アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
第3回 カンムリウミスズメ観察会@神津島
2018年05月23日「カンムリウミスズメ」は全長24cm程の小柄な海鳥で、ウミスズメ科の中では絶滅が最も危ぶまれている種です。
個体数については不明な点が多いですが、世界に約3,500-10,000羽と推測されており(1)IUCNレッドリスト(絶滅危惧Ⅱ類)、(2)環境省レッドリスト(絶滅危惧Ⅱ類)、(3)国指定天然記念物に指定されています。
伊豆諸島はカンムリウミスズメの南限の繁殖地として、およそ1,000-2,000羽が営巣していると言われています。
繁殖期(2月中旬~5月初旬)に先駆けて、12月頃から営巣地へ飛来します。
伊豆諸島地域において国指定鳥獣保護区に指定されていれる3つの無人島(祇苗島、大野原島、鳥島)は、いずれもカンムリウミスズメにとって重要な繁殖地および利用域です。
(神津島天上山から見た祇苗島)
その内祇苗島近海において、5月13日(日)に開催されたカンムリウミスズメ観察会(開催:NPO法人 神津島盛り上げ隊)に、伊豆諸島ARの椋本も同行させていただきました。
参加対象は小学生以上の神津島島民。
計20名を乗せた船舶は8:00頃三浦漁港を出発し、祇苗島方面へと向かいました。
「いた!」「かんむりんだ!」
うねる波の間からカンムリウミスズメが飛び立ち、参加者から歓声が上がりました。
「かんむりん」とは、カンムリウミスズメをモチーフにした神津島観光協会のゆるキャラです。初めて見る本物のかんむりんに、地域住民の皆さんもカンムリウミスズメをより身近なものに感じたようでした。
小柄な上にモノトーンカラーのカンムリウミスズメを大海原で見つけ出すのは想像以上の難易度です。
大人も子どもも立ち上がって、夢中でカンムリウミスズメを探していました。
祇苗島東側の潮目付近に差し掛かると、船の両側で続々とカンムリウミスズメが現れました。
潮目とは異なる2つの潮流がぶつかり合う場所で、水の衝突によって海底のプランクトンが巻き上げられ停留する為、それらを餌とする魚類が集まる良い漁場とされています。その魚を狙って、カンムリウミスズメも潮目によく集まるようです。
カンムリウミスズメは、繁殖期以外のほとんどの時間を海上で過ごす泳ぎのプロです。潮目で獲物を捕らえるために潜水する姿も見られました。
約2時間の航海で観察できたカンムリウミスズメは計12羽。三度開催された観察会の内最多だそうです。
こちらは祇苗島の岸壁です。
ご覧の通り激しく切り立っていますが、岩礁の割れ目や穴などに巣を作るカンムリウミスズメにとっては適した地形なのです。
船を寄せてみると岩壁から鳴き声は聞こえるものの、どこに巣があるのか目視では確認できませんでした。(もしかしたらこの写真にもカンムリウミスズメが写り込んでいるかも?)
このように地形の面で営巣に適した伊豆諸島ですが、環境の悪化により営巣規模が縮小しており、航路での観察頻度が減少していることも報告されているそうです。
1940年代に食用として採卵され、50年代以降は近海で流し刺し網にかかりたくさんの成体が死亡しました。
現在、伊豆諸島で最も深刻な影響と疑われているのは、「釣人が放置するゴミやまき餌に、カンムリウミスズメの捕食者であるカラス類が誘引されること」です。
正確な個体数や減少理由など、カンムリウミスズメにはまだまだ不明確なことが多々ありますが、神津島盛り上げ隊はこの観察会を今後も継続していくとのこと!
固有の自然環境に地域住民が関心を持ち見つめ続けていくことは、環境保全においてとても大切なことですね!