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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

霧降高原から女峰山へ

2016年06月27日
日光国立公園 太田祐司

日光オジイチャンレンジャーの太田です。

6月20,21日でやっと日光連山の山域の巡視に出かけることができましたので、報告です。

11月に女峰山周辺で予定されているトレイルランニングの大会コースの調査にTレンジャー(以下TR)が、霧降高原~赤薙山~女峰山~山内(東照宮等のある区域)を大会実行委員と歩くので、お供を募集とのこと。

日光に着任して通勤は、日光の杉並木を通って女峰山や男体山に向かって車で走っており、毎日が気持ちが良く、その山に出かけたい気持ちが募っていました。
女峰山は日帰り巡視ではなかなか行きづらい場所であり、頂上下の唐沢小屋1泊の予定で植生観察の時間もとれそうな計画です。同行をぜひにとお願いしました。ルート名が霧降、女峰というのも素敵です。

10:00スタートの霧降高原キスゲ平はニッコウキスゲが咲き始めです。天空回廊という1,445段の階段も迫力があります。キスゲ平はこれからがベストシーズンです。ぜひおいでください。


階段が終わると笹原の中の道、登山道の様子を確認したり、道幅を測定してみたりしながら進みます。




残念ながら複線化が進んでいたり、雨水の浸食が見られる所もあります。

赤薙山は鳥居のある樹林に囲まれた静かな山頂でした。


赤薙山からの尾根道は小さな起伏に富んだコメツガとハクサンシャクナゲの多い道です。

身軽に歩くTRを追います、後ろからはM大出身のヒマラヤニストがピッタリついて来て、追い立てられているような気分です。だんだん、登山道や植生の確認がおろそかになってきます。
赤薙山や赤薙奥社で会ったのは、平日でもあり仕事をリタイアした明らかに私より年配の方たちで、単独行の方は、霧降に下山して車中泊をして明日は大真名子に登るとのことで、私も頑張らねばと思いつつ歩きます。


登山道脇にもヒメイワカガミやイワカガミが見られます。開花の時期だったのかイワカガミはたくさんありました。





ゴゼンタチバナやマイヅルソウも多く見られ、亜高山の雰囲気が満点です。


一里ヶ曽根(2295m独立標高点)ではハイマツやコケモモも出て来て、高山に来たなと思わせます。



しかし下ったコルではダケカンバの巨木があり、平坦で歩きやすく、冷たい水場もありました。
この水場で小屋泊のための水を補給し、荷物が少し重くなります。
これからが女峰山への最後の登りで、ハイマツもたくさん出て来ます。このハイマツの中に中部山岳から岩手の焼石岳の間で、女峰山に隔離分布しているキバナシャクナゲがあるはずですが、ハクサンシャクナゲも多く歩きながらの観察では確認できませんでした。
山頂直下で急な岩尾根があり、古びたトラロープがぶら下がっています。そこを登り切ると目の前にミヤマダイコンソウがありました。この種も日光連山では分布が限られているようです。




ハイマツの中の道を辿るといよいよ山頂16:00着です。帝釈山や大真名子山がよく見えます。
山頂部では栃木県ではここだけでしか見られない、ウラシマツツジを探しましたが、見つけることはできませんでした。



この日は、頂上から30分ほど下った所にある、唐沢避難小屋で1泊。小屋にはトイレが無いので周囲の汚れ具合が気になっていましたが、以外にきれいでシカの糞の方が非常に多かった!!

翌朝は霧がかかり涼しい中を、日光東照宮等のある山内地区へ長い尾根道を下山します。途中にはこんなガレ場が何カ所かあり、落石注意です。




下山途中には、快適な笹原の中の道もありますが、対岸を見るとシカ道がはっきりと見えて、日光のシカ問題のことを考えながら歩くことになりました。


この後、山内が近づいた樹林地でも登山道を横断して走り回るシカに遭遇しました。
今回の巡視は、登山道の状態や隣接部の地被植物の状態を見ることに留意しましたが、植生に対するシカの影響を感じることが多く、やはり日光国立公園の重要課題の一つであると認識しました。