アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
氷の世界
2015年02月06日日光国立公園の季節限定の絶景の一つ、念願の雲竜渓谷の巡視に行ってきました。その見所の雲竜瀑は普段は水量が少なく、それゆえに冬には氷瀑となることで有名な滝です。
この日は早朝出発し、グッと気温が冷え、それでいて快晴という恵まれた氷瀑日和でした。特殊な場所への巡視ということで、事前準備はよりしっかりと、特に必須アイテムはヘルメットとアイゼン、ピッケル(ストック)でした。不慣れなアイゼンを装着し、複数箇所の渡渉もありましたが、アイゼンのグリップと自分のバランスを信用して、だんだんとコツがつかめてきました。
そうして足を進めていくと、渓谷の両側に点在していたツララや氷柱が面となり、氷壁として目の前に飛び込んできました。「友不知」と言われる氷壁です。氷の世界の入口かのように堂々と佇んでいます。陽に当たるとキラキラときれいなのですが、陽がよく当たるということは、より溶けやすく崩落する危険な箇所でもあるそうです。
次の燕岩では、スケールの大きいつららや氷柱、氷壁が続く景色が広がっていました。しかも、なんと氷の滝のような氷柱の裏に回れます!とはいえ、裏に回るということは、つららなどの真下を通ることにもなるので安全第一の上です。壁と床が氷で、また氷の色が幻想的で言葉になりませんでした。
私たちは、ハーネスやザイルなどの装備があったので安全を確保しながら狭い巻道をトラバースし、奥を目指しました。すると、目の前に真っ直ぐ氷結した壮大な雲竜瀑が現れました。氷瀑でありながら、一部溶けていて水の音も聞こえていました。写真に納めきれない大きさで圧巻でした。
当巡視では雲竜氷瀑巡視の経験者との同行ということもあり、つららや氷柱そばのルートは使用しないよう迂回し、安全を確保しながら巡視していました。その間も、気温が上昇して氷が溶け、小さなものから大きなものまで氷塊が落ちる音が渓谷に響いていました。
他の利用者の方もヘルメットやアイゼン等を装着している方が多く見られましたが、ヘルメットをもっているのに装着しない方、しかも氷塊が落下しているそばのルートを選んで歩いているにも関わらず被る気配がない方も見受けられ、大変危険でした。また、私たちの帰路で行き違う方も見られ、より氷が溶けやすい時間帯の利用者も見られました。気温が高くなると氷が溶け落ちるため、活動する場合は氷が締まっている寒い午前中の方がいいでしょう。その年の気候の傾向により前後するでしょうが、「2月10日を過ぎたら雲竜に入るな」という言われもあるようです。もしかしたら、地球温暖化が問題視されている近年ではその目処すら前倒ししているのが実態かもしれません。
今年度のチャンスは残すところわずかですが、次年度以降など今後トライされる方は、くれぐれも活動時期や時間帯、装備やルートなどに注意して安全第一で、この絶景をお楽しみください。