイミングを見計らい、落下ネットを用いて小部屋を仕切ります。この落下ネットについても、以前より少し落下速度をあげることで取り逃しを防止し、また万が一にもトキが挟まってケガをしないように工夫がされました。
そこで、ケージ下流にある小部屋にトキが自ら集まるように誘導します。今年は小部屋内にある池を拡張し、トキがより採餌に集まり滞在時間も増えるように工夫がされました。
次にトキたちが小部屋に集合したタイミングを見計らい、落下ネットを用いて小部屋を仕切ります。この落下ネットについても、以前より少し落下速度をあげることで取り逃しを防止し、また万が一にもトキが挟まってケガをしないように工夫がされました。
しばらく置いた後に、過度に追い掛け回すことなく一羽ずつ丁寧に捕獲していきます。
②トキの最終チェック
次に獣医師と保護官によるトキの状態の最終確認です。
本州に移送できる状態か、放鳥しても問題なさそうか、念入りに健康状態や足環などの状態をチェックします。
粛々と作業を進めつつも、これから旅立つ子供の身だしなみを整えてあげる親のように、獣医さん達が一羽一羽丁寧に足の汚れなどを拭いてあげる姿が印象的でした。
本州に移送できる状態か、放鳥しても問題なさそうか、念入りに健康状態や足環などの状態をチェックします。
粛々と作業を進めつつも、これから旅立つ子供の身だしなみを整えてあげる親のように、獣医さん達が一羽一羽丁寧に足の汚れなどを拭いてあげる姿が印象的でした。
③トキの移送
最後に、いよいよトキを本州へ送り出す作業です。
専用の移送箱にトキを収め、専門の運送業者に引き渡します。
専用の移送箱にトキを収め、専門の運送業者に引き渡します。
全ての作業が終わったのは日暮れ近くになっていましたが、最後にみんなで手を振ってトキの無事を祈り、見送りしました。
〔おまけ〕
野生復帰ステーションのすぐそばには石動(いするぎ)神社という神社があります。普段は立ち寄らないのですが、ある日ふと気になり行ってみたところ、立看板に神社の由来が書いてありました。「地元の領主が上洛の際に、海で暴風に遭い船体が破損しかけた時、能登の石動社に祈願して難を逃れることができたことから、その後創立した」とのこと。能登とゆかりのある神社がこんなに近くにあったことに驚きました。
能登で放鳥されるトキには、2024年の能登半島地震やその後の豪雨災害からの「復興シンボル」という意味も込められています。人とトキが安心して暮らせる能登の里が一日も早くよみがえりますように、しっかりとお願いしました。
10月15日時点で、GPS発信機からのデータと現地モニタリングにより、本州トキ全羽の無事を確認しています。
がんばれ! トキーーーッ!!
がんばれ! トキーーーッ!!