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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

未来のために

2009年06月04日
小笠原
こんにちは。
小笠原アクティブ・レンジャーの沼田です。

先日久々に母島へ行ってきました。
その時に、ある写真を1枚撮りました。
その写真がこちらです。




撮った場所は母島北部の道路脇。
母島は港周囲しか集落がなく、このネコは飼いネコではなくノネコです。
このネコが咥えているのはグリーンアノールというトカゲの1種。

グリーンアノールは父島・母島にいる貴重な昆虫などを食べていて、ほとんどの固有昆虫が絶滅の危機に瀕しています。
父島には1960年代に入り、その後爆発的に増えて、現在父島では固有昆虫を目にすることはほとんどないというくらい、グリーンアノールに食べられてしまいました。
母島には1980年代に入り、こちらも全域に広がって分布しています。
かろうじて父島よりかは、固有昆虫は残っています。

幸いなことに、父島・母島以外にグリーンアノールはいないので、他の無人島には固有昆虫を見ることができます。
環境省では、無人島へグリーンアノールを運ばないように、港周辺などにトラップを仕掛け捕まえています。
ですが、絶滅までに追い込むにはなかなか難しいのが現状です。

さて、そのグリーンアノールを食べているネコ。
グリーンアノールの駆除に役立っていて、えらいっ!!
…というわけもないのです。
このネコもまた問題を起こしている困ったチャン。
グリーンアノールだけ食べたくれるのなら嬉しいのですが、この子も貴重な小笠原固有の鳥も襲っているのです。
元々ペットして飼われて捨てられたネコたち。
生きていく為に食べて行くのは自然なことですが、捨てられなければ安全に健康で生きていくことができたはずです。
固有の動物も食べられずに済みます。

グリーンアノールもネコもペットとして持ち込まれ(グリーンアノールは資材に紛れて入ってきたという説もあります)、不要になったから捨てられ野生化してしまったかわいそうな子たち。
また、小笠原の固有の動物は、今まで天敵がいなかったから身を守る術をしらないのです。
ですから、固有の動物は外来の動物の格好の餌となってしまいます。

私たちは、固有の動物たちが幸せに暮らしていたもとの小笠原の自然を取り戻すために、外来種を駆除しています。
決して悪者だから処分しているわけではありません。
ペットも適切に飼っていれば健康に幸せに暮らしていけます。

ですから、人間の都合でペットを捨てるなんてことはしないで下さい。
自分たちの子供・孫の代の時に、自分たちの子供の時のような豊かな自然環境を残すために。。。