関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

現場のレンジャー・アクティブレンジャーが教える快適登山の極意③「服装・装備で差が出る」

2016年09月02日
沼津 橋本 和加子

富士山の夏山登山シーズンも残りわずかとなりました。

これまでは「夏山」の言葉が合っていた富士山ですが、やはり9月になると空気感が変わり「秋の気配」が漂い始めます。

と言うことは、これから閉山までの登山は、今まで以上に服装や装備に気を遣わなければなりません。

ここでは、基本的な服装や装備を紹介している『富士登山オフィシャルサイト』【登山に必要な装備】に基づいて、現地で感じること+αについてご紹介します。

 

●服装

<合羽>

ここ数年、「登山ブーム」と言われ、様々な情報が得られるようになったためか、登山に適さない服装の方はあまり見られなくなりましたが、荒天になるとよく見かけるのがビニール合羽を着用している登山者です。

ビニール合羽着用の登山者

ビニール合羽は「安い・軽い・コンパクト」ととても便利ですが、防寒機能がなく耐久性にも乏しいため登山には不向きです。

富士山は夏場でも比較的涼しく、早朝の山頂に至っては3℃4℃の寒さは当たり前。

雨が降っていなくても防寒着として登山用の雨具は有効です。

これからの時期、富士山頂は氷点下になることもありますので、登山用の雨具で少しでも快適な登山を心がけましょう。

 

<防寒着>

登山用の雨具が防寒着になるとご紹介しましたが、フリースやダウンジャケットなど、きちんとした防寒着は富士登山には必需品です。

特にこれからの時期は、冬用の帽子や手袋・ネックウォーマーなど防寒着のある・なしで快適さが変わってきます。

寒い中、震えて待つことは体力を消耗し、動けるはずだった体が動かなくなります。

せっかくの素晴らしい御来光も、「寒くてそれどころじゃない!」ということになる可能性が高くなります。ひいては、低体温症などで周囲の人たちへ迷惑をかけることになり兼ねません。

「荷物がかさばる」などと思わず、安全で快適な富士登山になることを1番に考え、ぜひ持って行って下さい。

 

下の写真は、2月に新宿御苑で開催された「富士山ガイダンス」で、アクティブレンジャーが【富士山登山者に知ってほしいこと・守ってほしいこと】というタイトルで発表した際にご紹介した服装です。

左から、荒天時・防寒対策・晴天時となっています。

 

ちなみに、私は極度の寒がりなので、夏山の富士山でも上記の防寒対策は万全にしており、快適に業務を実施しています。

 

●装備

基本的な装備も、まずは『富士登山オフィシャルサイト』【登山に必要な装備】をご確認下さい。

その中でご紹介したいのは『カイロ』についてです。

カイロは、いろいろなところを温められるよう、貼付タイプではないものが良いでしょう。

(貼付タイプは汗をかいた時、水分(汗)によってさらに温度が上がって火傷をする恐れがありますので気をつけましょう)

その他、『バンダナ』『テーピング』『スーパーのレジ袋』などは、寒さに関係なく持っていると良いでしょう。

 

『バンダナ』 →首に巻いて日焼け対策・寒さ対策、帽子の代わりなどに有効

『テーピング』→靴ずれ対応・登山靴壊れの応急処置などに有効

        富士山をパトロールしていると、毎年必ず壊れた登山靴が捨てられています。

        「靴の持ち主はどうやって帰ったのか」と不思議でなりません。

『レジ袋』  →荷物や靴の防水対策・腕骨折時の支え・ゴミ袋などとして有効

 

これらは、決してかさばるものではないですし、登山だけでなく日常でも活用できる方法です。

 

登山用の服や装備は、質も値段もピンからキリまであります。もちろん、高い物は質が良くかさばらないなど利点が多いでしょう。

でも1番大切なのは、自分に合ったものを選ぶことです。

そしてより良く使用できるように工夫することです。

今はインターネットで様々な情報を得ることができますが、それらを有効に活用するとともに、自分なりの方法を考えて登山に取り入れてみて下さい。

それがうまくいった時、きっとその登山がより良い想い出になるはずです。

山頂で万歳三唱する登山者(2015年824日撮影)

良き想い出となった瞬間でしょう

 

今回は、主にこれから閉山までの短期間を考慮してご紹介しましたが、来年の富士登山や他の山への登山にも同じ事が言えます。

楽しかったと言える登山になるよう、装備・準備はしっかりとしましょう。