アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
期間限定!!黒い『大室山』
2020年03月13日みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。
もう3月ですね。沼津管理官事務所に来て1年が過ぎようとしています。
今日は先日紹介した『小室山』に引き続き、旬な話題が豊富な『大室山』を紹介したいと思います。
大室山は静岡県伊東市にある標高580mの火山で、およそ4000年前の噴火によって作られた伊豆東部火山群の中で最も大きいスコリア丘です。山全体が国の天然記念物に指定されていて、山体を守るため、登山は禁止されており、山頂に行くにはリフトを使用します。
この景観を守るため、毎年2月の第2日曜日に行われている(今年は天候不良により3回延期され、2月24日に実施されました)伝統行事「大室山山焼き」が、先日催されました。この行事は700年以上の歴史があり、麓に点火された炎が勢いよく山頂に駆け上がり、山をまるごと焼き上げる光景は圧巻です。毎年この時期になると全国から多くの見物客が訪れて賑わいます。山焼きの後は、冬の枯草色の山体が、真っ黒になります。真っ黒の山体が見られるのはこの時期限定です。下の写真を比べると分かりますが、約2ヶ月後には新緑が山を覆い始めます。
【 山焼き後の大室山(3月9日撮影) 】 山焼きから約2ヶ月後 → 【 昨年の4月18日撮影 】
山頂の噴火口を周回する約1㎞30分程の遊歩道は、周りに遮る物もなく、まるで空に続く道のようです。遊歩道からは、火山が作った伊東の大地、真っ青な相模灘、伊豆七島、房総半島、そして富士山と360°の大パノラマを楽しめます。大室山山頂は"富士山がある風景100選"に選定された場所の一つにもなっています。
火口跡へ続く遊歩道の中腹には「浅間神社」があります。全国各地にある浅間神社と、総本宮「富士山本宮浅間大社」のご祭神は、木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)です。しかし、ここ大室山浅間神社のご祭神だけは、姉の磐長姫命(いわながひめのみこと)なのです。なぜ大室山のご祭神が他の浅間神社と異なるのか、それには悲しい神話がありました。
この姉妹はとても仲の良い姉妹でしたが、ある日、若い男の神様、瓊々杵尊(ににぎのみこと)が、容姿の美しい木花咲耶姫に一目惚れして姉妹の父親に結婚を願い出たそうです。父親は、姉妹2人一緒なら許すと、容姿の醜い磐長姫と一緒に嫁がせることになりました。ところが、瓊々杵尊は木花咲耶姫ばかり溺愛し、磐長姫は子を身籠もったものの、父親のもとへ返されてしまったそうです。磐長姫は嫉妬から、木花咲耶姫に恨みをもってしまったとか。
とても仲が良かった姉妹が恨み合うことになり、今も磐長姫(大室山)と木花咲耶姫 (富士山)は、にらみ合っていると言われています。そんな神話からか、大室山から富士山が美しく見えても褒めてはいけないという言い伝えが残っています。ちなみに、この神社は、安産、縁結び、不老長寿などのご利益があるそうです。
【 山頂遊歩道の様子 】
そして、先日発表されました、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」(第6版)では、大室山が1つ星を獲得しました!!覆面調査員が現地を訪れ、9つの選定基準を評価して選定されるそうです。その結果、豊かな自然や多彩な文化遺産に触れることが出来る場所として評価され紹介されています。この本を通して、たくさんの国の人が、お椀を伏せたような不思議な形をしている大室山を知るきっかけになってくれたら嬉しいです。
四季によって、山体の色を変える大室山は、どの季節に訪れてもその存在感に圧倒されるはずです。
【 満開の城ヶ崎桜と大室山 】
隣接するさくらの里では、40種類、3000本の桜がほぼ1年中(9月~5月)咲いていると言われています。桜と大室山の共演を楽しめます。現在は城ヶ崎桜が満開になっていました。今月開催予定の夜桜鑑賞会は、伊東市の新型コロナウイルス感染症に係わるイベント等の開催指針に則り、残念ながら中止になりました。1日も早く終息することを願うばかりです。季節が進み、種類の違う桜の開花が楽しみです。
▼伊東市観光情報