アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
【報告】富士山五合目の自然を満喫しました
2019年08月30日12日に山の日の記念全国大会の甲府市での開催を記念して、自然観察会を実施しました。
当日は山梨県立富士山科学研究所の中野 隆志先生(植物)、吉本 充弘先生(火山、防災)のお二方をお招きして、吉田ルートの五合目にある御中道を、30人の参加者の皆さんと歩きました。
麓からは富士山が見えていたので、ワクワクしながらバスで上がっていくと、、、、、、雲の中。
本当に富士山の天気は分かりません。
当日のスタート地点であるスバルライン五合目は、観光客や下山客、これから登ろうとしている登山客でまさにごった返していました。
国立公園と聞くと「手つかずの自然」をイメージする方が多いかと思いますが、ここもれっきとした国立公園内です。
(よく見ると、建物や看板、自動販売機は茶色で統一されているのがわかるかと思います。)
まずは、五合目にある小御嶽神社に行き、富士山の誕生について解説してもらいます。
スバルライン五合目が、他の3登山道の五合目と比べ、いくつもの大きな建物、駐車場を作ることができたのは、富士山の成り立ちに関係しているんです。
富士山は1つの山としてできたわけではなく、下にもっと以前の火山活動で誕生した複数の山が隠れています。それらの火山を覆うように「新富士火山」が現在の富士山を形作っているそうです。
スバルライン五合目の広い平らな部分は、小御岳火山という火山が現在の富士山の横腹に頭を出している部分なんだそうです。
【山中湖からみた富士山】
普段あまり火山であることを意識しませんが、何十万年も前からの様々な火山活動により、大きく形を変えて来た中(現在進行中ですね)で、均整の取れた美しい富士山を目にしていると思うと、今この時代に富士山と出会えていることをありがたく感じます。
御中道に入ると五合目の喧騒が嘘のようです。歩き始めて早々に樹の上に気になるものが・・・・
皆さんの視線の先にあるのは、、、、、、、、、、、、、
サルオガセでした。樹にまとわりつく姿は少し不気味にも見えますが、樹の栄養を奪っているわけではなく、光合成をおこないながら、空気中の水蒸気から水分を得ています。富士山ではそれほど多くは見かけませんが、霧がよく発生する五合目付近ということで、納得です。
進んでいくと、通常この時期だともう終わっているハクサンシャクナゲが、今年は開花が遅れていたお陰で、お出迎えしてくれました。
【御中道を華やかに彩るハクサンシャクナゲ】
自分だけで歩いていたら何気なく通り過ぎてしまいそうな場所でも、両先生からどんどんと
「へ~!」
となる説明が飛び出してきます。
皆さん熱心に写真を撮ったり、メモをとったりしながら聴いていました。
【冬の雪の重みで大きく湾曲したダケカンバ】
【南側(山側)が年齢が太い落葉広葉樹(左)と北側(谷側)が太い針葉樹(右)の切り株】
樹の種類によって成長の仕方も違うそうで、切り株を見るとわかってしまうのです。
落葉広葉樹は、自分の体を山側の葉で支えるために南側(山側)の年輪が太くなっていて、針葉樹は根元で体を支えるため、北側(谷側)の年輪が太くなってるそうです。
実際、すぐ隣にある切り株同士なのに違っていて、驚きました。
【2018年11月3日撮影】
この大きな窪みは火口です。このような火口が列になっている箇所(火口列)が数か所あります。
何気なく見ているだけではまさか火口だとは思わないですよね。先生のお話しを聞きながら、改めて富士山が火山であることを実感しました。
上の写真では西側(写真の右側)だけにしか植物が生えていないですよね。これにも理由があるんです!
知りたい方は、富士山科学研究所でも年に数回五合目観察会を行っていますので(今年度分は終了しています)、ぜひ参加してみてください。
あいにくのお天気で富士山頂も麓も見ることができませんでしたが、富士山が火山であること、独立峰であること、地質、標高など様々な要因が重なってこの美しい景色を一つ一つ形作ってくることを再認識する1日になりました。
来年の山の日イベントもお楽しみに!