アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
森に住む『モリアオガエル』の産卵
2020年07月03日みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。
最近、近所の田んぼの周辺では小さな二ホンアマガエルをよく見かけます。小さな体で元気よく跳ねています。7月に入りそろそろ梅雨明けでしょうか。暑い夏が始まりますね。
今回は、ニホンアマガエルではなく、猫越(ねっこ)岳山頂の池で見つけた『モリアオガエル』の産卵を紹介したいと思います。
猫越岳山頂の池は、伊豆山稜線歩道沿いの仁科峠から天城峠へ向かった途中にある池です。
池の近くまで行くと、聞きなれない音(声)が聞こえてきました。
猫が喉を鳴らす音のような、、、さまざまな音階のコロコロコロ、、、コロコロコロ、、、普段聞いたことのない音、モリアオガエルの鳴き声です。一般的なカエルの合唱とは違い何とも不思議な大合唱です。
しばらく聞いていると、急に静まり返り、指揮者が指揮棒を振ったかのように再び大合唱が始まります。どんなタイミングで鳴いているのでしょうか。しばらく聞き入ってしまいました。
おもに森林に生息するモリアオガエルですが、産卵の時期(4月~7月)は水辺に集まってきます。成体の体長はオスが4㎝~6㎝、メスは6㎝~8㎝で、メスはとても大きいです。夜行性なので、昼間はあまり活動していませんが、鳴き声の先にオスのモリアオガエルの姿を確認出来るかもしれません。
【 モリアオガエル 】
皆さんはカエルの卵というと、田んぼの水の中にあるカエルの卵を想像するのではないでしょうか。ほとんどのカエルが水中で産卵しますが、モリアオガエルは水面の上にせり出した木の枝や、草の上などで産卵します。写真の樹上にある白い繭のようなものが卵塊です。
【 樹上のモリアオガエルの卵 】
樹上の卵はオタマジャクシを狙う鳥や動物から身を守るためと言われています。また産卵の時期は梅雨で雨が多いため、水のない樹上でも卵塊の乾燥を防ぐことが出来ます。卵塊の中で孵化したオタマジャクシは、水面に落下し1ヶ月程でカエルの姿に成長し森へ帰っていきます。
卵塊の位置を見て分かる通り、何メートルも木登りをして産卵しています。1枚目のモリアオガエル写真の長い脚と大きな手の吸盤を見るとなんだか納得出来ます。
【 モリアオガエルの卵 】
上の卵塊の写真は、伊豆半島の別の場所で撮影したものですが、水辺のない場所に産卵していて近くで撮影することが出来ました。もしかすると、産卵時は卵塊の下に水たまりがあったのかもしれません。触ってみると粘着質で弾力のあるメレンゲのような泡でした。
モリアオガエルはどうやって水辺の上にある枝を選んでいるのでしょうか?カエルは動くものを捕らえる能力が高いので、風に波立つ水面の動きを見て、水辺の上だと判断していたとしたら面白いですね。想像が膨らみます。
突然ですがここで、『モリアオガエルを探せ!!』です。下の写真の中にモリアオガエルがいます。どこにいるでしょうか?
【 モリアオガエルを探せ!! 】※クリックすると写真が大きくなります。
ヒント、真ん中の辺り、、、目を凝らしてよく見て下さい!!
見つけられましたか?
【 枝の上のモリアオガエル 】
正解は、写真中央の枝のくぼみにいました。かわいいです。
雨の多いこの時期に出会えるモリアオガエルは不思議がいっぱいでした。
この日は日中でしたが、池の上の枝で産卵を始めたペアがいて、近づく事は出来ないので遠くから少し観察させてもらいました。モリアオガエルは一度の産卵で300~600個ほどの卵を産むと言われています。たくさんのモリアオガエルが無事に森に帰れることを願いたいです。