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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

一面

2015年06月12日
日光国立公園 櫨木 めぐみ

 交通規制がかかっていて低公害バスや徒歩、もしくは遊覧船からでないと行けない1002号線。その奥には小田代原、西ノ湖、千手ヶ浜などの自然が保全されています。

 その千手ヶ浜はこの時期、たくさんの利用者で溢れています。そのお目当てが...

一面クリンソウに覆われています

そう、クリンソウです。

クリンソウで覆われた一面のピンクや紫、白色は確かにきれいでした。ただ、それよりも普段のこの辺りの静かな姿を知っているためか、山間の奥地とは思えない人の多さに圧倒されてしまいました。そして、このクリンソウはというと...

ご覧のとおりクリンソウ専用の防鹿柵に囲まれております。このあたりは、シカが群れをなして生息する場所でもあるのです。

 クリンソウ柵の外はというと、青々とした緑。なんて豊かな自然がひろがっているのだろう!と思われるかも知れませんが、よくその緑色を見ると同じ種類の植物でこちらも一面覆われているのです。

その代表格として、マルバダケブキ、シロヨメナ、キオン、イケマ...これらは、シカの忌避植物です。しかし、かつてはこんな単一な姿ではなかったようです。シカも食べ物の好き嫌いがあるわけですが、彼らも今のような嫌いなものに囲まれるのもあまり嬉しくないでしょうね。しかし、そうせざるを得ない状況や環境になったとも言えるのではないかと思います。

 千手ヶ浜から西の林内へ足をのばすと、ひっそりと西ノ湖が佇んでいます。私が訪れたこの時期は、だいぶ干上がっていました。西ノ湖は独立した湖で、降水量により貯水量が左右されるのですが、いかにここのところ雨が少なかったがわかります。しかし水分を多く含む湖の土壌。そのため、ここにもそこら中にシカの足跡が...。そして、西ノ湖の周りの防鹿柵により行き場がなく、ハイカーの中に登場せざるをえなくなったシカもいました。
西ノ湖。 逃げ惑うシカ。

柵や交通規制などの保全等により保たれている自然の豊かさはありますが、偏りがあるのも事実です。一面だけでなく多面的にみること、バランスをとることの難しさなど、そんなことを改めて再確認した巡視でした。