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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

お山の衣替え

2017年06月02日
伊豆諸島 椋本 真里奈

ご挨拶が遅れましたが、2月に伊豆諸島自然保護官事務所のARに着任いたしました椋本(むくもと)です。

伊豆諸島各島の個性や魅力を発信していけたらと思います。

富士箱根伊豆国立公園伊豆諸島地域には8つの有人島がありますが、まずは当事務所のある大島の春花情報をお届けいたします。

伊豆大島と言えば、なんと言っても椿。

91km2の大島に300万本あると言われるヤブツバキが、早咲きから遅咲きまでが代わりばんこで、初冬から晩春にかけて色鮮やかに山を染め上げていました。

椿とバトンタッチするかのように、次に山を飾るのは、オオシマザクラ。

伊豆諸島と伊豆半島~房総半島の海沿いに自生する野生の山桜です。

ソメイヨシノと違って開花と同時に葉が出てくるのが特徴で、真っ白な大輪と新緑が春山を美しく彩ります。

(写真は大島公園のヤシと海とのコラボです。島の桜、美しくてたくましいですね。)

それでは、桜も散り切った6月初旬の今、一体山々は何に色づいているのでしょうか?

...

今回取り上げるのは、「オオバエゴノキ」です!

(この時期に山で一番目を引くのは、実は派手色のオオシマツツジなのですが、今回はあえてマイナーどころをご紹介します。)

オオバエゴノキは、本土のエゴノキの島嶼変異型。

花はオオシマザクラに似た乳白色ですが、お辞儀をするように下向きに垂れて咲いていて、なんだか清楚な印象です。木の根を見つめているようなので、島ではオヤニラミ(親睨み)とも呼ばれています。

今が花期ですが、咲いているときより落花後の方が目を引きます。まるで白い絨毯のよう。

さらに、オオバエゴノキは本土のエゴノキよりも強く甘く香ります。

視覚も嗅覚も楽しませてくれるオオバエゴノキは、この季節の散策を華やがせてくれますね。

そしてもう一種、固有種や島嶼型ではないですが、この時期に山で映えているのが「スダジイ」です。

穂状に咲く花は萌葱色で、椿や桜のように目立ちはしませんが、スダジイの葉色は他の木々よりワントーン明るいため、遠目から山を見るとどこにスダジイがあるのかは一目瞭然!

(写真は裏砂漠から樹林を望んだもので、画像中央の萌葱色がスダジイの群落です。)

本来は大島を広く覆っていたスダジイですが、人が住み着くとともに薪や炭の材料として伐採された時代があり、現在ではごく僅かが群落として残っています。大島でスダジイ群集が残る区域は、自然公園法によって第2種特別地域に指定されており、写真の樹林もその一部です。

そんな歴史を持つ伊豆大島では、山中を歩くとこんなミニ遺跡とも出会えます。

中央のくぼみが見えるでしょうか。こちらは直径6mほどの「炭焼き場跡」です。

当時は、伐採した木々をそのまま山中で炭にすることで、運ぶ重量を減らしたのかもしれませんね。

いつの季節でもその固有性を味わえる伊豆大島、気軽に足を運んでください。