アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
富士山の植物(吉田ルート編)
2019年09月18日あっという間に9月になったかと思ったら、富士山が閉山してもう1週間です。
本当に時が過ぎるのは早いです。
沼津管理官事務所の山田アクティブ・レンジャーが静岡県側の富士山の植物紹介をしていましたので、山梨側の紹介もしたいと思います。
富士山というと岩ばかりであまり植物の印象がない方も多いかと思いますが、すでに静岡県側でも紹介したように、様々な植物たちが過酷な環境で生きています。
■吉田ルート■
吉田ルートは全体の6割の登山者が登るルートです。スタート地点のスバルライン五合目の標高は2,305mです。階段を登ったりするだけで息が切れ、空気が薄いことを感じます。
~吉田ルートの植物~
【フジハタザオ】
ハタザオは地方変異が多い種だそうですが、フジハタザオは富士山の砂礫地に自生する固有種です。シーズンの最初の頃に花を咲かせています。背丈は小さいですが(10~25cm)、背丈の割に大きい花びらは登山道を歩いてもよく目立ちます。六合目~八合目でよく見かけますが、白い清楚な花がいつも疲れをいやしてくれます。富士山でしか見られないと思うと、なおさら見ると嬉しくなりますね。
【ベニイタドリ】
前回の富士宮編で紹介した「オンタデ」と同じくらい富士山でよく見かけるのが「イタドリ」です。オンタデと見た目もよく似ています。薬や食材としても利用される植物です(ただし、富士山では採取禁止です!)その中でも本変種の赤いものを「ベニイタドリ」と言いますが、風流な「メイゲツソウ」という別名もあります。
長いものでは3mに達する根を持ち、水分に乏しい荒原に適応しています。見えない地中に根を延ばして一生懸命生きていると思うと、応援したくなりますね。小さな赤い花が集まってとてもかわいらしいです。吉田ルート五合目の御中道でよく見ることができます。
【タカネバラ】
「高嶺薔薇」。高山に自生するバラです。7月下旬頃に、それほど数は多くはありませんが、五合目から六合目の間の登山道脇で見ることができます。鮮やかなピンク色をした4~5cmの花が目を引きます。園芸種の派手さはないですが、清楚で感じがとても素敵な花です。秋には赤い実をつけます。かすかな甘い匂いがしますので、見かけたら是非嗅いでみてください。
【ヤナギラン】
「柳蘭」。葉が柳に、花が蘭に似て鮮やかなことから名が来ているそうです。七合目の日ノ出館に登る階段の山側に咲いています。長い茎についた鮮やかなピンクの花が風に揺れる姿は思わず見入ってしまいます。登山シーズンの後半になると咲いてくるので、私はこの花を見ると登山シーズンの終わりが近づいてきている事と秋の訪れを感じます。
【フジアザミ】
富士山周辺に多く分布していることから、名前にフジを冠しています。夏の終わりにスバルライン沿いや砂礫地で見かけます。地域によっては根を食用にするそうです(富士山では採取しないでくださいね!)。大きな(10cmほど)の紫色の花を重そうにして下を向いている姿がとても目立ちます。ころんとして形状もかわいらしいです。私にとってはヤナギラン同様、登山シーズンの終わりを感じる植物です。
今回は須走ルート編、富士宮ルート編で紹介しなかった植物を取り上げましたが、静岡県側で紹介した花も吉田ルート側でも見ることができます。
登ることに一生懸命になってしまって、なかなか花を見る余裕はないかもしれませんが、富士登山の成功のコツの1つは「ゆっくり登ること」です。そのためにも、足元や登山道脇に目を向け、立ち止まって花を楽しむことはとてもいい方法だと思います。
今シーズンは本日で閉山ですが、来シーズン登られる方は富士山という過酷な環境に生きている植物もぜひ楽しんでいただけたら、と思います。